第3話
あれからすぐに、いつまでここに居ても状況は変わらないと判断し、俺は移動を開始している。
ここの魔物の種類が大したことなさそうだと判断したのもある。
なぜ達じゃないかだって?
いや、なぜ俺達ではないかというのを説明するのには少し時間を遡る必要がある。
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「んじゃ、移動するか」
俺はブラックウルフが現れた入口に向かって歩き出す。
「あ、待ってください我が主!」
ドスンドスンと相変わらずやかましい音を発しながら、当たり前の様に付いてくるネメア。
俺がジトッとした目でネメアを見つつ半ば諦めた心境で入口を出ると、道は入口から見てT路になっていた。
俺は左手の法則に従い左のルートを歩き出す。
「……ふむ…!?」
それを当たり前の様に付いて来ようとしたネメアは、奇妙な声を上げた。
悲劇はそこで起きた。
「……どうした?」
訝しんだ俺が振り返ると、ネメアは入口で、胴体半ばを出した状態で挟まっていた。
「……」
「……我が主よ」
俺の無言の視線に耐えかねたネメアが堪らず声を上げる。
「……なんだ?」
「ここの入口は少々小さいみたいです」
「……そうみたいだな」
お前にとっては、だがな。
入口の大きさは目測2メートル以上はあり、横幅は1メートルちょっとくらいしかないが、それでも大の男が悠々と通れるほどには大きい。
ネメアがでかすぎるだけである。
俺は胸中でぼやきつつ続きを促す。
「そ、その…どうしましょう…?」
………。
駄獣の情けない声を聞き、俺はこれ見よがしにため息を吐いて駄獣に告げる。
―――ああ、これは不可抗力なんだ。そう、仕方がないんだ。
そう内心で言い訳していた時の俺の表情は笑顔だったに違いない。
「ああ、それは大変だな…。大きすぎて通れないなんて。ああ、残念だ」
「……我が主?」
まったく、冷静に考えてみればこいつが通れないなんて分かったじゃないか。
馬鹿か俺は。
俺の言葉に不穏なものを感じたのか、ネメアが冷や汗を流し、不安そうな声を上げる。
だが、俺はそれを無視して話しを続ける。
「お前とはこれからも仲良くやっていけそうだったのに、出られないんじゃ仕方がない」
「…!?我が主よ、まさか―――」
ネメアも俺の言わんとしている事を理解したのか焦り始める。
が、もう遅い。
「ここでお別れだ。短い間だったが、楽しかったよ」
俺は心にもないことを笑顔で告げてやった。
―――ああ、これであのやかましい声を聞かずにすむぞ。
「じゃあな!そこで暮らすのは何かと大変だろうが、まあ何とかなるさ」
「何を根拠に!?というか冗談は止めて下さいよ。ここで今その冗談は流石に笑えな―――あ、ちょっと待って!本気!?本気なんですか!?ちょっ!おいて行かないで!おいて行かないで下さい!主――――――!!!」
後ろでキャンキャン喚いているが俺は無視して歩き出す。
それにしても失礼な奴だ。
お別れはちゃんとしただろう?
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という訳で冒頭に戻る訳だ。
なんてことはない。
ただ単にネメアが入口に挟まったのだ。
だから置いて来た、それだけの話である。
「主―――――――……!」
背後の通路からはネメアの咆哮が聞こえてくる。
もう大分歩いたんだが、まだ聞こえてくる。
どんだけでかい声なんだよ。
あいつの咆哮が聞こえてくるのに…いや、聞こえてくるからだろうか、未だに敵と遭遇しない。
まあ、なんにせよ、
「側からいなくなっても邪魔しやがって」
迷惑な奴である。
おかげでスキルを試せない。
時折り現れる分かれ道を全て左に曲がりながら更に歩くと、下へと降りる階段を見つけた。
「階段か」
問題はこの迷宮のタイプは潜るタイプか昇るタイプかである。
ここが、何階層かという問題もあるが、それについてはさっきのブラックウルフがちょうどいい目安だ。
少なくとも浅い階層で間違いはない。
「さて、このまま降りるべきか、昇りの階段を探してみるか」
あるいはここが1階で出口があるかもしれない。
「あーー、マッピングスキルがあればな~」
———楽なのに。
思わずそうぼやいた俺の言葉に答えるようにして、目の前に突如、半透明の地図が現れた。
「うおっ!?」
思わずのけ反ってしまった。
ゲームの時と少し違うが間違いなく地図だ。
ご丁寧に今まで通って来た道はマッピングされている。
「【地図作成】が生きているのか。これは良い収穫だ」
もっと早く試せよと思わなくもないが、俺も予想以上の出来事に混乱していた様だ。
なら階層は…あった。
……17?思ったより深いな。
予想以上に深かった。
「なら、あと3階層進んでボスに行った方が早いな」
ボス部屋は各階層ごとの5層に中ボスが、10層にその階層の支配者―――ボスが居る。
そして各階層ごとのボスの後には転移門があり、迷宮から脱出できるようになっている。
「あとは、ここの階段を下りて、階層がどう変化するかだな」
18になるのか、はたまた16に下がるのか……どのみちこの深さだ。
進むことに変わりはないだろう。
俺は階段を降り始める。
「…あ…じ――――……!!」
獣の声を後ろに聞きながら。
主人公が思いのほか鬼畜になりすぎました。




