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番外 若き宰相閣下の輝けない受難の日々


アムドゥシア王国の王宮で最も空気が殺気立っており、インクの消費が激しく、休憩時間が短いのが、宰相室という職場である。


広い国内で起こる自然災害、山賊被害、流通問題、物価、税収と中抜き、隣国との利害調整、王室の予算編成、派閥違いの貴族間における諍いの顛末、エトセトラエトセトラエトセトラ。


何のため王宮の仕事は分野ごとに分かれているんだ? 宰相室に全てを押し付けるためである! と発狂した文官も過去にはいたとかどうとか。


そこまでは言わないけれども、実際にほとんどすべての分野についての承認印を求められるのが宰相という仕事ではあった。


その中には、宰相として慎重に慎重を期した判断をした上で、国王陛下の承認印を必要とする上奏書類もある。


無論、宰相室には10人ほどの非常に有能な高位文官が詰めており、常に書類の仕分けから資料の不備チェック、宰相に回すまでもない書類の差し戻し等を凄まじいペースで行ってくれているのだが、それらの仕事にも宰相の裁量を求められることがあり、とかく宰相という職は忙しい。


トールは王都のタウンハウスにすら帰ってこなかった前宰相である父のことを冷たい人だと感じる心が幼少期から少しはあったが、トールがこの職に就いて1年の若輩者であるという点を除いても、帰るに帰れなかった可能性はあるな、と思うようになっていた。


宰相に任じられてから3ヶ月ほどは、トール自身ロクに王都のケムエルン侯爵邸へ帰ることが出来なかったくらいである。


ただ忙しいだけであれば、トールの処理能力は常人を遥かに超えている、どうにか回していくことに苦労は感じない。


トールはあと2ヶ月ほどで19歳になる青年である。


様々な事情があったとはいえ、国の要職たる宰相となるにはあまりに若すぎた。


他の大臣や将軍はもちろん、宰相室に勤める部下たちも全員トールより10以上は年上であるので、ハッキリ言ってトールはナメられている。


それでも今はマシになった方だ、宰相に就任してすぐの1年前は出仕を拒否する高位文官や、露骨にトールを馬鹿にした発言をする大臣も居た。


出仕拒否文官は即時解雇したし、ふざけた発言をした大臣に対しては朝議の場で大臣の専門分野について詰めに詰めて泣かせるという報復を行ったため、表立ってトールを軽んじる輩は減ったと思う。


ただどうしても、トールに対して好意的な高位文官においても、トールの能力に完全な信頼が無いというか、善意からのお節介を焼く者も居たりして、トールは日々己の不出来に腹が立つばかりだ。


人心掌握系の政治はトールの苦手とするところでもあって、そこについては父の跡を継ぐ前によく学び、またそれを得手とする王太子クリスから指導を受けるなどして潰しておく予定であったのだが、人生予想のつかないことばかりである。


まさかこんなにも早く家と家業を継ぐことになるとは……そんな嘆息もトールの嫌う弱音であるので、トールは決して外へは漏らさない。


現状、昔からトールに目をかけてくださる国王陛下と王太子クリスのフォローがあってやっと、何とか細い綱の上を渡っていけるという状態であって、トールは忸怩たる思いを抱えている。


仕事をこなしながら顔なんか思い浮かべたせいか、宰相室へノックの後入ってきた近衛騎士が王太子の来室を告げる。


少ししてから、輝く太陽のごとき金髪を印象よく整えた、赤と青のオッドアイを持つ美しい青年、トールの6つ年上の幼馴染にして上司であるクリス・アムドゥシアが、宰相室の空気にそぐわぬ優雅な足取りでやってきた。


