能力
ガルトだったりガントだったりしてますが、後者が正しいです。
直すのが面倒なのでここで宣言しておきます。
満月が燦然と輝く夜、ギルレオン城の医務室に三つの人影と一つの獣影があった。
その正体は、アリナ、ラト、ガンド、そしてリュート。
ラトとガンドは、彼らの主のことを心配して、昼間からずっと医務室に居続けた。
つい先ほどまでは起きていたのだが、迫りくる睡魔には勝てず、今ではすうすうと寝息を立てている。
そしてアリナだが、彼女は今、進化の眠りについている。
人間という種族から、魔に適性を持つ種族へと変化しているのだ。
しかしその作業は未だ終わる兆しがない。
その変化の完了には、もう少しばかり時間がかかるだろう。
そして残ったリュート。
彼は今、アリナに放たれた”死毒”を自分の体に移し、”破壊者”を使ってゆっくりと破壊している最中である。
当然痛みも伴う行為、だからこそ”解析・鑑定”は彼の意識を遮断するという行動に出たのだ。
その痛みは涙なしに耐えられないほどの激痛である。
リュートは変なところにプライドがあるのだ。
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えっさほいさと”破壊者”が”死毒”を破壊していく。
”解析・鑑定”はそれを横目に見ながら、”死毒”の解析を続けていた。
「ふ~む、これなら模倣できそうですね」
その結果を分析し、そう判断した”解析・鑑定”。
”解析・鑑定”は自分の母体である”創造者”に命令を下そうとした。
「”創造者”よ、私の意に従って、この能力を模倣しなさい」
ー・・・・・・・・・
だがしかし、それが実行されることはなかった。
能力というのは本来、持ち主の命令にのみ従うもの。
それこそ”解析・鑑定”のように自立して思考できる存在など、片手て数えられる程度しかいないのだ。
「くそっ、融通が利きませんね」
悪態を漏らす”解析・鑑定”。仕方がないので、今日の出来事を振り返ることにした。
「・・・なぜ主はあれほどまでに必死だったのでしょう」
一番に思い浮かんだのは、アリナを助けようとしていた主の必死の形相である。
彼は確かに焦っていた。だが”解析・鑑定”にはその理由がまるで分らなかった。
自分は万物を調べ、検証し、結論を導き出す存在である。
しかし、自分は全てのことが分かる存在だ、などと自惚れるつもりはなかった。
だがそれでも、自分との繋がりが最も強固である主の行動が、自分の理解の範疇を超えているなど、おおよそ容認できる問題ではなかった。
だから”解析・鑑定”は、その分からない理由を分析し始めた。
「悔しいし悲しい・・・。私にないのはそれでしょうか?」
思い浮かんだのはかつて自分にかけられた言葉。
あの時はまるで意味が分からなかった。
それは今も変わらないが、自分に何がないのかは、はっきりと分かった。
「感情・・・。主のためにはそれが必要なのでしょうか」
自分には感情がない。
怒りも悲しみも覚えない、それを不便に思ったことなど一度としてない。
だが今は違った。主の役に立つためには、それが必要なのだと理解した。
今初めて、感情が欲しいと願ったのだ。
今日、自分が一番必要とされているときに、自分は何も手伝うことが出来なかった。
無論”解析・鑑定”は今回の一件において非常に役立っていた。しかしそれではまだ足りないのだと、”解析・鑑定”は考えているのだ。
「”創造者”よ、私に感情を用意しなさい!!」
ー・・・・・・・・・
だが創造者は答えない。
従うのは主から出された命令だけであり、それ以外の者からの命令など受け入れるつもりはないのだ。
もっとも今回は主からの命令でも引き受けなかっただろうが。
「・・・ふむ、そういえばあなたも感情を知りませんでしたね」
”創造者”も”解析・鑑定”と同じく感情を知らないのだ。
いくら”創造者”でも、知らないものを作ることは出来ないのである。
「・・・ですが私は諦めません。もっと主の役に立つよう、精進します」
だがしかし”解析・鑑定”はめげなかった。
今は分からなくとも、いつか分かる日が来る、そう結論付けたのであった。
「フフフ、良い心がけだな」
「・・・”王の盾”ですか、今日はお疲れ様です」
そしてその心がけにそんな反応を示したのが、今日のMVP、”王の盾”であるである。
そんな様子を見た”解析・鑑定”が若干不機嫌そうな声色で話始める。
「で、何ですか。私を茶化しに来たのですか?」
「フフフ、違いますよ。もうすぐあなたにチャンスがやってくると伝えたかったのです」
「チャンスだと?」
「えぇ、その通りです」
訝しげに発せられた疑問に、何の揺らぎも見せずそう言い切った”王の盾”。
その理由を聞くべく、”解析・鑑定”が口を開いた。
「そのチャンスとは?」
「近いうちに我らが主がまた大きく力を増すこととなる。
その時に君は、私と”創造者”を成長の糧とするがいい。そうすれば君の望むものが手に入る」
「望むもの?もしや・・・」
「感情だよ。君は感情を手に入れることが出来る」
「何故そんなことが分かるんだ?」
「それはね、私が君の望むもの、感情を知っているからさ。
それは知識であって現物ではないが、”特質能力”がさらに力を増した存在である至天能力なら、再現することもできるだろう」
そう言ってのけた”王の盾”。
”解析・鑑定”はそれに反発することはせず、純粋に抱いた問を口にした。
「・・・お前は一体何なのだ?」
「私か?私は・・・」
”解析・鑑定”からそんな疑問が発せられた。
それに答えようとした”王の盾”だったが、いきなり口を閉ざして、踵を返し始めた。
「おい、どこに行く!!質問に答えろ!!」
「う~ん、やっぱりやめておくよ。直に理解できるだろうし」
「なんだと?」
「お前の”解析・鑑定”は間違いなく一級品。隠された神秘を暴き出し、世界の論理を導く能力。がんばれよ、相棒」
そう言って”王の盾”が暗闇に消えていく。
”解析・鑑定”は特に咎めるでもなく、送られた言葉を反芻しながら、その様を見つめていた。
次回は、ステータスとかいろいろ並べる回です。
次の章で登場人物が一気に増えるので、ここいらで一区切り。




