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とある魔王の無双譚  作者: azl
魔人との激闘
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報い

ネタバレ:赤髪の魔人が殺される。


これだけ知っていれば何とかなります。

この章はあと一話で終わりになります。

 リュートに敗れ、その体の大半を失った赤髪の魔人。

 だがさすがは上位種族というべきか。そのまま命を落とすことなく、不帰の森の拠点へと帰還した。


 その彼の拠点は、まるで貴族の屋敷のような外見をしていた。

 彼が暴力で従えていたゴブリンたちに、無理やり作らせたのである。


 そんな屋敷の中に入る魔人。ギリギリ残っていた残存魔力で宙に浮き、自分の部屋に帰っていく。

 そしてそのまま椅子にふんぞり返り、怒鳴り散らすような声で召使を呼んだ。


「おい、ゴブリン!!俺の部屋に来い!!」


 その怒声からしばらくして、ダンダンと廊下が騒がしくなる。

 そしてそれがやんだかと思うと、魔人の部屋の扉がノックされた。


「とっとと入って来いッ!!」


「グギャッ!!」


 慌てるようなしぐさを見せながら、部屋に入ってきたのは一人のゴブリン。

 同族たちと同じくみすぼらしい服装であるが、彼女の右目には大きな傷跡があり、何者かによって暴力を振るわれたことが分かる。


「グギャ、グギャ?」


「あ?この姿は何だだと?なぜお前なんぞに答えてやらねばならんのだッ!!」


 そう激高し、ゴブリンに殴りかかろうとする魔人。

 だが今の彼は顔の下半分だけとなっており、思うように立ち上がれなかった。


「チッ!!不愉快だが許してやろう」


「グギャア・・・」


「フンッ!!貴様の謝罪など聞きたくもないわ!!貴様らは俺の傷が治るまで、この森の見張りでもしていろ、何人たりとも侵入させてくれるなよ!!」


「グギャ、グギャ!!」


「分かったらとっとと行けッ!!貴様らのような見苦しい者など視界にも入れたくない、俺に殺されたくなければとっと失せろッ!!」


「グギャア・・・」


 そう落ち込んだようなしぐさを見せながら部屋を出ていくゴブリン。


 しかし魔人は気付かなかった。否、気付けなかったのだ。

 自分こそがこの森の頂点であり、歯向かう者などいるはずがない。そう思い込んでいたのだ。


 だから気付けなかった。出ていくゴブリンの目が、今までにないほどの激情に揺られていることに。



 部屋から出たゴブリンは、魔人の命令であった侵入者の排斥には向かわず、屋敷のとある部屋に向かっていた。


「グギャア、グギャア!!(リーダー、魔人様は何と仰られていたのですか)」


 そのさなか、彼女と同じく今回の戦争には参加しなかった同族から、声を掛けられた。


「グギャア(しばらく傷が癒えるまで、森への侵入者を排斥し続けろとのことです)」


「グギャア、グギャア!!(でしたら今すぐにでも向かいましょう。ご一緒します)」


 そう提案したもう一人のゴブリン。

 だが目に傷のあるゴブリンは、少し考えるようなしぐさをした後、その言葉を無視して玄関とは反対方向に歩きだす。


 それを不審に思ったもう一人のゴブリン。

 一体何があったのか気になり、質問してみることにした。


「グギャア?(そっちは玄関じゃありませんよ。もしかして魔人様に何かあったのですか?)」


「・・・グギャア、グギャア(魔人様、いえ、魔人はその体のほぼすべてを失っており、今は顔の下半分だけの状態です)」


「グギャア(それがどうしたのですか?)」


 言っていることが分からずに、そう返事をしたゴブリン。

 それを聞いた目に傷のあるゴブリンは、震えるこぶしを握り、こう答えた。


「グギャア、グギャ、グギャア

(私たちはあの者にいつも暴力を振るわれてきました。徒に力を振るわれ、命を落とした同胞たちもいます。ですがそれは彼と私たちとの間に、隔絶した力の差があったから。我々は弱肉強食の摂理に甘んずるほかなかったのです。)」