トール以外の宰相室の面々、高位文官たちは、王太子のお出ましに緊張と尊敬の念を抱いて少しペンを止めているが、トールは机から数秒顔を上げ、すぐに書類の処理へ戻った。


これは面倒くさい! という感情と、今日はどんな無理難題を吹っかけてくる気なのか、という警戒の表情をクリス以外に見せないための術でもある。


無理難題、というのはクリスがトールへ頻繁に持ち込んでくる国政課題だ。


それらは緊急性があるものではないが、大抵は確実に解決すべき問題であり、トールが通常業務の合間に取り組んで、ギリギリ期限内に解決出来るか出来ないか、その間を縫ってくる程度の難易度をしていて、この顔だけは無駄に綺麗な王太子の性格の悪さというものを、改めてトールへ刻み込んでいる。


その嫌らしさは、"お兄様"はトール様にも甘いですから、などとほざいていたお花畑女にも滔々と聞かせてやりたいくらいであるけれども、トールはたとえ共通の幼馴染であるクリスの性格の悪さを話題としても、彼女の前では流暢に言葉が出てこないきらいがあった。


それはさておき、今日のクリスは手ぶらである。


いつものごとくトールへ課題を与えに来た風でもない、その非日常性がトールの警戒心を一層深め、眉間の皺を深くした。


トールの様子を見てクリスは名匠の彫刻もかくやとばかりの美しい笑み――これは最近トールも察知出来るようになった底意地の悪さが滲んでいる性質の悪い笑顔だ――を浮かべた。



「そう警戒を顔に出すものではないよ、トール。親しい仲とはいえ、内心を悟らせるようでは宰相としてやっていけない」



何を言い出すかと思えば、お説教めいた助言である、ますます胡散臭い。



「ご用件は?」



トールは礼儀や形式をぶった切って本題へ入った。


高位文官たちはトールのこうした、王太子に対する親しさ由来の暴挙にいつもハラハラしているらしい、というのは最近本人たちから聞いたところである。


それはさておき、トールの問いにクリスは更に笑みを深めた、もう嫌な予感しかしない。



「今日、1年ぶりに私の騎士が帰還したからね。私の名代として、ケムエルン侯爵邸へ挨拶に行かせたんだよ」



良いことをした、と言わんばかりのクリスの楽し気な声に反し、宰相室には吹雪のごとき冷気、いや何なら氷属性の魔力が少し漏れてもいる、そういう物理的な冷たさが空気を文字通り凍らせる。


近衛騎士たちが剣の柄に手をかけるほどの事態であるというのに、事の中心にいるクリスはその反応が見たかった! とばかりに楽し気に笑った。


これが昼過ぎの話である。







王都の中心近くに建てられているケムエルン侯爵邸の庭園は、春の陽気の下、瑞々しい花の香りを漂わせていた。


過去の、色寂しく実用と最低限の格を飾るだけだった庭はこの1年で随分変わり、家の主人を象徴する青い色が美しいネモフィラの花畑や、留守を預かる夫人を思わせる可憐な薄紅色の薔薇のアーチ、王家の金を讃えるミモザの枝ぶりなど、どれも見事である。


そんな春の花咲き乱れる美しい庭園の中心に、侯爵家らしい豪奢な飾りのテーブルと椅子が置かれており、テーブルの上にはスイーツを控えめにした一口サイズの軽食が、アフタヌーンティー形式で提供されていた。


王都にあるケムエルン侯爵邸のメインシェフは元々ケムエルン侯爵邸に勤めていた人材であるが、元を辿ればメルカが父の伝手で手配した優秀な人間であり、最近は家内を仕切るメルカを労わろうと、メルカの食の好みに気を配ってくれている。


