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とある魔王の無双譚  作者: azl
諸外国との交流
89/145

彼らの帰る場所

*あらすじ:子どもたちを親元に返そう!!

「こっち!!」


 少年少女の指差す方へどんどんと進んでいく俺達二人。

 しかしはぐれないよう気を使い続けるのは中々に難しい。純粋に人が多すぎるのだ、それにこの子達は背が小さいので、一度でも視界から外れると見つけ出すのは難しいだろう。


「君たち、手を繋いどこうか。離れるとまずいからね」

「「うん」」


 というわけで予め対策を練っておくことにした。断られたらどうしようかと思ったけど素直で助かった、可愛げがあって良いね。

 とはいえ排斥できたのはこの子達とはぐれる可能性だけなので、次はこの子達の家に彼らの両親がいない場合の対処法を考えておかなければならない。もしかしたら両親もこの子達を探して外に出ているかもしれないのである。

 だから知っておくべきは両親の人相かな。最悪サノスを家の前に置いておけば、俺が変わりに両親を探しに行くことだって出来る。


「君達、お父さんとお母さんはどんな人なのかな?」

「えっとね、私達そっくりだよ。それでお父さんとお母さんは仲良しだから、お家で二人一緒に働いてるんだよ」

「うん、でも最近は忙しいからってあんまり遊んでくれないの・・・」


 そう言ってしょんぼりする子ども達二人。然し今の俺にはこれになんと返せば良いのか丸で分からなかった。


「うむむ、そうなんだ・・・」

「うん、だからお兄ちゃんに変わりに遊んでほしいな」

「あぁいや、俺ってペルティーダに住んでないからちょっと難しいかな・・・」

「えぇ〜!?じゃあペルティーダに引っ越そ?みんな優しいから良い所だよ?」

「それはちょっと難しいかな・・・」

「そんなぁ・・・」


 少年を一瞬にして落ち込ませてしまった。申し訳無いとは思うものの、できないことを出来ると言って期待させた後、失望させるよりかは俄然良い気もした。


「ごめんね・・・」

「しくしく、遊んでほしかった・・・」

「我儘言っちゃ駄目だよ。ごめんなさいお兄さん」

「大丈夫。ところで方向はこっちで合ってるんだよね?」

「そうだけど・・・。あっ、あった!!」


 少女の指差す先にあったのはシャッターの掛かった少し豪華な雰囲気を纏う店である。

 その店の先では猫っぽい獣人の女性が落ち着かない様子で行ったり来たりを繰り返している。


「「お母さん!!」」

「っ!?」


 そしてその女性は少年少女の母親だったらしい。泣きながら駆け寄った二人を、両手を開いて抱きしめていた。


「何処言ってたの!?心配したのよ!?」


 母親が声を震わせながらそう問うものの子ども達は泣きじゃくっていて声が上手く出ない様子。

 まぁこの場に居座り続けるのも野暮というものだろう、住所も分かったしこの場を離れようと思ったその矢先、その女性が俺達の方へ声を掛けてきた。


「あなた方がこの子達を見つけてくださったのですか?」

「えっと、まぁそうです」


 その問いに俺がそう答えると、彼女はペコリと頭を下げた。


「本当にありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか・・・」

「いえ、気にしないでください」

「そういうわけにはいきません。なにかお礼をさせたほしいのです」

「・・・じゃあお言葉に甘えましょうか」


 断るという択もあるにはあったのだが、好意を無碍にはしたくはないし、折角だから貰える物は貰っておこうと思いその御礼とやらを受けることにしたのだった。



「この度は本当にありがとうございました」


 先程の子ども達の母親にそう頭を下げられた俺。

 彼女に案内されたのはシャッターの掛かっていた店の中、俺はその店のソファに腰掛けている。

 しかし中に入ってみてもこの店が何なのかは丸で分からない。外観からだとシャッターが掛かっていたため何の店か分からないのは当然といえば当然なのだが、入ってみてもなんの店なのか分からないとは思わなかった。


 店の中にあったのは絵を飾るときに使う額縁や、宝石の嵌まっていない指輪などなど。そしてそういったものの形は多種多様でありその総量は中々のものであった。

 そして内装もかなり豪華である。ターゲットは恐らく富裕層なのでそういった人々の感性を射止めるにはこれくらい豪華な方が良いのかもしれない。


 ただそれ以上に気になるのがこの鉢に植えられたラベンダーだ。

 このラベンダー、この店の至る所に飾られており店の香りを自らの香り一色に染め上げている。きつすぎる匂いはあまり好きではない、だから香水とかも強すぎる物は苦手なのだがこのラベンダーたちは中々ギリギリのラインを突いてきていた。まぁ花自体は好きなのでそれで上手く打ち消すことが出来る。


