またもや呼び出された男
食べ過ぎた。
*あらすじ:ロメオが赤髪の魔人を取り逃しました。
時は少し遡り、ロメオがウェイトリー村の調査を開始したころ。ギルレオンの修練場に三つの人影があった。
その影の正体は、リューク、ウルスラ、そしてアリナ。王族二人と客人一人、いったい彼らはなぜこんなところに集まったのか。それを知るために、さらに時を遡る・・・。
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新しい朝が来た!!
そんなフレーズがよく似合う、非常に良い朝だ。
一昨日は徹夜して本を読んでいたのだが、昨日はさっさと寝ることにした。今の俺に睡眠が必要なのかは分からない。が、どうも前世の習慣が残っているらしく、夜になると俺の本能が寝ろと吠えるのだ。
まぁでもせっかくふかふかベッドが用意されているわけだし、その習慣に従うことにした。
そして冒頭に遡るわけである。
頭はばっちり冴え渡り非常に気分がいい。そんな頭でグルんと辺りを見渡すと、可愛いオオカミの魔物が、丸まって寝息を立てている。
「おぉい、ガルド?・・・まだ寝てるのか」
俺の部屋のソファの上ですぅすぅと寝息を立てているのは、昨日色々あって城で飼うことになったフォレストウルフのガルド。美しい白い毛並みが特徴である。はずなんだけど・・・。
「あれ、こいつなんか赤くなってないか?」
白い毛並みの中に何本か赤い毛を見つけた。
血のせいではないはず。ラトさんが体を洗ってやったし、寝る前に湿った布で体を拭いてやった。
「・・・まぁ、そういうこともあるか」
人間だって白い毛が生えることがある、それと一緒だろう。俺はそう強引に思考を切り替えて、窓の外に視線を移す。
そしたら、
「お?馬か。えらく速い出発だな」
王国の門から何頭かの馬が出ていくのが見えた、こんな朝早くからご苦労様です。でも一体どこに行くんだろうね?俺にはあまり関係ないだろうけど気になるな。
そんなことを考えていたら、俺の部屋の扉がノックされた。
「リュート様、朝食の準備が整いました」
「あ、はーい」
返事をして扉を開けると、昨日起こしてくれたラトさんではなく、少しお年を召した執事さんが立っていた。
年季を感じさせつつも、くたびれた感のない執事服を着こなした、ダンディという言葉がよく似合う男性である。
「どうもありがとうございます。あと初めましてですよね?俺はリュートって言います」
さっき俺のことを名前で呼んでいたので、知らないってことはないんだろうが形式は大事である。
「これはこれは申し遅れました。私の名はクレイと申します、以後お見知りおきを」
無駄のない洗練された動きで腰を折る執事、クレイさん。その所作一つ一つに積み上げられてきた経験というものを感じた。
「あ、はい。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。それでは食堂にご案内いたします」
再び腰を折り、歩き始めるクレイさん。その動きに一々感心しつつ、その後ろを付いて行くのだった。
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朝食の後、俺が向かっていたのは魔法訓練場。
というのも俺が朝食を食べ終わった後、アリナに『どういうわけか分かりませんが、お母様がリュートさんを魔法訓練場に連れて来てくれっていうのです。私も一緒に呼び出されてますので、今から向かいましょ?』とのお誘いを受けたのだ。俺は何も悪いことはしていないので、怒られるってことはないと思う。
だから何も心配することなく、アリナと一緒に魔法訓練場へと向かっていた。そしてしばらく歩いた後、訓練場に着いたのだが、
「あれ、お母様がいませんね・・・」
アリナのお母さん、ウルスラさんがまだいなかった。先に行って待っていると言っていたそうだけど・・・。
「わぁッ!!」
「きゃあ!?」
うぉ、びっくりした!!
あまりにびっくりしすぎて、アリナから可愛らしい悲鳴が漏れている。俺の場合は需要がないだろうから、頑張って抑えた。
「もう!!お母様!!急に驚かさないでください!!」
「あはは、ごめんなさい。あなたたちが来るのを、気配を消して待ってたのよ」
「でも、待ってたかいがあって良かったわ」などとおっしゃっている。
そんな茶目っ気も感じられるアリナのお母さん、ウルスラさんだが、アリナをそのまま大人にしたかのようにそっくりだ。そして俺の想像通りラガルトも母親似だったようだ。目元がよく似ている。
そんなウルスラさんだが、纏う雰囲気がヤバい。
流れるような美しい銀髪に、青空のような碧眼、そこまではラガルトやアリナと同じ。だけど彼女の美貌を更に引き立てる所作一つ一つがとんでもない色気を生んでおり、思わず魅入ってしまった。
「・・・むぅ」
「あらあら?アリナちゃん、妬いてるの?」
「えっ、違うわよ!!何言ってるの!?」
「おほほ、お母さん嬉しいわぁ。石像だとか彫刻だとか揶揄されてたあなたがこんなにも・・・」
「違います!!」
アリナが羞恥で顔を真っ赤にしている。俺も人の方を見てたら友達によく揶揄われてたので、気持ちはよくわかる。
「必死になって可愛いこと。でも今は冗談を言ってる暇はないわ」
「・・・チッ」
アリナのウルスラさんを見る目が見たことの無いようなものになっているが、無視する。
「そして遅れましてごめんなさいね。私の名はウルスラ・ギルレオン、ロイドの妻ですわ」
「あ、どうも初めまして。私の名前はリュートです。よろしくお願いします」
「あら、しっかりしてるのね」とお褒めの言葉をいただく。そしてその言葉の後、俺のことを凝視してくる。
男だけでなく女の人も思わずドキドキしてしまいそうな視線だが、ここでおどおどしてはいけない。気恥ずかしさを抑えつつ、堂々と視線を返す。
「・・・どうしました?」
「・・・フフフ、あの人の予感は正しかったのね」
「あら?お母様、どうなさいましたの?」
「気にしないで、ただの独り言よ。それより、なんで私がアリナにリュートさんを呼んで来てもらったか、説明してなかったわよね」
「そうですね。呼んで来いって言われたので呼んで来ましたけど」
確かにそうだ。呼ばれたので来たが、理由までは知らない。
「了解。それじゃあ説明するけど、リュートさんには特質能力を使いこなせるようになってほしいの」
「あぁ~、なるほど」
俺の所有する特質能力の名は、確か”創造者”と”破壊者”だったかな。片方はともかく、もう片方はいささか物騒すぎる気がする。
「特質能力は強力な力だけど、その反面扱うのが難しいの。だから私とアリナで能力の使い方についてレクチャーしようと思ったのよ」
「でも私は特質能力なんて持ってませんけど?」
「確かにそうなんだけど、あなたの応用能力の練度はこの国でもトップクラスなの。だから問題ないと思う、私が保証するわ」
「分かりました。そういう事ならぜひ協力させてもらいます」
「いい返事。さて、後はリュートさんの返事次第ですけど、どうなさいます?」
「断る理由なんてありません。是非お願いします」
せっかく強力な力をもらったのだ、もっと上手く扱えるようになっておきたい。というわけで、アリナとウルスラさんによる能力レクチャーが始まったのだった。