そのメルカの対面に座っている人物も、甘いものは好きだがご飯にするのはちょっと違うよね~、などと言いながら、昼食代わりにちょうどいいとパクパク食べている。


何でも、王宮へ帰還してすぐにこちらへ向かうよう命じられて、昼食を食べ逃していたとか。


そんな彼は、食べているものからはかけ離れた甘ったるい声でメルカへ話しかける。



「久しぶり、メル。会いたかった……」



メルカは表情を乱さず、素っ気なくもなり過ぎない程度に平静な素振りで答えた。



「お久しぶりですわ、アルマロス様。1年にも渡るお仕事、お疲れ様でした」



わざわざ甘い声を出しているミカエルは耳横から零れた髪を耳にかけ直し、首を傾げるようにメルカへ乞う。



「そんなに冷たくしないで? せっかく1年ぶりに会えたんだから、もっと密な会話を楽しもうよ」


「遠慮いたしますわ、アルマロス様。わたくし人妻ですの」



スッパリと断るメルカへ、ミカエルはわざとらしく憂い顔を作った。



「そっか……もう、俺のメルじゃなくなっちゃったんだね……」



哀しみに暮れる小型犬を思わせる顔をするミカエルは、1年見ないうちに少し顔つきも精悍さを増しており、男性らしく整った顔から出る憂いの声と甘さ、そのギャップで、メルカの近くに控えていた侍女の1人がほうと息を吐く。


人んちの使用人に変な趣味を植え付けないでほしい。


メルカは遠慮容赦なくジトリとミカエルを睨んだ。



「……ミカ。分かっていて遊ぶのはお止めなさい。そういうところはお兄様に似てはいけませんわ」



久しぶりにメルカの口から自身の愛称を聞けたミカエルは、わざとらしく作っていた表情を投げ捨て、パッと明るいサモエド犬に似た幼い印象の笑顔に変わる。



「だって~、メルがアルマロス様だなんて言うからさあ、親友としては寂しくて泣いちゃう」



シクシクと泣き真似をするミカエルに、メルカはため息を吐いた。



「魔王の再封印任務を終えた聖騎士様は、我が国において侯爵相当の身分を持ちます。公表がまだ先とはいえ、一介の侯爵夫人に過ぎないわたくしにとっては敬うべき立場になったのですよ。きちんとなさいな」



メルカの言う通り、ミカエルはクリスに聖騎士として叙任されてすぐ、この1年間は魔王の封印をし直す旅に出ていた。


そもそもを辿れば、前ケムエルン侯爵の奸計によって、トールが魔王の器となりかかり、それで魔王の封印が緩んでしまったのである。


それを受けてクリスは、戦闘能力だけ見れば過去の聖女聖人を顧みてもバケモンレベルのミカエルを、使えるものはさっさと使え、とばかりに叙任早々旅へ出し、王国各地で活発化していた魔物を退治させて被害を押さえつつ、王国内に点在する神殿を回らせて魔王の封印を強化させてきたというわけだ。


その功績をもって、アムドゥシア王国における侯爵級の地位を得た聖騎士ミカエルなのである。


今日帰ってきたばかりとのことで、メルカも言った通り、式典などが催されてミカエルの功績と地位が公表されるのはまた少し先の話になるのだろうが、まともな貴族であれば公表など待たず王家の意志を尊重した扱いをするものだ。


メルカはその辺りを懇々と諭したが、ミカエルは「外ではちゃんとしてるも~ん。」とニコニコ笑顔でまともに聞いちゃいない。



「俺の素の姿は、メルだけが知っていれば良いからね」



その上こういう誤解しか招かない言い回しをして笑うものだから、先ほどと同じ若い侍女が内心で身悶えしているのをメルカは察した。


この侍女はメルカの1つ下の学院卒業生であり、研修の一環としてメルカに付いているのだが、この場に置いておくには早かったかもしれない。


何かメルカたちの下級生って未だにメルカとミカエルの仲を誤解だか邪推だかして夢見てる層が居るんだよな……とメルカは内心で面倒に思った。



「いいえ、貴方が素を見せるべきはお兄様――王太子殿下ただ1人でしてよ」


「クリス殿下はさ~、ホラ、見せなくても大体勝手に理解してるじゃん」



メルカが正すも、ミカエルは悪びれず、かつ痛いところを突いてくる。


ミカエルが言うことは一理、または百理くらいある事実であるので、メルカは反論の糸口が見つからず微妙な顔を浮かべた。


貴族夫人としては残念な表情を見せるメルカを眩しそうに見つめ、甘い雰囲気を薄めたミカエルは、親友らしい笑顔でメルカへ笑いかける。



「だからこそ、帰って一番にこうしてメルのところへ行くよう命令にしてくれたわけだしね。まあ誰かさんをからかって遊びたかったっていうのもあるんだろうけど」



メルカは内心でだけ額を押さえた。


クリスの性格の悪さとミカエルの悪戯心は妙な噛み合いを見せており、まあ馬が合っていて主従としては良いことなのだろうが、あまりにも、あまりにもメルカの夫に優しくなかった。