 ちなみにここまで連れてきた子ども達は泣き疲れたのかスヤスヤと眠ってしまったらしい。つい先程母親が寝室に連れて行ったようだ。


 そしてその母親もかなり子ども達を心配していた様子。だが無事帰ってきて緊張が溶けたらしく、強張っていた表情が少し柔らかくなっていた。


「ま、何事もなくて良かったです」

「はい。本当にありがとうございました」


 再び母親が頭を下げる。そしてちょうどそのタイミングで店の裏口のドアが空いた。


「キャス、子どもたちは何処に?」

「泣き疲れて寝てるわ。今は寝室よ」

「そっか、良かった・・・」


 入ってきたのはサノス、そして猫の耳と尻尾を持った獣人の男性の二人。この男性が先程の子ども達の父親らしい。

 帰って来ない子ども達を探すため軍の所に行ったという情報をこの男性の奥さん、つまり子ども達の母親から聞いていたのでサノスに彼を呼びに行かせたのだが、思ったよりも帰って来るのが早かった。

 まぁ子ども達の安否をかなり念じていたわけだから、当たり前といえば当たり前だけどね。


「あなたがリュートさんですね。今回は本当にありがとうございました、あなたがいなかったらと思うと・・・」

「気にしないでください。何はともあれ無事でよかったです」

「本当にありがとうございました。私は少し子どもたちの様子を見てきます」


 父親はペコリと頭を下げたあと二階にあるらしい寝室へと向かった。かなり心配していたようなので、子ども達を見て速く安心してもらいたいものである。


「しかしリュートさん、なぜ私の子ども達は今日はこんなにも帰りが遅かったのでしょうか?」

「実は人攫いに攫われかけていまして・・・」

「人攫いですって!?」


 母親がびっくりしてそう叫んだ。だが無理もない話である。


「まぁなんとか攫われる前に見つかって良かったです」

「そうですね、本当にありがとうございました。仕事も一段落付いたので、これからしばらくは家に居させようかと思います」


 なんでも仕事が忙しくなり、近所の知り合いに面倒を見てもらうことが増えていたらしい。そして今回の事件はその帰り道に起きた事件とのこと。普段ならとっくに帰ってくる時間なのに帰ってこないことを不審に思い、店を閉じて自らの子ども達を探し出そうとしていたそうだ。


「リュートさんがいらっしゃらなかったらと思うとゾッとします。ぜひ今回の一件のお礼をさせて下さい」


 子ども達を見て安心したらしい、寝室から帰ってきた父親が俺に向かってそう言った。ただ何が欲しいと答えるのは中々に難しかった、そういう性分なので仕方無い。


「そうですね、せっかくなので何か貰っておきます」

「是非とも。何かお望みの物はありますか?」

「いえ、これといっては・・・」

「ふむ、でしたらここは我々らしく、この店にある物をご自由に持っていくという事でどうでしょう?もちろんなければお作りすることも可能です」


 思い悩んだ結果獣人の父親がそう言った。

 現金よりかは俄然良いけど、それはそれとしてここは何の店なんだろうか?


「そういえばここってなんの店なんですかね?ずっと気になってまして」

「ここは金属加工店です。額縁だったり指輪のフレームだったりを作ってます」


 はぇ〜、だからこんなに色々あるのが、合点がいった。

 とはいえ今欲しい物はここには無かった、貰っても嵩張りそうだしね。


「中々良い物ばかりですが、今の所これと言っては・・・」

「無ければ次に来店した時でも構いませんよ」

「おっと、ならそうさせてほしいです」

「かしこまりました。しかし何も渡さないというのは少し申し訳無いので、これを貰っておいてください」


 そういって父親が渡してきたのは太陽を形どったネックレスである。綺麗な装飾が施されており結構軽い。


「良いですね、これ」

「気に入って頂けたようで何より、太陽はペルティーダの国旗にも描かれている大変縁起の良い物なのです」


 国旗か、まぁ確かにあっても不思議じゃない。てことはギルレオンとかにもあるのかね?


「はぇ〜、そうなんですね。ちなみに太陽にはどんな意味があるんです?」

「永遠に輝くもの、転じて永遠だったり繁栄だったり、あるいは日の出から転じて門出や希望を表す事もあります。ですから商人の方に指輪やネックレスをお作りする際に良く注文されるのがこの形ですね」

「へぇ、良いですね」

「はい。ちなみに婚約指輪などのペアリングは三日月が多いです。三日月とは欠けの無い満月へ大成する道中、転じて進歩だったり発展だったりを意味します。ですから二人共に歩む証に良く選ばれるのがこの三日月となるわけです。ちなみに満月自体は円満や祝福と言った意味を持ちます、大抵は演技の良い日の贈り物に選ばれる形ですね」


 大変ためになる話を獣人の男性がしてくれた。中々ロマンチックで良い話だったね。


「ためになりました。じゃあ次来る時はその辺のことを踏まえてお願いしようと思います」

「かしこまりました。どんな難題であろうとも今日の恩義に報う為立ち向かう所存です」


 獣人の男性がきっぱりした表情でそう言った。

 その日がいつか来るのかは分からないけれど、こういう風に自らの責務に誇りを持つことが出来る人間になりたいなと思いながら店を出るのだった。

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