「ッ!?グギャア!?(隔絶した力の差があった?弱肉強食?・・・もしかして魔人様を殺そうと考えてるんですか!?)」


「グギャア、グギャ、グギャア!!(その通りです。今この瞬間こそが、私たちに与えられた最大のチャンス。もうこんな惨めな思いは終わりにしたいのです。再び皆で暮らせる平穏な日々を取り返しましょう!!)」


 震えながらそう言った目に傷があるゴブリン。

 そしてそれを聞いていたゴブリンも、体の末端から少しづつ震え始める。


「グギャ、グギャア!!(確かにその通りです、リーダー!!今こそ我々は立ち上がる時なのですね)」


「グギャ、グギャア!!(その通りです。私はあの悲劇の部屋で武器を調達してきます。あなたは屋敷の中にいる同胞たちを、集めてきてください)」


「グギャ、グギャア!!(お任せください。無惨に殺された仲間の仇、そして奪われた平穏の日々を取り返してやりましょう!!)」


 そう言ってバタバタと廊下を走っていくゴブリン。

 それを見届けた後、彼女は悲劇の部屋、拷問室に向かうのであった。



 血と鉄の匂いが充満するその部屋に、足を踏み入れたゴブリン。

 床一面には、かつての仲間たちの血や、さらわれた人間の血がおびただしいまでに飛び散っている。


 そしてそんな彼らの内臓やその体を支える骨、筋肉などが部屋の片隅にある箱に、無造作に入れられていた。


「グギャ、グギャア・・・(待っていてください、我が家族たち、そして隣人たちよ。必ずやあなた方の仇を討って見せます)」


 そう祈り、部屋を散策するゴブリン。

 そしてついに探していたものを見つける。


 槍、剣、斧、鉄球。

 魔人がいつも拷問に使っていた道具である。


 そのほぼ全てが血に濡れており、血肉が付着したままのものもあった。

 そんな武器を、左目に涙を浮かべながら取ったゴブリン。かつての同胞の苦しむ声を思い出してしまったのだ。


「グギャア、グギャア!!(我が家族たち。負の連鎖は今日で終わらせます、どうか安らかに眠ってください)」


 だがしかし、復讐をやめるつもりなどさらさらない。

 家族たちを殺したあの魔人を殺すことが、彼らへの一番の手向けになるのだと信じていた。


「「「グギャ、グギャア!!(リーダー!!ただいま到着しました!!)」」」


 そしてちょうどそのタイミングで、彼女の仲間たちも到着する。

 誰一人として欠けることなく、彼女の意思に賛同していた。


「グギャ、グギャア(みんな、武器を取って。今こそ復讐の時よ)」



 どたどたと廊下が騒がしくなる。

 しかし赤髪の魔人はそれを不審に思うことなく、ただ怒りに任せて怒鳴るように叫ぶ。


「おい!!うるさいぞッ!!殺されてぇのかッ!!」


 屋敷中に響き渡った声。

 しかしそれでも、どたどたという足音がやむことはない。


 流石に不審に思った魔人。

 だが自分に命の危機が迫っているなどとは考えなかった。


 だから彼が一番扱き使っている目に傷があるゴブリンを呼んで、対処してもらおうと考えた。


「おい!!ゴブ・・・」


 その言葉が言い終わる前に、魔人の部屋の扉がバンッ!!という乱暴な音を立てて開けられた。

 まるで吹き飛ぶかのような速度でこじ開けられた扉、そこから入ってくるのは武器を構えた大量のゴブリンだった。


「ほう、貴様ら、俺に逆らうつもりか。だが覚悟しておけ、俺の傷が治った暁には・・・」


「グギャ、グギャア(勘違いしないでいただきたい。お前の傷が治ることは決してない)」


「グギャ、グギャア!!(その通りだ!!今ここで復讐を執行する!!)」


「は?お前らは何を言って・・・」


「グギャア!!(やりなさいッ!!)」


 その言葉を合図に、一気に部屋に突撃するゴブリン。


「おい、やめッ!!やめろッ!!」


 槍が口を切り裂き、斧が頭を割り、鉄球が骨を砕く。

 いくら血が流れ出ようと、いくら悲鳴が上がろうと、魔人が死ぬまで終わることはない。


 悲鳴が森中に響き渡る。

 復讐はいまだ始まったばかり。

この章は次の話で終わります。

いったんステータスとプロフィール紹介を挟むかもしれませんが。

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