従兄とはいえ、身分的には以前より格の差が開いたクリスと、今回で格を上げたミカエルの双方を止めることは、メルカには出来ない。


きっと今頃王宮に居るクリスは、この後ケムエルン侯爵邸で起こる事象をダービーでもして1人面白おかしく消費しているに違いない。


邸へ帰ってくるメルカの夫には何と言葉をかけたものか、と悩みつつ、しかし王太子の名代として来たミカエルを早々に追い返すわけにもいかず、また1年ぶりに会えた親友との会話が楽しいことも事実で、メルカはミカエルと一定の距離を保持したまま、何やかやと夕方近くまで話し込み、ミカエルの旅の話を聞いていた。







夕陽に染まる庭園を背に、メルカは話したい放題話したミカエルの帰りを見送ると、夕食の時間まで家内の差配の見直しでもしようかと邸の中へ入る。


ちょうどその時、ミカエルの乗った聖騎士用の馬車が去った5分ほど後だろうか、フットマンがケムエルン侯爵家の馬車の帰りを知らせた。


メルカは嬉しさを少したりとも隠す気のない笑顔を浮かべ、玄関ホールで伴侶の帰宅を迎えるため、行き会った使用人たちと共に待機していた。


玄関扉は分厚い黒檀で出来たシックな造りをしているのだが、その向こうからドタバタという駆け足の音と、「侯爵閣下! お待ちを!」と使用人の慌てた声が聞こえてくる。


それからすぐにバン! と大きな音を立てて、息の上がったトールが駆け込んできた。



「おかえりなさいませ、旦那様。今日もお仕事、お疲れ様で」



メルカは優雅に礼をとり、トールを迎えるも、でした、の"した"部分を言い終える前に、深々眉間に皺を刻んだ怒りの形相のトールから腕を掴まれ、玄関ホールの奥の階段へ引っ張って行かれる。


メルカと一緒にトールを出迎えた使用人らはそれを唖然と見つめ、行動に困っているようであったので、メルカは近くの使用人へ元の仕事へ戻るように指示を出した。


怒気を放ちながら無言で階段を上っていくトールの行先は邸の奥にある、夫婦の寝室のようである。


メルカは特に何を言うでもなく、トールへついていきながら、トールの少し乱れた髪を見て勝手に幸せになっていた。


夫婦の寝室へ入った途端、トールはまたバン! と大きく音を立てて扉を閉める。


前世日本なら不機嫌ハラスメントと非難轟々だろう仕草だ、メルカは全く気にしていないが。



「何を話した」



トールはメルカを見下ろし、低い低い声で問う。


メルカは、そのトールの、角が生えたら般若とでも言われそうな憤りの表情を見上げて、なんてかわいい人なのかしら、と呑気に喜んでいる。



「立ち話もなんですから、どこか座ってお話しませんか?」



そう微笑んだメルカは、寝室にある小さなソファを示したつもりだったのだが、トールは不機嫌極まりない顔でそのままメルカの腕を引き、部屋の中心にある大きな天蓋付きベッドまで引っ張っていって、ドサリとメルカの腕を掴んだままベッドへ倒れ込んだ。


