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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
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第十話 新入生歓迎会

 今日は待ちに待った新入生歓迎会当日、桜並木を月火と肩を並べながらの登校は受験日の頃と比べ新鮮で楽しい時間を過ごすことが出来た。しかし歓迎会の時間も差し迫り、名残惜しいが途中からは少し早歩きになった事が残念である。月火も名残惜しいのか帰りにまた立ち寄って見に行こうと提案してくれたので、その提案に乗ることにした。

 校門に近づくに連れ学生が増えていく。今日は入学試験の時とは違い、在校生も参加する。

やはり、先輩達は何とも言えない迫力がある、皆何かオーラの様な物が見える、これが三年生かと僕は見つめていた。


 校門へ入ると月火とはここで別れた、どうやら先生は別にすることがあるようだ、僕も新入生が集まる場所へと向かっていく。新入生が集まっている場所は、校門のすぐ近くだった。入学試験の時に話をした面々も揃っている。話しかけようとしたが先生が点呼を取り、すぐに整列となった、どうやら僕が最後の一人だったようだ。申し訳ない気持ちで列へと加わると、そのまま歓迎会の会場となる校庭へと移動する。


 僕は移動しまず思ったことが、校庭の広さだ。僕が通っていた中学の校庭と比べ何倍もあるだろう広さ。

 校庭には在校生が既に集まり、歓迎会の準備をしているのも関わらず有り余った広さがある、この広さは異能力の模擬戦を想定した広さなのだろう。

 その校庭の真ん中で在校生や先生方が、炭に火を入れていた、その火を入れている在校生を見て僕は言葉が漏れた、バーナー等を使わず火を操り炭を燃やしていたからだ。こんな事に異能力を使って良いのだろうかと思う所はあるが、先生も近くでそれを良しとしているのならいいのだろう。

巧みに炎を操り、次々と炭へ炎を入れていく、従来の方法とは比較にならないほど早く炭は燃えていく。


「さぁ、今回は新入生の皆様の為にバーベキューを用意しました。もうすぐ準備も整いますので、しばらくここで待つと良いでしょう」


 ここでどうやら僕たちは次の指示があるまでの間自由時間となるらしい。

僕は遠くから準備の様子を眺めていると、僕を呼ぶ声がし振り向く。後ろには二人の女の子が立っていた。

一人は入学試験の時に知り合った愛莉、もう一人も知った顔だった。


「あれ、早霧ちゃんじゃないか、君も無事に受かったんだね」

「覚えててくれたんだ、そうなの私も受かったよ―」


 僕は早霧とハイタッチをすると、愛莉がその様子を不機嫌な様子で見ていた。


「あたしも居るんだけどっ!?」

「ごめんごめん、そういえば二人は知り合いなの?」

「そうそう、早霧とは中学から一緒なんだよ、それより優君と知り合いだなんて驚いたよ」

「実は、前に対異能機関って所で会ったことがあるんだよね」

「そうなんだ、自己紹介の手間も省けたね、今日は一緒に食べて騒ごう!」


 愛莉は妙にハイテンションだが、僕もそれに乗っかるようにテンションを上げる。

三人で話をしていると、どうやらバーベキューの用意が終わったようで、僕たちも移動することにした。

学年毎に集まると、壇上には40代ぐらいの若い男性職員と思われる人が立つ、何か見覚えがあるが思い出せない。


「今日は皆さんお集まり頂きありがとうございます、私はこの学校の校長を務める渡辺蓮と申します。新入生歓迎会では同級生は勿論ですが、上級生との交流を深める良い機会となるでしょう。二年生や三年生は新入生の見本となるよう心がけてください、それでは今から新入生歓迎会を始めたいと思います。存分に楽しんでくださいね」


 そうだ、入学前にネットで見たことのある顔だと思いだす。

話の長くない校長先生はとてもありがたい。早朝の鍛錬でお腹も空かせており、僕のことを肉が呼んでいる。隣に居る愛莉と早霧もお腹が空いているのだろうか、既に校長の話は後回しで網に乗っている肉を凝視していた。


