侍女の昔話
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本日は三本投稿です。
*あらすじ:ユイにソーンにいた時のことを聞きました。
異世界召喚の兆候、例えば不思議な声だったり召喚陣だったりは私の前には現れませんでした。気が付いた時には異世界にいて、気が付いた時には私を召喚したと思わしき冷徹な雰囲気を纏う男達が、私の眼前に立っていました。
その時の光景は良く覚えています。足元には複雑な幾何学模様が刻まれていて、私の心を真似るみたいに微かな光しか灯せないランタンだけが、その部屋を照らす存在でした。
「ほう、召喚は出来たようだな。して、能力はどうだ?」
「・・・あまり戦闘向きではない。我らの覇道には不要な存在であろう」
二人の冷徹な男は私を見てそう言いました。片方は若い黒髪の男、片方は金髪の年老いた男です。そんな彼らの興味に満ちた視線が一瞬にして、虚無を移す瞳に様変わりした瞬間を今でも鮮明に覚えています。彼らは私の平穏を奪っておきながら、一瞬にして私からの興味を失ったのです。
ですがそのことに反抗する意思を私は持ち合わせていませんでした。あまりにも凶悪すぎるその男達の雰囲気を見れば、誰だって私の心情が理解出来る事でしょう。
「・・・まぁ良い、とにかく付いてくるが良い。もしかしたら貴様も使えるやもしれんからな」
黒髪の若い男が私に向けてそう言いました。
ですがそこに情という物は一切ありません、それの瞳を見た瞬間に理解しました。そしてそれと同時にその男の持つ強大さも、だから私は黙ってその男の指示に従うことにしたのです。
「ここはソーン大帝国、この国で生き残りたくば実力を示し続ける他無い」
廊下を行く道中、年老いた金髪の男がそう言います。
その時ビビビと走り、私を救ったのが前世のオタク知識なのです。召喚前に蓄えたラノベや漫画からの知識、そして彼らの言葉から察するに私はこの国で生き残る事が出来ないと一瞬にして察しました。
だってこういう世界の実力主義って本当に弱肉強食ですから。それに私の能力を戦闘向きではないと悟った瞬間私の事を不用な存在と断言出来た辺り、私よりも強い者がありふれていると理解するべきでしたから。冷静になって考えると三次元と二次元を同一視するなんておかしい思われるかもしれませんが、ユウキ君だって最初は似たようなことを思ったはずです。
尤も私もその現実をそう簡単に受け入れるつもりはありません。ですが言うは易し行うは難しとも言います、実際戦い抜くことは不可能でしょう。という訳で何とかして逃げ出そうと思いました。
とはいえ我武者羅に逃げても明日はないのは自明の理、まずは私が得た”能力”とやらを探る事にしました。
「召喚者様・・・」
「おっと、名乗ってなかったな。私の名はアケチ・ミツヒデという」
若い黒髪の男がそう言いました。かの有名な光秀と同じ名ではありましたが、私の知るその姿とは丸で異なっていました。最も別人と断言するわけではありません、過去の情報が私の生きていた現在まで正しく伝わっているとは断言出来ませんから。
「我が名はフィスト、一闘星の戦士なり」
そして年老いた金髪の男もそう言いました。
この男、年老いた身ではありましたがただの老いぼれというわけではありません。むしろ月日を重ねた分、纏う雰囲気の凶暴さをより増したかのように思われます。
「ミツヒデ様、可能であれば私の能力を教えて頂きたく」
「その理由は?」
「力は使いこなせてこそ。そしてより効率良くその力を行使するため、自らの能力について知っておきたいのです」
私がそう言うと、ミツヒデが面白そうに笑いました。
「ほう、なかなか殊勝な心がけだ」
フィストがそう言った瞬間、私の脳裏にある情報が表示されました。
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名前:カガワ・ユイ
種族名:人間
特質能力
・愛好者
…解析・鑑定 精密分析 応援団長
→解析・鑑定:対象を解析し、データを導き出す。”能力”による妨害を受ける。
