無駄
『ち、からが欲しいか? 君は……?』
『私の名前は安倍闇命。安倍家の者だよ。多分、父さんに会った事あるんじゃないかな』
『と、うさん? も、もしかして、煌命さん?』
『そう、私の父さん。君、まだ現実を受け止められていないように見えるけど、このまま同じ生活を続けていきたい?』
その言葉は、俺の心を覗いているように感じ、闇命様の目も全てを見透かしているように光っているように見えた。だから、直ぐに頷く事が出来ず、後ろにいる紅音をチラッと見ると、同じく不安そうに顔を青くしていた。
『…………現実を受け止められていないという言葉はよく分からないが、最初の言葉はどういう事だ? 力が欲しいかって』
『私達の元で陰陽師になってみない? 君達のような存在が欲しい』
力が込められている言葉、目がすごく輝いていたんだ。それを見ると、嘘をついているようにはどうしても思えず、紅音も気になったのか俺の隣まで移動し、不安げに闇命様を見下ろしている。
『まぁ、もっと簡単に言えば、安倍家に入らないかという誘いだよ。もちろん無理強いはしない。でも、今の君達は見るに堪えないんだよ。だから、来てくれると嬉しい』
素直に言われると、断るのも戸惑われてしまい、咄嗟に頷いてしまった。その反応を見た闇命様は、満面な笑みを浮かべて子供らしく「やったね!」と二本の指を立て喜んでくれたんだ。
その顔を見て最初はさすがに戸惑ったが、俺ももうそろそろ変わらなければとも思い始めた。
それから俺達は安倍家に入り、闇命様と、父である煌命様の元で陰陽術を習得し、力を得る事が出来た。
紅音は巫女の力を手に入れ、それと同時に筋力を鍛え始め、少しでも力になろうと努力を続けてくれる。それが、どれだけ俺達の支えになっていたか……。
何度も逃げたくなった。この、胸糞悪い空間に、いたくなかった。それでも、闇命様と煌命様のため。尽くす事を心に決めたから、やりきる事にしたんだ。だが、呪いについて聞いた時、煌命様は言った。
『私の命は、もう長くない。次の陰陽頭は闇命にしようと思っている』
『で、ですが、闇命様はまだ……』
『そうだね。まだ、闇命にこの立場は早い。周りも認めないだろう。だから、闇命が大きくなるまで、他の人に頼むつもりだよ。そもそも、この安倍家では、立場はただの名前のみ。正直、誰がなろうと関係がない。だから、今のこの陰陽寮を変えて欲しい。私が出来なかった事を、して欲しい』
その言葉を最後に、煌命様は目を閉じた。
それから、変えようと努力した。闇命様と、努力したんだ。
その時、夏楓も新しく入り、闇命様が事情を話し、協力をお願いした。
それでも、全く意味はなく、諦めるしか無かったんだ。
そして、今のように、闇命様は周りから遠巻きにされ、世界が狭くなり、自由な行動できない、そんな環境になってしまった。
様々な理由を付けて、闇命様の行動範囲を狭くした。
何も出来なかったんだ、俺達は。煌命様の気持ちを、受け継ぐ事を、諦めてしまった。
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