魔法軍軍長の戦い
暇な時間に書いたり読んだりしたので、見落としがあるかもしれない。
馬に乗り草原を駆けるロメオ、それに追随するヒューズとライナスの二人。目線の先には彼らに接近する子ども型の肉塊と、城都に進軍するゴブリンの軍勢。さらにその奥には女性型の肉塊も控えていた。
そんな脅威としか称しようがない戦力を前に、ロメオはある提案を口にした。
「二人とも、あの子ども型の相手を任せていいか?」
そういって子ども型の肉塊を指さすロメオ。普段の飄々とした物言いではなく、真剣そのものである。
「構わないが、お前は?」
「俺はあの女型の相手をする。軍勢魔法もそろそろ完成しそうだし、あいつもそろそろ出張ってくるだろうからな。見た感じ子どもよりもあの女の方が強そうだから、あっちは俺に任せてほしい」
軍勢魔法とは凄まじい量の魔素を代償に発動する、大規模魔法のこと。その名の通り大人数での使用が一般的であり、個人で扱うのは非常に難しい。
だがその威力は絶大でありかつ広範囲。それこそゴブリンの群れを蹴散らす程度のことは容易いだろう。
「分かった。こっちは任せてくれ」
「・・・しっかり働いてやる」
ロメオに対してそう返事をする二人。
「分かった。よろしく頼むぞ!!」
そう言い残し、この場を去るロメオ。
こうして新たな戦いが始まった。
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「ひゅう~、やっぱすげぇ威力だな」
ロメオが飄々とした口調でぽつりとつぶやく。
その眼前には凄まじい灼炎。轟音が鳴り、大地が揺れる。放たれた灼炎はゴブリンの軍勢を包み込み、灰燼に帰していった。
軍勢魔法:紅炎龍波。その炎は龍の息吹の如く、万物を滅し灰に帰す呪文である。
「だが肝心な奴らには当たらなかったか」
しかしその魔法をもってしてもこの戦いを終わらせることは敵わなかった。
肝心の二つの肉塊は、練り上げられた魔力を見るや否や回避行動をとったため、直撃を免れていた。
「・・・始めるか」
ーhyyyyyygggggggggg!!!!!
そんなロメオの小さな呟きに答えるかのように耳を貫く咆哮が発せられる。その咆哮の後、遠方で静観していた女性型の肉塊が、突如として走り出す。
「こっちだ!!」
そう叫び肉塊目掛けて火炎誘導弾を放つロメオ。放たれた炎は見事に直撃し、肉塊の表面を焦がす。
だが、
ーhygghhhhhhhhhhhh!!!!!
「チッ、あんまり聞いてなさそうだな」
肉塊がそれを気にする様子は見られない。
事実、この場にいる三つの肉塊は生き物ではなく、兵器に近い性質を持つ。痛みを感じることもないため半端な攻撃では停止せず、力の源が破壊されない限り戦い続ける。それを証明するかの如く、女性型の肉塊は炎に怯むことなくロメオ目掛けて草原を疾駆していた。
その事実に少しばかり動揺していたロメオだったが、すぐに気を取り戻し再び火炎誘導弾を放つ。
だが、
ーkshyyyyyyyyyyy!!!!!
その魔法が当たることはない。
肉塊は大地を蹴り上げ大きく跳躍、そのまま自由落下の勢いをつけ、ロメオ目掛け拳を振り下ろす。
「危ねぇッ!!」
そう叫び寸でのところで回避するロメオ。拳を叩き付けられた地面には、小規模のくぼみが出来上がっている。あと少し反応が遅れていたら間違いなく地面のシミとなっていただろう。
もっともそれは起こりえないことなのだが。
「燃えろッ!!」
間一髪の回避行動の後、一切の隙もなく魔法を放つロメオ。ロメオが放ったのは火炎魔法中位:爆炎。中位程度の魔法であれば、ロメオは無詠唱でも発動可能である。そのぶん精度は落ちるものの、この近距離であれば大した問題ではない。
ボンッ!!と大きな音を立て爆発する炎、猶予はほとんどなかったはずだが肉塊はそれにすら反応してのけた。
本能か何かか、肉塊は爆炎の起こる前に大きく跳躍し、そのままロメオ目掛けて再び拳を振り下ろそうとしていた。
だが、
「ンなこったろうと思ったぞ」
ロメオに二度はないのだ。
彼は肉塊が一度目の跳躍をした際に、”研究者”の能力をもって、そのデータを集めていた。そして集まったデータをもとに、肉塊が再び上空へ飛びあがることを予知していたのである。
それを予知できたからこそ、彼は上空にとある魔法を張り巡らせていた。その魔法の名は、斬風。風魔法中位に分類される魔法である。
そして風魔法は高所であればあるほどと、さらに威力を増す特徴があった。ロメオによって吹き荒らされた風の刃は、肉塊の体をズタボロに切り裂く。その刃はあまりに鋭く、防御することも敵わず四肢を次々と切断していく。四肢が切断されたことにより、着地が出来ず地面に激突する女性型の肉塊。
もはや立ち上がることも敵わず、ただただロメオをにらむことしかできない。
そんな肉塊にロメオは静かに歩み寄り、
「今楽にしてやる」
そう声を掛けた。
そして詠唱を開始する。
「炎よ、我が意に従いて敵を焼き尽くせ!!業火!!」
放たれたのは炎魔法上位:業火。
その炎は一瞬にして肉塊の体を包み込む。包み込んだ炎は轟轟と燃え盛り、空気を揺らしていた。
そしてその炎が消えた跡には、肉塊の姿はなく、ただ灰燼を残すのみであった。こうして一つの戦いは幕を閉じたのである。
「こっちは終わったが・・・」
ロメオがその結果に安堵したのもつかの間。そうぽつりとつぶやき、とある方向を見つめるロメオ。視線の先にはいまだに戦い続けているライナスとヒューズの姿があった。
遠望から見る限りでは、若干劣勢のようである。
だが、
「今の俺じゃあ足手まといだな」
ロメオの魔素はもう残されていない。魔法の発動などもってのほかだ。
だが援軍に行かないとまずいのも事実。今回勝てたのは”特質能力”あってこそ。もしも自分にそれがなかったのなら、間違いなくロメオのほうが死んでいた。恐らくは攻撃の糸口を発見できず、体力が底をつき、殺されていたことだろう。であるならば、特質能力を持たない彼らの勝率は、ゼロに等しいと考えるべき。
「今の俺がいてもあまり変わらんだろうが、一応準備はしておこうか」
そう言って立ち上がるロメオ。その足はおぼつかなかった。馬はいったん撤退させたので徒歩での移動である。
「しっかりやってくれよ。二人とも」
彼が参加したところで戦局に大きな変化は望めない。彼ら二人の命運はいかに。
こういう文章を書く時って、先入観が邪魔になってしまう。
文のおかしさに気付けにくくなるので。