→精密分析:”解析・鑑定”、もしくは”広域探査”した事象をさらに細かく分析する。
→応援団長:自分が好意的な印象を持つ対象が自分の周囲にいる場合、自分とその対象の身体を強化する。また自分の周囲に同じ志を持つ者がいた場合、その対象にもこの権能は適応される。
応用能力
・広域探査:非常に広大な範囲を乱雑に探査できる。
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「これは?」
「これはお前の持つ能力だよ」
私の質問にフィストがそう答えました。
そしてこの能力を見た時に思ったのが、果たしてこの能力は本当に戦闘向きではないのかという事です。例えば”広域探査”は周囲の気配を探るのに使えますし、”応援団長”は条件付きとはいえ使い様によっては非常に強力な効果を発揮できるでしょう。
尤もこの世界はラノベや漫画の世界ではありませんから、私の知識が適さない可能性がありましたが、その時の私は確かにそう思考していたのです。
「・・・」
「ふむ、お前、私が貴様の持つ能力を戦闘向きではないと断言したことを疑問に思っておるな」
そしてそんな私の心の内を見透かすのように、フィストがそう言葉を発しました。
「っ!?分かりますか・・・」
「分かるとも。ではここで一つ、貴様の持つ”広域探査”と”精密分析”でもってこの地下道の廊下には何人の人間がいるか探ってみるが良い」
高圧的に発された言葉に従って私は”広域探査”を発動し、周囲の気配を探ってみました。しかし・・・。
「私しか、いない」
「その通り。この場には三人いるにも拘わらずだ。強者に通用せん能力などソーンには不要、それが戦闘外の能力であるならなおのこと。それに”応援団長”なる能力もこのソーン大帝国では活かしきれまい。何故ならここは実力主義の国、他人を蹴落とす事が出来ないのならこの国で生き残ることは出来ない。そんな蹴落とすべき相手に好意的な印象を抱けるわけが無いだろう」
フィストは冷徹に私に向けてそう言いました。その時の心は恐怖一色、このソーン大帝国で生き延びる事はどうやったって無理だと悟ったからです。
だけどそれと同時に希望がありました。仮にこの男達が私に対して一切の興味を抱いていないこの瞬間なら、この不自由なソーン大帝国から逃げ出すことも出来ると思ったからです。もちろんその考えに確証があったわけでもなく、逃げ出した後生き延びられる保証もありませんでした。
しかし逃げ出さないと始まらないという事だけは理解していました。そしてこの男たちが私を過小評価している内にしかその希望は無い。尤もそれを悟らせてしまっては意味がありません、表面上は戦う意志を見せなければ監視の対象として興味を向けられるかもしれない。
「畏まりました。私はソーン大帝国のため、粉骨砕身の思いで努力致しましょう」
「ふむ、その心意気や天晴。異世界人故魔素を扱うのにはそれなりの時間を有するであろうが、諦めず続ける事が出来ればいずれ実を結ぶ事であろう」
「・・・ミツヒデ様が仰るなら従うまで。この者にも訓練の場を与えておきましょう」
そう言ってこの会話が終わりました。そしてその夜、私は命からがらソーン大帝国から逃亡したのです。
・
・
・
「以上が私の」
「待て」
「はい?」
「ざっくりしすぎ!!」
締め括ろうとしたユイにそう文句を言ってやった。だってそうだろ、どうやって逃げ出したのかとかどうやって幽冥城にたどり着いたのかとか、そしてソーンに召喚された異世界人の話とか、そういった聞きたい情報の全てが欠けているのだから、これで話は終わりっていう方が無理な話であろう。
「もっとしっかり説明しろよ」
「しっかりですか?」
「そうだよ。俺としてはどうやって逃げ出したのかとか、色々聞きたい事があるんだけど」
「あぁ、逃げ出すのは頗る簡単でした。応用能力の”広域探査”が非常に優秀でして、結構広い範囲を探査出来るんです。乱雑とはいえ城の中身をざっと認識する程度なら可能でしたから、城の抜け道を探すのは容易でした。ただ逃げるのは結構我武者羅でしたね、強いて言えば人の流れのある方へ逃げまして、その道中でロフォカレさんに助けられました」
