32話「祈りを願いに、願うを力に2」
少女たちの笑顔を照らす存在が消え、夜の帳が少女たちを包もうとしていた。
「あ、私そろそろ帰んないと」
「あ...そっか...」
ーーーの言葉に楽しい時間を過ごしていた千代の表情に陰りが見える。
「あ、そっか。千代ちゃん迷子だったね」
「迷子って言われると...まぁ、迷子かな」
「良かったら家来る?」
「...え、いいの?」
「もちろん!千代ちゃんなら大歓迎だよ」
「それなら...行きたい」
千代の言葉を聞いたーーーは満面の笑みを浮かべた。
そして、2人はーーーの家まで辿り着いた。
「お母さんただいまー」
「!、ーーーッ!」
「ゲ...、そんな怒んないでよ...」
「何言ってんの!アンタどこ行ってたの!暗くなっても帰ってこないから村中の人に探してもらってたんだよ!」
「う...それは...ごめんなさい...」
「はぁ、まあいいわ。無事でよかった」
そう言って、ーーーの母親は安堵した。
そして、千代存在に気付き視線を送った。
「そっちにいる女の子は?」
「あ、千代ちゃんのこと?この子、どうやら道に迷っちゃったらしいの」
「道に迷った?」
「『にほん』ってところから来たらしいんだけど、お母さん知ってる?」
「うーん、聞いたことないねぇ」
「そう..ですか....」
「あ、いや、すまんね。まあ、行き先がわかるまで家に泊まってきな」
「いいん...ですか?」
「ああ、この子が連れて来た訳だし、アンタ一人増えても大して変わんないよ」
「あ、ありがとうございます!」
「やったね!」
千代はーーーの母親の言葉に甘え、その日からーーーと寝起きを共にすることにしたのだった。
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それからおよそ1年が経った。
畑作業、水汲み、接待業、荷物運び。
千代は様々な仕事をした。
そして、『ザイト』の中を知っていった。
村というには小さい位に人がいた。
歩けば人が住む家々が並び、数は少ないが店もある。
雑貨屋、飲食店、酒場、薬屋。
どの店でも千代と同年代、年下の子が働いているし、千代自身も働いたことがある。
そして、今日も楽しくも辛い日が終わろうとしていた。
「千代ちゃんもここの暮らしに慣れて来たね」
「そうだね。皆んな優しいから毎日が楽しいよ」
「そっかー、それなら良かったよ」
「でも...」
「...見つかんないんだね」
「うん...」
誰に聞いても、どれを調べても千代の本来の帰るべき場所に手がかりは一つもなかった。
「もうさ...いっそ諦めない?」
「え?」
ーーーは千代のそう提案した。
ーーーは千代の頑張りをいつも見ていた。
「こんなに探してもないんだよ?町に行っても見つかんなかったよね?」
「そうだけど...」
ーーーは千代の悲しみをいつも見ていた。
「探すのやめて...ここでずっと暮らそ?ね?」
「....」
頑張った分だけ無駄に終わって。
努力した分だけ徒労に終わって。
「もう頑張ったよ...だから...」
「...いや」
「え?」
ーーーは涙を流していた。
千代の終わらない努力を、報われない努力を見ていたからだろうか。
「そんなこと...言わないで...」
それとも、信じた答えではなく信じられない拒絶を答えられたからだろうか。
「なんでそんなこと言うの?私は...私は...ただ...お母さんに...お父さんに...友達に...会いたいだけなのに...」
千代は泣いていた。
助けてくれた人が希望を断とうとしたからだろうか。
助けてくれた人が夢を終わらせようとしたからだろうか。
「なんで...そんなこと言うの?」
「わ、私はッ!千代ちゃんを想って言ったんだよ!」
「そんなの...そんなの求めてないよ...」
「どうしてッ!何で!?たくさん頑張って貯めたお金を全部使っても何もわからないんだよ!?」
「....」
「頑張って行ったところで聞いても何も分からなかったんだよ!?」
「...」
「なのにどうして!?私より故郷の方が良いの!?」
千代はその場にこれ以上いたくなかった。
友達が、助けてくれた人が涙を流しながら夢を、希望を潰そうとしているこの場に。
だから...
「...ごめんね」
千代はその一言を言ってその場から走り出した。
「ッ!待って!」
ーーーは声を上げた。
千代を引き止めるために。
しかし、その声が届いているのか、届いていないのか、千代の背中は遠のくばかりでいつの間にか見えなくなってしまった。




