十二神
────いや、出来ないでいつものように諦める訳にはいかない。
今は、諦めればすべてが丸く収まる事態じゃない。
「んっ……」
『っ、優夏!!』
やっと目を覚ましたっ……か?
────ゾクッ!!
『………ぇ』
ち、違う。優夏じゃない。
誰だ。なんで、僕の体に優夏以外の奴がいる。
目を覚ました僕の瞳は、いつもの柑子色ではなく、漆黒。
周りを見回しながら、ゆっくりと上半身を起こした。
っ、な、笑いかけて、きた?
『今回の危機は、そう簡単に抜けられそうにないですね。力をお貸しましょう』
僕の声とは思えないほど通る、優しい声。
《《僕の頭に乗せられている手》》も、僕の手とは思えない程温かい。
『少し、君の法力を借りますよ。大丈夫、君の体に影響はありません。もう一人にもね』
その場から立ち上がり、漆黒の瞳をセイヤと道満、雨燕に向ける。
笑みを浮かべているため優しい印象を与えるけど、その奥に潜む殺気──いや、殺気では無い。
この、肌を撫でるような感覚。舐めまわしているようで気持ち悪い。
その視線に名前を付けるとしたら、哀れみ、だろうな。絶対に向けられたくない。
『西方を守護する者よ、主の名において、今ここで神の力を見せよ。東西南北の四つの方位を司る神獣──名を白虎。急急如律令』
え、白虎? なんで、白虎を扱えるの?
っ、暗雲が漂い始めた。
辺りが暗くなって雷の音が響き、風が吹き荒れ始める。
何かが来る。今まで感じた事の無い何かが。体にビシビシと突き刺さる。
『さぁ、神の裁きを受けなさい。蘆屋道満』
「き、さま!! まだこの世をさまよっていたのか、《《安倍晴明》》!!!!」
道満が叫んだ瞬間、神々しい鳴き声が辺りに響き渡る。
それと共に、空を駆け回る一つの白い光──あれが、西方を守る神獣、白虎か!!!
「あれが、かつて安倍晴明のみが使役出来た十二神のうちの一体、疾病喪と恐れられた神獣、白虎」
駆け回っている白い虎。
空中から地上へ降り、安倍晴明と呼ばれた僕の体付近に着地した。
神なだけあって、白い毛並みは輝き。赤く光っている瞳は鋭く、見られただけで足がすくんでしまう。
爪は鋭く、口から覗き見える牙は、ひと噛みされただけで即死するんじゃないかと思ってしまうほどだ。
この場から動く事が許されない。そんな空気が漂っている。
そんな中、晴明は先程と変わらない優しい微笑みを浮かべながら、道満を見続けていた。
『道満、自身の子孫の体を借りて、何をしているのですか? やりすぎだと思います。もう、やめませんか? これ以上、我々の因縁に子孫を巻き込むのは──』
「黙れ。貴様への憎しみは、怒りは、恨みは。まだ残っている。必ず晴らさせてもらう。貴様の血を、絶やさせてやるぞ!!! 『牛鬼よ、我の恨みを晴らすべく、今ここで貴様の牙を見せつけよ、急急如律令』!!!」
道満は白虎を前にしても逃げる事はせず、歯向かおうと新たな式神を出した。
あいつの出した牛鬼は、頭が牛で体が鬼の形。手には大きな三本槍が握られ、大きく鼻を鳴らす。
体は二メートル以上はある巨体。
見た目だけなら強そうだな。でも、相手は十二神の一体である白虎。勝てる訳が無い。
いや、道満の式神は牛鬼だけでは無い。
雨燕に向けていた陰摩羅鬼も、まだ札に戻ってはいない。
数的には道満が有利。式神だけではなく、セイヤという存在も大きく関わるだろう。
身体能力は、並大抵のものでは無いみたいだし、式神なども扱えるだろう。
というか、僕の体で何してくれてんの安倍晴明。先祖だろうとなんだろうと、僕の体を勝手に扱わないで欲しいんだけど。
「ここで再度、闇に葬ってやるぞ」
『それは困りますね。この体はあくまで借り物。葬られてしまえば、この体も一緒に亡くなってしまいます』
それは本当にやめろよ。
安倍晴明でも許さないからな。
「知らぬな、そんなこと。ワシには関係の無いことよ。さぁ、牛鬼、陰摩羅鬼。安倍晴明とその子孫を闇へと葬らせよ!!!」
道満が言い放つと、牛鬼と陰摩羅鬼は応えるように晴明の方へと向かい、自身の武器を振りかざした。
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