必然、メルカはベッドの上、トールの腕の中に収まることになる。



「旦那様、床入りには少し早い時間ですわ……」



メルカは頬を少し赤く染め、蜂蜜に似た甘い声音で言いつつも、トールの背に腕を回した。


トールは何も答えず、メルカを抱きしめる腕の力を強める。


トールの男性にしては細い体を抱きしめ返しながら、メルカは昼のミカエルとの会話を漏れなく報告していった。


ミカエルの旅の内容については、どうせ国の上層部では共有される話である、今話しても問題ないだろう、クリスもこうなると分かっていただろうし。


話しながら、トールの首筋に浮かぶ汗を見て、クリスにからかわれた後最低限の仕事を片付けた上で急いで帰ってきてくれたのだろうと分かり、メルカはくすぐったい気持ちになった。


ミカエルの悪ふざけ、甘い雰囲気だとかの話は一切を省いて話したのだが、トールは言われずとも予測がついたようで、メルカがミカエルの名前を口にする度、怒気が増していく。


とても妻を腕の中に抱いた夫のする表情、態度ではない。


こういうところが若い侍女たちから誤解される一因なのだけれども、メルカにとっては何より愛おしいトールの一面であった。



「旦那様……トール様」



話がひと段落すると、メルカは囁くように呼び掛け、腕の中でトールと視線を合わせる。


メルカだけを映した澄んだ水色の瞳には怒りだけでない、焦りのような感情が見えて、メルカは傷に触れるような優しい声で、この1年、いや14年言い続けた言葉をまた口にする。



「わたくしは貴方だけを愛していますわ。これから先も、一生」



トールはグッと下唇を噛みしめ、嫌そうな顔をした。


その表情の変化をクスクス笑ったメルカはトールの腕の中でもぞもぞ体を動かして、トールの、血でも出そうなほど強く噛みしめられた唇へ顔を寄せる。


寝室を数秒の無音が満たした。


メルカが顔を離したときには、トールは唇を噛むのをやめていて、不機嫌というよりは拗ねた子供に似た表情へ変わっていた。



「わたくしには、トール様だけです」



メルカはそう言うと、期待を込めてトールを見上げる。


時が止まったように数十秒、トールが顰め面でメルカを見つめ続け、そしてゆっくりと先ほど合わせたばかりの、メルカの薄紅色のそれへと顔を寄せたとき、寝室にノックの音が響く。



「旦那様、奥様。夕食の支度が整いましたが、いかがされますか?」



扉の外から執事長が恐る恐るといった風に声をかけてくる。


部屋の時計を見れば、いつもの夕食の時間はとうに過ぎていて、話し込み過ぎたな、とメルカは少し反省した。


トールは執事長の声を受けてパッとメルカを離し、ベッドから起き上がって衣服の乱れを直す。


メルカはいささか残念な思いをしつつも、執事長へ「今から向かいますわ。」と返事して、立ち上がってはトールの衣服の乱れを直すのを手伝った。


2人して何事もなかったかのように整った服装で寝室を出る間際、メルカはトールの服の端を小さく引いて、見上げる。



「先ほどの続きは今夜、お待ちしていても良いでしょうか」



濡れたように艶めく暗い緑の瞳が揺れる。


トールは今にも「嫌だ。」と吐き捨てそうな顔のまま、口を開いたり閉じたりしてから、「勝手にしろ。」とだけ言って、メルカを置いて先に寝室から出て行った。


その後ろ姿の、耳の先が赤く染まっているのを知るのは、この世でメルカただ1人だけだ。


ああ~~~今日もわたくしの旦那様、萌え萌え過ぎます~~~!


心の内で1人、14年前からほとんど変わらぬ叫びを上げているメルカは大変平和である。


なお、これから王太子の名代として週1でミカエルがケムエルン侯爵邸を訪れるようになるとはつゆとも知らぬトールは、待ち受ける受難の日々を前に、先ほど腕の中に閉じ込めたメルカの柔らかな接触と微笑みを思い出して、顔を感情と真逆の形に顰めているのだった。

これにて完結です。

ここまでお読みくださった皆様、誠にありがとうございました。

次回作にご期待ください。

活動報告もあります。

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面白かったです! ポイント100未満なのが信じられません。掘り出し物を見つけた気分でした。 (怖くて)ドキドキしましたよ!
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