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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 桜桃
第三章 水仙家

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強い子

「……………………闇命様、起きていますよね」

『はぁ。そいつは落ち着いたの?』

「みたいですよ。今は少し不安そうではありますが、疲労もあり寝てしまいました」

『まったく、琴平の膝の上でぐーすかぴーとか。どれだけ琴平に迷惑かければ気が済むのさ』


 まったくもう、僕の身体で本当に恥ずかしいやつ。

 涙の痕がしっかり付いちゃってるし、これ明日ちゃんと消えてるよね。

 残っていたら許さないから。僕の顔に涙の痕を付けるなんて。


「半透明だと物や人に触れることができないのですよね?」

『そうだけど、それがどうしたの?』

「いえ、もし触れることができたら、闇命様もお休みにならないかなと」

『…………は?』


 琴平が空いている方の膝を叩いて僕を見る。何を狙っているの。やるわけないでしょ、できないよ。できたとしても行かないけど。


「もう片方の膝が空いているので、闇命様もどうかなと思いまして」

『ばっかじゃないの。僕がこんなことするわけないでしょ。こんな恥ずかしい真似、できるわけがない。こいつじゃないんだからさ、変なこと言わないで』

「そうですか、少し残念です」


 いや、なんで本気で落ち込んでいるのさ。僕の本体の頭を撫でながら。


『……………………』

「――――っ、え、闇命様?」


 まぁ、触れなくても、このくらいはできるし、これで我慢してよ。

 隣に座って寄りかかるだけでも、僕にしては珍しいでしょ。これだけやってあげたんだから、少しは機嫌を直してほしいものだね。触れないからふりだけどね。


「…………ふふ、ありがとうございます」

『まったくだよ。本当に困った従者を持って僕も大変だよ』

「俺はこんなに立派で素敵な主に従えることができて幸せでした」


 …………むかつく。今の琴平の言葉、本当にむかつく。


『琴平』

「あ、はい」

『今の言葉には間違いがある。そこを訂正しなかったら、僕は今後琴平を呼んであげない』

「っえ、ちょ、え? それは困りますよ闇命様!! 俺、何か言ってしまいましたか? あの、訂正するところってどこでしょうか。何かご機嫌を損ねることを言ってしまいましたか!?」


 ここまで焦るほど、僕が名前を呼ばないだけで嫌なんだ。

 いつも冷静な琴平が、僕の発言一つでここまで感情を乱すのはやっぱり面白いな。今も慌てて何かぶつぶつ言っているし。


 本当に分からないのか、困った従者だよ。


『“幸せでした”じゃない、“幸せです”が正しい。それに、僕は死なないし、琴平も《《死なない》》。過去形にする理由が分からないね』

「っ!!」


 …………ち。視線が痛いというか、むず痒い。なんでそこまで驚くのさ、本当にやめて。


 ただ、僕は本当のことを言っただけだもん。

 僕は死なないし、琴平も死なない。死なせない。


 僕が、優夏が。絶対に死なせないから。


「…………闇命様、ありがとうございます」

『何も、礼を言われるようなことなんて言ってないから。勘違いしないで』

「申し訳ありません」


 何嬉しそうな顔してるのさ。気持ち悪いよ、琴平。


 ……………………ふん、僕はもう寝る。


「あ、鼠に戻ってしまうのですね…………」

『…………残念そうにしないで。さすがに、姿を出したまま寝るなんて無理だから。集中力が切れて深い眠りに入った瞬間に消えるよ……』


 僕のことが好きなのは分かったから、今はゆっくり休ませて……。

 琴平も疲れただろうし、休んでよ。


「おやすみなさい」

『…………ん』


 頭に、温かいぬくもり。まったく、僕を子ども扱いしないでよ。

 僕は天才陰陽師なんだ。子ども扱いは不要だよ。


 ――――闇命、君は本当に強い子だ。私の誇りだよ。


 父さんの声。寝る前に必ず聞いていた声。


 …………いや、こんなの幻聴だ。

 僕は幻聴に縋るほど弱くない。周りが認めるほどの力を持っている。


 僕は、周りが認めるほどの天才なんだ。だから――――…………


 ※


 煌々と輝く月が、人のいない水歌村を明るく照らしている。

 誰もいないはずの村に、二つの足音が響き始めた。


「水分様、一体何をお考えなのですか。安倍家の者を“利用”するというのは納得できますが、なぜあそこまで自由にさせているのです。機密情報まで漏れてしまう可能性がありましたよ」