俺の問いにユイがそう答える。
ロフォカレさん、聞いたことがありそうな名前である。誰かは分かんねぇけど。
「そのロフォカレさんって言うのは?」
「幽冥城のもう一人のメイドですよ。ほら、ユウキ君が初めて来た時に・・・」
「あぁ、角が生えてた人ね」
へぇ~、あの人ロフォカレっていうんだね。初めて聞いたよ。
なんでもユイの先輩に当たる人だそうで、かなり長い間フェルシアに仕えているそうだ。
「彼女は私にメイドとは何たるかを教えてくれた師匠に当たります。それはまぁ鬼の様な指導でしたよ」
「はぇ~、頑張ったな」
「ふふん、黒髪メイドは最強ですから!!最強になるためなら安いものです!!」
「何言ってんの?」
ユイも初めて会った時は真面目枠だと思っていたが、こうやって話すと全然違うんだなと思い知らされる。マジで。
「まぁいいや。所でロフォカレさんって角生えてたけど種族は何なんだ?人間じゃないよな」
「魔人だそうです。だから角が生えてるって言ってました」
「え?俺は生えてないけど・・・」
「あれでしょ、出そうと思えば出せるんでしょ」
「・・・ほんとだ」
どうも翼と同じらしい、出そうと思った後に頭を撫でたらそれっぽい感触があった。まぁ今の所出すメリットは無さそうなので引っ込めておく。
「おや、引っ込めるんですか」
「いらないからな。んで、何でお前はそのロフォカレさんに幽冥城へ連れて来られたんだ?誰でも彼でも連れてくる訳じゃないんだろ?」
「もちろん、ちゃんと理由はありますとも。何でもロフォカレさんはソーン城に諜報員を忍ばせていて、そこから私が召喚されたという情報を得ていたそうです。だけどその私が城外にいたのを不思議に思い声を掛けたと言っていました」
なるほど、そういう事情があったのか。
とはいえ不用心な気がしなくもない。今回はユイが城から逃げ出したというのが真実であったから良かったが、仮にこれが偽装だったとしてユイが情報を得るためにロフォカレさんに近づいたとかだと色々と情報が漏れ出そうなものだけどな。
「事情は分かった。けどよくユイが真実を話してるって分かったな。仮にお前が索敵に駆り出された諜報員とかだったらロフォカレさんもちょっと不味かったんじゃないか」
「あぁいや、初めから素性を晒してる訳では無かったです。その時は商人を装っててかなり巧妙に訪ねてきましたね。彼女は人の顔色から考えている事を読み解くのが得意なので、その辺の心配は無いって言ってました」
はぇ~、そういう事だったんだ。合点がいった。
そしてそのロフォカレさんがなぜ幽冥城で一度しか見かけなかったのかも納得出来る。
「てことはロフォカレさんはソーン大帝国にいるんだな」
「そうです。あそこはフェルシア様が唯一問題視している国ですから」
「へぇ、やっぱソーンってヤバいんだな」
フェルシアの奴、能天気野郎かと思ってたが案外そうでも無かった様子、それなりに人間社会にも興味があるのかもしれない。或いはヤバい者同士惹かれ合っているのかも。いずれにせよフェルシアがソーンを問題視しているのは有難い。有事の際は彼から情報を得られるかもしれないからね。
「で、質問は終わりですか?」
「あと一つ、他の召喚者の事についても聞いておきたい」
万が一闘う事になった場合、相手方の情報が在ると無いとでは大違いである。ただ敵方もその辺の事は弁えていたらしい、召喚者の能力に関する情報はあまり得られていないとのこと。
「申し訳ないのですがその辺の情報はかなり巧妙に隠蔽されているらしく、ロフォカレさんでも掴みきれてないそうです。ただ彼らの名前と序列だけはある程度分かるとのこと」
おっと、それは良い、序列と名前だけでもかなりの情報だろう。例えば誰に誰を割り当てるとかの大まかな目安に成り得る。
「それって今言えるか?」
「えっと、確か二闘星のピストラ、三闘星のセシル、四闘星のゼニス、六等星のリッパーが異世界人だったはず」
