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とある魔王の無双譚  作者: azl
魔人との激闘
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一つの結末

 決戦の日、ガルドは魔物の直感から、その気配を感じ取っていた。自らの同胞たちを徒に皆殺した、憎きあの存在の気配を。

 彼女は弱かった、あの肉塊を打ち払う事が出来なかった。だから彼女はそれを黙って受け入れることしかできなかった。この世界は弱肉強食であり、弱者が淘汰されるのは自然の摂理である。

 だがそれでも、心の中の復讐の炎はどうしてもくすぶり続ける。そしてその炎は今、最も大きく燃え盛っているのを彼女は感じていた。憎きあの存在が再び自分たちの領域を冒し始めたのだ。

 そして彼女は決意する、二度と仲間を失ったりはしないのだと。

 彼女は以前とは比較にならないほど強くなった。大地を踏み込む四肢も、前以上に力強い。

 彼女はその強靭な四肢で大地を踏み込み、大きく跳躍する。目的地は子ども型の肉塊、今まさに復讐が遂行されようとしていた。



「ガンド、助かった」


 ガンドにそう声を掛けるライナス。しかしガンドは人間の言葉が分からない。

 だから彼女の主がいつもしてるみたいに、取り敢えず頭を振り、肉塊のほうに向き直った。


 彼女は再び口元に魔力を集め、炎の魔球を放つ。放たれたそれは、草原を焦がしながら、一瞬のうちに肉塊のもとにたどり着く。だがそれを難なく回避し、ガンドへ攻撃を仕掛ける肉塊。大地を蹴って飛び上がり、鋼の拳が振り下ろされようとしている。

 だがその一撃を難なく回避するガルド。

 肉塊とガンドのスピードは完全に五分。

 しかし近距離では肉塊側に分がある。純粋な筋力では肉塊が上回っているため、ガルドが太刀打ちするのは難しい。ただし遠距離ではガルドのほうが有利である。彼女の放つ炎は凄まじい速度を誇っていた。またその飛距離も相当に長く、その点において肉塊が張り合うのは非常に難しいのだ。


 よって今回の勝負は自分の有利な間合いの押し付け合いとなるだろう。破壊力自体は双方五分であるため、いかに相手に攻撃されないかがカギとなる。

 今は近距離、つまりは肉塊の領域であった。しかし放たれた拳は大地を穿つだけで、ガルドに触れることは出来ない。しかしそれはガルドも同じ、一切の反撃も敵わず防戦一方である。

 それもそのはず、ガルドはライナスとヒューズをかばいながら戦う必要があるため、いささか不利なのだ。

 だから彼女は、常日頃から練習していた技を披露することにする。


「あれは・・・、炎?」

 ガルドの両前足から、炎があふれ出る。

 その炎はガルドの両前足を包み込み、煌々とした光を放ち始める。そしてガルドはその両前足を、思い切り大地に叩き付けた。そしてその刹那、包み込んでいた炎が解き放たれ爆発を引き起こす。だがその爆発は半径一メートルほどに集中しており、ライナスたちに被害が及ぶことはなかった。

 しかしその範囲内にいた者は別。

 当然炎への強い耐性を得たガルドは無傷である。だがその爆発に巻き込まれた子ども型の肉塊はそうもいかなかった。小さなその身を大きく焦がし、プスプスと黒煙を上げている。だがそれでもまだ動きを止めることはなかった。


「ッ!!ライナス様!!」


 ヒューズの焦った声が響き渡る。子ども型の肉塊は、その傷ついた身からは想像できない速度でライナスに接近し始めたのだ。

 だがその攻撃がライナスに届く前に、ガルドによる横やりで防がれてしまう。しかしそれは肉塊に有利な状況を与えることにもつながってしまった。

 近距離戦は肉塊の間合い、ガルドに向かって鋼の拳が振り下ろされる。

 スピードは五分、しかし体制を崩していたガルドは、回避することが出来ずその一撃を腹部に受けてしまった。

 大地を穿つ一撃が、ガルドの腹部に打ち込まれる。苦痛に表情をゆがませるガルド、しかし機転を利かせて肉塊の首元に強靭な牙を突き立てる。

 しかしその力では肉塊を倒すことは出来なかった。

 このままではガルドが負ける。

 そのことに気付いたヒューズが、決死の覚悟で足を動かそうする。

 だがその瞬間に気付いた、ライナスの姿がないことに。そしてその刹那、肉塊の腕が切断され宙に舞った。


「感謝します、ガルド、ヒューズ。あなた方がいなければ私はとっくに死んでいた」


 吹き飛ばしたのはライナスによる一閃。

 その事実に肉塊が悶えた時には、ガンドも離脱していた。


ーkshyyyyyyyyyyyyyy!!!!


 幾度目かの咆哮、しかしライナスは一切ひるまず突っ込み、レイピアの先端を肉塊の胴元に突き立てる。


「ガンド!!今だ!!」


 そうガンドに命令したライナス。その命令に一切の遅延も無く従ったガンドは、口元に魔力を練り上げ始める。

 先程よりももっと強く、もっと大きな炎が形成されていく。

 そして放たれる巨大な火球、まるで彼女の怒りを具現化したような凶暴な炎が、肉塊とライナスを包み込む。

 包み込んだ炎がゆっくりと消えていく。その後には、ただ灰燼を残すのみとなっていた。

 だがライナスは無事であった。流石は騎士軍第二位の実力者、炎がその身を焦がす前に大きく跳躍して離脱していた。


「ふ~、何とかなりましたね」

「あぁ、それもこれも君たちのおかげだ。ありがとう」


 そう言ってヒューズに頭を下げるライナス。

 駆け寄ってきたガンドには、頭に手をのせ、優しくなでる。


「さてと、それでは帰るとしましょうか」

「あぁ、そうしよう」


 そう言って城へと歩くヒューズとライナス。

 だがガンドはその場から動こうとしない。


「どうした?何かあるのか?」


 不思議に思ったライナスが、ガンドにそう声を掛ける。

 だがガンドは頷くでもなく天を見て一度咆哮し、ライナスのもとに駆け寄って来た。

 そんな彼女の心を慮ることは誰にも出来なかった。けれど彼女の瞳は晴れやかに煌めいていた。

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