「別に何も考えてねぇよ。俺はあいつらを利用しようとは考えていない。首突っ込んできたのはあっちだ。俺は聞かれたことにだけ答える」

「確かにそうかもしれませんが……」


 村を歩いているのは、水仙家の陰陽頭である水仙水分と、陰陽助である鏡屋弥来(かがみやみくる)


 弥来は眼鏡をかけ直し、調書室での出来事を思い出しながら険しい顔を浮かべ、水分の後ろを歩いていた。


 二人はただひたすらに村の中を歩いている。壊れてしまった村を、目的もなく。


 周りには崩れた建物や踏み荒らされた畑。風が吹くたび、建物の一部や土埃が舞い上がる。


「なぜ水歌村が狙われたのか。そこだけでも突き止めたいですね。それに今後の対策も考えなければなりません。村の人達は水分様の機転でなんとか避難できた方もいますが、このようなことが続けば……」


 今回の襲撃。水分が他の陰陽寮へ移動しており、陰陽助である弥来も同行していた。それを見計らったかのように、水歌村は襲われた。


 戻る道中、異変を察した水分が式神を飛ばし、村人の避難に当てていたため全滅は免れた。だが間に合わなかった者は、氷鬼家の裏切り者により屍人にされ、利用されてしまった。


「確かに、こんなことを繰り返すわけにはいかねぇ。俺達水仙家の信頼を失う結果にもなっている。手を打ちたいが、正直今ここで何かしようとしても意味はねぇ」

「なぜですか?」

「根元を断たなければ、どうせ繰り返されるだけだ。相手が理解しているかは知らんが、基本、陰陽寮同士の戦闘は固く禁じられている。いや、存在を晦ませていたから、もう陰陽寮の人間ではないのか」


 陰陽寮にはいくつかの規則があり、そのうちの一つが“陰陽寮同士の私闘を固く禁ずる”というもの。


「大きな何かが動き出している気がするのは、私だけではありませんよね? もしかしてですが、安倍家の者が持ち込んだのではありませんよね? そうであれば、今すぐ追い出すべきだと思うのですが」

「従者の一人である男はその考えに至るだろうし、安倍家の元跡取り本体も頭は回りそうだ。だが、今回あいつらをまとめているのは違う。あほのように見えて、人を引き付ける力を持っているあいつだ」


 水分の頭には、百面相を浮かべている優夏が浮かんでいた。

 だが、弥来は話を詳しく聞いていないため、首をひねる。


「あいつ? 申し訳ありません、詳しく聞いておりませんので……」

「そうだったか。それは追々だな。とりあえず、今回の件は安倍家も関係はあるだろうが、引き起こしたわけじゃねぇ。逆だ」

「逆?」

「あいつらが引き起こしたんじゃない。周りが動き出したから、あいつらも動いた。そう考えるのが自然だろう」

「なるほど。申し訳ありません、頭が固くなっておりました」

「お前が固いのはいつものことだ、気にするな」


 水分の言葉に、なんとも言えない表情を浮かべる弥来。ため息を吐きながら後ろをついていく。


 そのとき、何かに気づき足を止め、後ろを振り向いた。

 だが、遅かった。


 目の前には、目を見開いた少女の顔。

 声を上げる間もなく、少女は笑みを浮かべながら黒い霧と共に弥来の体へと入り込んだ。


「ん? どうした?」


 水分が弥来が付いてきていないことに気づき、振り返る。だが返答はない。嫌な気配を感じ取り、水分は弥来へと近づき再び声をかけた。


「おい、弥来。どうしっ――」


 振り向いた彼の表情を見た瞬間、水分は目を見開いた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

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よろしくお願いします(ᐡᴗ ̫ ᴗᐡ)レル タンペッコペコ

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