「なるほど、ていうことは五闘星は異世界人じゃないのか?」
「はい、五闘星のエンビィは一闘星のフィストが呼び出した悪魔だと聞いてます」
「ほぉ、悪魔も闘星に入れるんだな」
「いえ、これは異例の事態のようです。長いソーンの歴史の中でも悪魔が闘星に名を連ねることは無かったそうなので」
「むむむ・・・」
これは困った、そういう事ならそのエンビィって悪魔は相当に強い悪魔なんだろう。
もしかしたらマチルダに現れた悪魔はそのエンビィなのかもしれない。仮にそうだとしたらその悪魔より強いやつが四人、皇帝含めると五人いることになるんだよね。まぁそうではないと信じたいが楽観視出来ないのが現実であろう。
「情報提供助かった。また何か分かったら教えてくれ」
「承知しました。他に何か聞きたいことは?」
「無いな、フェルシアも帰ってきたし良い頃合いだろう」
ユイにそう言い、俺は扉の隙間に視線をやる。
「バレた?完璧に隠れてると思ったんだけどな」
その扉から入って来たのは何ら悪びれる様子も無い、満面の笑みのフェルシアである。盗み聞きしてるのがバレたのにこの態度は何なんだろうね。
「ったく、少しは悪びれろよ。隠れて何してたんだか」
「いやぁ、イケない現場でも見えねぇかなって」
「何?お前も娯楽に飢えてんの?」
「僕とユイは外に出れないからね。それも仕方無い事だよ」
そう言ってフェルシアが肩を竦める。外に出れないってのはどういう事なんだろう?
「何で出れないんだ?」
「どうも私が召喚された時に発信機の働きをする古代遺物を埋め込まれたらしく、この幽冥城から出るとソーン大帝国に私の所在がバレてしまうのです」
「あぁ、確かここの結界って内から外への制限をかけるタイプだったな」
「昔色々あってそれの対策にな。まぁそれのおかげで僕達の安寧は守られているわけだ」
フェルシアが嫌な物でも思い出したのか、少し忌々しげにそう言った。
しかしこの昔ってのは一体どれくらい昔なのだろうか。俺とフェルシアでは昔の尺度が大分違うはずなので、相当昔の事なのは間違いないだろう。
「昔、ね。しかしお前でも困る事があるんだな」
「もちろんさ、僕がそんな自由人に見えるかい?」
「見えるから言ってんだよ。んで、ユイが外に出られない訳は分かったけど何でお前も外に出られないんだよ?」
「それは内緒、話した所でどうしようも無い。でもまぁもう少しで出られそうな気もするけどね」
「あ?どういう意味だよ?」
「ただの直感さ。だから根拠何て物は無い」
フェルシアが意味ありげにそういう。よく分からないけれどこれ以上追求しても無駄な気がした、どう問うた所でこいつは答えないだろう。
「まぁそういう事にしておいてやる。そういやお前、ここに帰ってきたって事は用事は済んだの?」
「済んだ。だから今日の夜にでもロフォカレに伝えておくよ、その後はロフォカレが上手くやってくれるはずだ」
「お前ロフォカレさんに頼り過ぎじゃない?」
「ははは、そうかもな」
フェルシアがそう言って笑う。でも笑ってる場合じゃないんだよね、少しくらいは彼女に感謝の言葉を送っているのだろうか。
「ったく、たまには礼ぐらい言ってんのか?」
「大分言ってないな」
「だと思った。その内ストライキでも起こされそうだな」
「それは困る。市井のくだらない噂話だって僕達にとっては娯楽の一種なんだからな」
「本当ですよ」
フェルシアの発言にユイがそう言って肯定する。どうもこいつら、噂話に縋るほど娯楽に飢えているらしい。
「お前らそんなに娯楽が無いの?」
「無い。暇で暇でしょうがないとも」
フェルシアが心底つまらなそうにそう言う。どうも娯楽に対する飢えはかなり深刻な様子。
「本当に暇なんだな」
「暇だな。まぁでもユイが来てくれて大分楽しくなったけどな。彼女が見たという漫画やアニメ、ラノベと言った物の知識は退屈だった僕の日々に潤いを与えてくれた」
「ふむ、そりゃ良いな」
「だろ?でもその分現物を見てみたいという気持ちが強くなってだな・・・」
「本当ですよ。頑張って再現しようとした事だってあるんですから!!」