「優君いこいこ」

「おう、早めに行かないと僕の分が無くなっちゃうからね」


 右手に箸を、左手に皿を持ち僕は意気込んだ今から向かう場所は戦場、すなわち皆敵であると。

異能力校の生徒達は皆、毎日の訓練でタンパク質を欲している、新入生の最初の試練が目の前にあった。

僕は上級生の大きい背中を掻き分け肉を掴む。


「取ったッ!!」


 だが僕の箸は空を掴んでいた。

手応えはあった、だが上級生は新入生に譲るという気配はない。これは先輩からの洗礼、毎年行われる事らしい。先輩達を裏をかき肉をいかに取るかを試されている、上級生からの背中からは重圧を感じる、これが上級生の風格か……。


「愛莉はだいじょ……うぶみたいだな」


 愛莉の持つ紙皿には何枚もの肉が山積みになっていた、何故僕とはこうも違うのか愛莉が囲んでいる網を見ると、そこには上級生の女性達が新入生に譲るように楽しく食事をしていた。

絶句した、ありかそんなのは。僕もあっちに混ざり肉を確保するため移動しようとしたが阻まれる。


「男はこっちだ」


 だそうだ、僕は諦め肉取り合戦へと参加するのであった―――。


「優君、お肉食べれた?」

「数枚は確保できた」


 そう言い僕は皿の上にある無残にも千切れた肉を早霧に見せる。僕の力量ではまだこれが限界のようだ、涙で肉が塩辛く感じる。


「男の子達は凄い勢いだったもんね、私達は入れなかったよ……。私の分でよかったらあげるよ」

「え、ホント!?」

「う、うん。愛莉ちゃんがいっぱい持ってくるから食べれなくて、食べたい分だけ取っていいよ」

「ありがとう!」


 僕は目の前に女神様が降臨したかのように見えた。あぁ早霧さまありがとうございますと心の中で感謝をしながら肉を噛みしめた。だがそんな僕に突き刺さる視線に僕は振り向くことは出来なかった、背筋が凍る様な視線、僕は振り返らずそのまま愛莉達の元へと歩いていく。

 僕の背後からは「女子から肉をもらう軟弱者め」と何やら罵倒する声が聞こえた気がしたが気のせいだろうと割り切る。


「遠目から見てたけど凄かったね、優君が懸命に何度も挑んでたのを見てて笑っちゃったよ」

「愛莉は酷いな……、助けてくれよ」

「いや…だってさ…、おかしくっておかしくって」


 愛莉はそう言いながらもお腹を抑え笑っていた、そんなに可笑しかっただろうかと僕は勇気を振り絞り先程まで居た場所を見ると、そこはまさしく戦場だった。その様子を見て僕はゾッとした、そしてもう彼処へは戻らないと決意する。

 だが上級生は優の事を噂していた、『何度も挑み数枚だが俺達から肉を奪っていった不死身の男』だと上級生の中で小さな話題になる。しかし優がその事を知ることは無かった。


 新入生歓迎会が始まり、既に二時間が経とうとする、どうやらそろそろお開きの時間のようだ。

僕はお腹いっぱい食べれたし満足した、来年は新入生に肉をあげる優しい先輩であろうと心の中で誓う。

再び校長が壇上に立つと、終わりの音頭を取りそこで長い死闘は終りを迎えることとなる。

僕以外の男の新入生は服がボロボロになり疲れ果てた様子だ、歓迎会とはいったい……。

 

 バーベキューも終わり、後片付けは在校生と先生方がするようで、僕たちは制服の採寸や教科書の購入をしていく。それもすぐに終わると、僕は月火を待っていた、今日学校に行く時花見をしようと約束していたからだ。だが一度戻ることになるだろう、手荷物が多くとてもこのままではゆっくりと花見をする暇も無いからだ。

 月火はあまり待つこと無く僕の所へと来る、どうやら今日の仕事は終わったらしい。


「お兄ちゃん凄かったねぇ、あの激闘は傍から見て心躍ったよ―」

「それを引っ張るな、取り敢えず花見に行きたいから一回帰ろっか」

「そうだね、私も着替えたいし、帰ろっか」

 

 こうして僕たちの新入生歓迎会は数人の犠牲を出し幕を閉じたのであった。 

 僕の高校にも歓迎会があってバーベキューをしたので書きましたッ!ほのぼの回です。

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