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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 文月朔夜
第二章 死絡村

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座敷童子

 小刀がおでこに触れると、息苦しそうだった魔魅ちゃんの様子が、ほんの少しだけ落ち着いた気がした。


 それでもまだ、息は荒いままだけど。


「解熱剤とか? 薬とかないかな?」

『これは力の副作用みたいなものだから、薬は意味ないよ』

「だよね……。なら、どうにか楽にしてあげられないかな……あ」


 そういえば、こういう時ってアニメとかだとヒーラー的なやつが──


『よく分かんないこと考えてるみたいだけど、回復系の式神は使役してないよ』

「えぇ……」


 都合よくはいかないか……。


「闇命様、座敷童子は駄目でしょうか?」

『座敷童子? さすがに傷や熱は治せないと思うけど』


 紅音の問いに、闇命君が優しく返す。

 ……もう一回言おう、優しく、だ。


「幸運をもたらす妖怪……その力で、呪いを浄化できませんか?」

『……なるほど。それなら試す価値はあるね。座敷童子なら意思疎通もできるし、法力を多めに注げばいけるかも』


 座敷童子まで使役してるのか、この人。

 怒らせたら不幸とか考えなかったのか……。


『優夏、出して』

「簡単に言うなって……」


 懐から御札を取り出し、集中する。


「『座敷童子、布団に眠る少女に降り注ぐ不幸を、幸運へと転じよ。急急如律令』」


 淡い光が人の形を作る。


 現れたのは、小さな少女。

 赤い着物、おかっぱの黒髪、ぱっちりした瞳。


 本当に子供みたいだ。


『わぁい! お兄ちゃん!!』

「え、わっ、え?」


 いきなり抱きつかれた。

 戸惑いながら闇命君を見ると、少し眉を下げるだけ。


 ……慣れてるのか?


 まぁ、可愛いし嫌ではないけど。

 ……今、ちょっとアウトなこと考えなかったか俺。


「えっと、あの子を助けられる?」

『あるじしゃまのおおせのまぁに!!』


 たどたどしい声。

 ……かわいい。


『キモい顔やめて』

「あい」


 真顔に戻る。


『やります!!』


 小さな手をかざす。


 淡い光が魔魅ちゃんを包む。


 ……変化はない。


 呼吸も荒いまま。


 やっぱり無理なのか──


「駄目なのかな……」

『熱を下げるのが目的じゃないからいいよ』

「え?」


 闇命君に視線を移した瞬間。


『──できたぁぁあ!!』


 部屋に声が響いた。


『そっか、それなら大丈夫。あとは熱が下がれば目を覚ますよ』

「何をしたの?」

『残ってた呪いを浄化した。道満が無理やり引き剥がしたせいでこうなってたけど……結果的には良かった。座敷童子の幸運が上回った』


 そして、続けて──


『今はもうただの子だよ。力が使えない──ただの女』


 …………え。


 力が、使えない?


 それでいいのかもしれない。

 でも──


 陰陽頭が、ただの少女になる。

 それを周りがどう受け止めるかは、別の話だ。


『今後のことは、目が覚めてからだね』


 ま、まぁ、そうか。

 今ここで魔魅ちゃんの今後を考えても仕方がない。


 けど……気になる。

 なんで、呪いが使えなくなったんだ?


『元々、魔魅には呪いへの耐性があった。それで使えていたんだ。でも今ので完全に消えた。正確には、使えなくなったわけじゃない。使えば、今までにない代償を払うことになるってだけ』


 呪いの代償……?


『一、二回が限度だろうね。蠱毒なら別だけど、漆家独自の呪いはもう無理だ。つまり、あの家では生きていけない』


 ……複雑だな。

 呪いを使えないのは、いいことのはずなのに。


『…………なに。ちょっと嬉しそうじゃない?』

「えっ」


 嘘、そんな顔してた?

 頬に触れるけど分からない。


「少しにやけていたぞ」

「紅音にも分かるくらい?」

「どういう意味だ」

「な、なんでもないです……」


 ……最悪だ。

 こんな空気で、こんな場面で笑うとか。さすがに不謹慎すぎる。


『どうせ、“あの子がもう呪いを使わなくて済む”とか考えたんでしょ。立場も考えずに』

「うっ……ごもっともです」


 不謹慎なのはわかるが、そうだろ。

 子供に背負わせるもんじゃない。


「……でも、それで済む話じゃないのも分かってる」


 陰陽頭は、どうすれば――……


「喜ばれては困ります!!」

「うおっ!」


 村長が声を荒げた。


「この村は漆家が管理しているのですよ! 陰陽頭がこのようになって、これからどうすればいいのですか!!」


 え、ちょ、待って。

 それ俺に言うの?!


 座敷童子が驚いて、後ろに隠れる。


「お、落ち着いて──」

「何が落ち着けるのですか!! 根拠もない言葉など要りません! 納得できる説明をしてください!!」


 うぅぅうううん!! 正論!!

 でも無理!! 今の俺じゃ無理!!


「貴様!! 闇命様になんという口を!!」


 紅音までキレた?!


「無礼にも程がある」


 琴平も!?


『ひとまず落ち着いてください』


 百目!! 刀!! しまって!!

 やばい、収拾つかない──


『――うるさい』


 ひっ……!

 低い声が、部屋を一瞬で静めた。


「申し訳ありません闇命様」

「……すいませんでした」

『取り乱しました』


 ……助かった。

 闇命君、怒ってる? でも、今はいつも通りの空気に戻った。

 一瞬だけの怒りだったのか。


『村は当面、今まで通りで問題ない。内側は村長が管理していたんだからね。外側については安倍家で対応する。近くに他の陰陽寮がない以上、それも視野に入れる。件については僕達が対処する』


 淡々と続ける。


『今はこの事実を外に出さず、やり過ごすのが最適だよ』


 ……すごいな。

 この状況でここまで整理できるのか。


「しかし……」

『今騒いで何か変わる? 陰陽頭の力は戻る? 件は解決する? 考えもせずに喚くだけで、よく村長が務まるね。尊敬するよ』


 毒、来た。


 村長の顔が真っ赤になる。


 俺は知らないからな!!!


「とりあえず、目を覚ますのを待つしかないな」


 ずっと静かに静観していた雨燕さんが口を開いた。


「頭も冷やす必要がある。しばらくは各自自由に動いた方がいいだろう」


 空気が少し緩む。


「ワシは少し出る」

「…………僕も」


 二人はそのまま部屋を出て行った。

 足取りは荒く、引き止める余裕はなかった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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