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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 文月朔夜
第三章 水仙家

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一人の時間

 次の日、目を覚ますと琴平に「数日は休め。酷使しすぎだ」と半ば強制的に休みを言い渡された。


 闇命君は納得いかない様子で反抗していたが、今回は琴平も引かず。結局、闇命君が折れた。


 説得中の琴平は本当に怖かった。般若の面が見えた気がする。

 いや、怒りで拳を鳴らす紅音の方が般若に近いか。どっちにしろ、怖かった。


「どうする、闇命君」

『知らない』

「ふてくされないでよ。仕方ないじゃん、言い返せてなかったし」

『言い返してたし』

「はいはい」


 肩の上の鼠姿の闇命君が鼻を鳴らし、そっぽを向く。

 暇で、目的もなく廊下を歩く。人の気配がない。静かすぎて、少し寂しい。


「闇命君」

『なに』

「羽織の少女なんだけど、靖弥とどんなつながりなんだろう」

『さすがにそれは、本人たちに聞かないとわからない』


 そりゃそうだよね。

 こんなところで話していても意味はない。


「それじゃ、狙いはどうかな。蘆屋道満が表に出ていない以上、俺以外にも目的があるかもしれない」

『例えば?』

「水神様、とか」

『……それならあり得るか。水神を取り込むために動いた可能性はある』

「でも、それはなんでなんだろう。まsか、式神にするとか考えてないよね?」


 聞くと、闇命君は黙ってしまった。

 鼻をヒクヒクさせている。


 さすがに、わからないよねぇ。

 ……そういえば、説得のあと琴平はどこかへ行っていた。


 いや、待って。一人行動って完全に死亡フラグじゃん。やめろって言ってるのに。しかも俺達には休めって、自分は動くとかありえないだろ。


「あ、夏楓!」

「優夏さん。闇命様も、お疲れ様です」

「お疲れ。こんなところで何してるの? 一人って珍しいね」


 廊下に夏楓が一人でいた。


「紅音が魔魅ちゃんと外に出ているので、私も合流しようかと」

「外?」

「はい。なんだか、お花があるみたいですよ。詳しくはわからないですけど」

「花なんてあったっけ」


 外は荒れていたはずだ。


「陰陽寮の裏手にあるそうです」

「へぇ。琴平もそっちかな」

「どうでしょう。一緒じゃないんですね、珍しい」


 本当にな。どこ行ったんだよ、あいつ。


「心配ですね。今は何が起きてもおかしくないのに」

『まぁ琴平のことだし、考えがあるんだろう。今は一人にしておいた方がいいかもね。何かあれば連絡してくる』

「そうですね。一人の時間も大事ですし」

『……ただ一つ、あいつは自分の命を軽く見すぎだ。他人優先だからね』

「ふふ、琴平さんらしいですね。闇命様が何度言っても変わりませんでしたし」

『まったく……』


 闇命君でも無理なら無理だな。まあ、この人も大概だけど。


「じゃあさ、俺達が守ればいいじゃん。守り守られる関係って、ちょっとかっこいいし」


 そういうの、少し憧れてたんだよな。


『……君、いつ琴平を守ったの?』

「お願いだから、その目で言うのやめてくれる? せめていつもの嫌味にして」

『自分で言ってて虚しくならない?』

「……………………うるさい」


 ※


 村の外、森の中を一人の青年が歩いていた。


 水色の髪を揺らし、肩には氷の小鳥。

 眉間に皺を寄せ、周囲を警戒している。


 月花琴平――本来は一人行動を禁じられている身だが、今だけは許してほしいと胸中で呟いていた。


 その時、木陰からもう一人の青年が姿を現す。


「琴平、久しぶりだな。忘れられてなくて安心した」

「…………じゃあ、俺はこれで」

「待てって。ここまで来たのは俺に会うためだろ? 式神まで連れてきてくれて、お《《兄ちゃん》》は嬉しいぞ」


 琴平とよく似た男が、煙管を片手に立っていた。


 同じ水色の髪に藍色の瞳。白い息を吐きながら、どこか余裕のある笑みを浮かべている。


 琴平は即座に踵を返すが、肩を掴まれて止められた。


「……何の用だ、琴葉兄さん」

「昔みたいに“おにぃちゃん”でもいいんだぞ?」

「そんな呼び方した覚えはない。それで、本題は」


 手を払い、腕を組む。

 琴葉は煙管を咥え直し、一拍置いた。


「お前――紅音とはどこまで進んだ?」

「…………」


 無言で札を取り出す琴平。


「待て待て、その流れで式神出すな」


 止められ、渋々しまう。


「さっさと答えろ、本題はなんだ」

「落ち着けって。焦ると大事なもん見落とすぞ」


 軽い口調に、琴平は言葉を詰まらせる。

 その隙に、琴葉は肩の小鳥を受け取った。


「まずは俺がここにいる理由だな」


 小鳥を撫でながら、目を細める。


「水仙家から要請があってな。俺が直々に来た」

「水仙家が?」

「事情を聞いたら放っておけなくてな。水神様も守らないといけないし」


 琴平はわずかに眉を動かす。


「今、お前がいる陰陽寮って……呪いを扱う所か」

「お、正解。漆家だ。今はそこで陰陽助やってる」


 琴平は小さく息を吐いた。


「……漆家の巫女よ、すまない」


 小さくつぶやくと、寿葉は首を傾げつつも、問いかけた。


「で、お前は? 安倍家の依頼か?」

「違う。もう抜けた。今は五人で旅をしてる」

「へぇ、面白そうだな。俺も――」

「断る」


 即答。

 琴葉が固まる。


「……え?」

「無理だ」


 間髪入れずに追撃。


「…………反抗期か?」

「いいから本題を言え」

「なんでそんなに冷たいんだよ……お兄ちゃんだぞ……」

「帰れ」

「断る!! って待て待て! お前が帰るな!!」


 去ろうとした琴平にしがみつく。


「離せ」

「やだ!!」


 引き剥がせない。

 数秒の沈黙のあと――琴平は諦めたように頭を撫でた。


「……話せ。聞くだけ聞く」

「……なんで撫でられてるんだ?」

「・・・・・・癖だ」

「そんな癖なかっただろ。まさか紅音にも――」

「今すぐ離せ」

「待てってばぁぁぁあああ!!」


 最終的にげんこつで引き剥がす。

 頭を押さえながらも、琴葉はようやく口を開いた。


「琴平。お前、式神一体しか持ってないだろ」


 その一言で、空気が変わる。


「俺のを一体やる」


 笑みを消し、真っ直ぐに告げた。


「それで主を守れ。命に代えてもな」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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