そう言って何故かユイが胸を張る。まぁ再現しようとしたというあたり、その試みは失敗したんだろう。
「てことはお前、その再現には失敗したんだな」
「はい、私の画力では力及ばずと言った感じです。ていうか途中からその作業が無駄に覚えて来ましてね」
「何でだ?面倒くさくなったのか?」
「それもありますが一番の理由はどうやったって滅茶苦茶良い所でお話が終わっちゃう点です。だってイトノコマンが九巻で終わってるんですよ?どんなに頑張ってもここから先は再現出来ないんですから、読み終わった後十巻が気になるけどどう頑張っても見れないという現実に、枕を濡らす事になるのが目に見えてます」
「本当だよ。ていうかそもそも僕はその九巻を実際に読んでみたいんだよな。ユウキ、何とか出来ないの?」
フェルシアが俺にそう訪ねてくる。
実は何とか出来なくは無いのだ。この前習得した魔法を使えば何とかなる。ただそれを実行するためにはちょっとした条件をクリアする必要があるのだ。
「出来無くは無いけど、ユイって魔素は平気なの?」
「問題無いですよ。この城の中が結構な魔素濃度ですからもう慣れてます」
「ここで匿うに当たってちょっと肉体をいじったんだよね。だから今は人間じゃなくて人間が魔素に適正を得た半人半魔って種族になってる」
ほう、そうなんだ。確かアリナも半人半魔だったよね。
まぁその話題は今は良い、ユイが魔素に適正があるのなら俺の案が実行が出来るかもしれない。
「本当にユイは魔素が大丈夫なんだな?」
「余程濃く無い限りは大丈夫です」
「分かった。ならいけるかも」
「何がだい?」
「まぁ見てなって。紙はあるか?」
「あるぞ、ほれ」
そう言うとフェルシアが虚空から大量の紙を取り出した。おそらく今のは”収納”だろう、だが俺の”収納”とは段違いの性能を誇っている。
まず取り出された紙に魔素の侵食が殆ど無い、俺(赫イ智慧)が結構頑張ってみたけどこの領域に到達する事は出来なかった。やはり上には上がいるんだなと思いつつ俺の案を実行に移す。
「じゃあお前らに見せてやる。ほれ」
「一体何を・・・って、な、なななな、何ィ!!」
驚愕のあまりユイが変な叫び声を上げている。だが無理もない、なにせ一瞬にして製本された漫画本、そしてラノベが現れたのだから。ちゃんと特徴的な表紙も再現しております、一目でわかって一安心。
この漫画本やラノベの再現には、こないだ”王の盾”を分解したときに得られた”念写”という魔法を使った。これは一度見た物を紙に写生出来る魔法となっている。別に本人が内容を覚えておく必要が無く、一度見ただけで効力を発揮出来るため大変便利な魔法となっているのだ。
ただしちゃんと欠点もある。この写生される絵や文字は魔法によって描かれているため、使用される紙の魔素濃度がかなり高くなってしまうのだ。だから気軽に使える魔法では無いのだが、こいつらは魔素に適正を持っているのでその辺の配慮してやる必要が無かった訳だ。
ちなみに紙を綴じたのは”創造ノ王”と魔法でやっている。赫イ智慧が力魔法の応用と”創造ノ王”を組み合わせてどうとか言ってたけど俺には丸で分からなかった。でも手柄は俺の物だ。
「ふっふ~ん、すごいだろ」
「あっ、あぁ、イトノコマン十巻、夢にまで見た続編・・・。いや、ここは一巻から読んで復習を」
「貸せ、ユイ。僕が先に読むんだ!!」
「な!?ご主人様といえどこれは譲れません!!」
「えぇい!!上司命令だ、先に読ませろ!!」
こうしてガキ二人の喧嘩が始まる。俺はそれを横目に見ながら再び、念写を使ってこいつらのための製本を行うのだった。
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その日の夜、ソーンの街にある噂話が広がっていた。
『新たなる魔王リュートが誕生、その領土はキルクルスである』
どこから興ったとしれぬ噂は一人、また一人として広がり、ソーンの情報局の耳にも入る事となるのだった。
三本投稿一本目、次で諸外国交流編は終了となります。




