「今年中で……」
「さて、ご飯食べよっか。伊津。食器並べて」
「了解しましたわ」
「太一は台拭いてきて」
「ほーい」
「琴乃は味見!」
「うーん。ちょっと薄味かなぁ。塩足した方がいいかも」
「了解!」
夜の7時。私達はいつものように、全員で食事の準備をしていた
最初は当番制にしていたのだが、伊津と太一は料理が全く出来ないことが途中で判明。2人に教えている内に、いつの間にか全員で用意することが当たり前になっていた
「「「「いただきまーす!」」」」
テレビをつけながら談話する。これも私達の当たり前になっていた
そして季節は11月の半ば。少し早いけど、冷え込みが凄いので私達はもう既にコタツを設置していた
4人で温まりながら、4人で鍋をつついた
「琴乃ー。お茶取ってー」
「はーい」
「太一、この白菜はもう食べられるかな?」
「うーん。まだ硬いと思うからもうちょっとだけ待った方がいいかな?」
ゆったりとした雰囲気で鍋を楽しむ。家族……という形に見えるかは分からない。今までの普通は、夫と1人の妻。そこに娘や息子。父母に義父母の構成が一般的だった
ただ今は、夫に複数の妻。複数の血が通った娘や息子。父母に複数の義父母がいる
こんなの家族の形じゃない。そう文句を言う人だって出てくるかもしれない。でも、私は……これが当たり前になった今を……楽しんでる。家族という形で、私は楽しめてるのだと思う
私はこの時間が……今は1番心地良いのかもしれない
〈なんでや!そこは叩かれにこんかい!」
〈なんで叩かれる分かってて頭差し出さなあかんねん!〉
〈そうしゃんと芸が成り立たんやろがい!〉
テレビは今、漫才が繰り広げられていた
「ふふっ。この方々は面白いですわね」
「ねー。さすが今1番勢いのある芸人だよね」
「私はあんまり好きじゃないかなぁ」
「琴乃的には面白くない?」
「うーん……ちょっとわからないマニアックなネタとか持ってくるから……」
「あー。まあ確かにな」
〈いやいやいや!そこはあっーー〉
〈番組の途中ではございますが、ここで緊急速報です〉
突如、お笑い番組から180°テンションの変わったニュースにテレビが切り替わった
「これまた急ですわね」
「地震とかかな?だとしたら怖い……」
〈先程、衆議院会議にていくつか改変されることが決定致しました〉
「衆議院会議なら地震とかではなさそうだね」
「ならテレビの番組を割り込んでまでの内容ってなんだ……?」
〈えー、その中に今年中に一夫多妻制度の廃止が決定した模様です〉
「「「「……えっ?」」」」
私達はその報道に耳を疑った
♢ ♢ ♢
詳しい情報はこうだ
今年いっぱいで一夫多妻制度は廃止。12月31日までは多重婚が出来るが、それ以降は一夫一妻での結婚……つまり、以前に戻るというわけだ
そして終了する理由は、資金の不足。元々、国のトップは10年近くはこの政策をとっても資金が足りると踏んでいたようだが、わずか3年しかもたなかったらしい
あとは男性の結婚出来る年齢の引き下げについては変わりはない。学生婚に関しても特に変わりはなく、学生婚の支援は続けるそうだ
そして現在、多重婚をしている人達に関して
多重婚している者は、このままの状態を維持するも良し。妻を1人にするも良し。ただし、今年以降に新たな妻を設けることは禁止となった
つまり要約すると、琴乃と太一の結婚に私は必要なくなったのだ
「……まさかこんなことになるなんて」
さっきまでワイワイしていた空気が一気に重くなった
口数が減り、皆何かを考えている様子だった
……急な状況変化。ただ念を押して言っておくと、私達はもう既に多重婚済み。今年以降、妻が増えることはないけど、現状維持は出来る。これ以降に、政策が何か変化が起こらない限り、この家族構成のまま、一生を過ごすことも出来る
ただ、さっきも言った通り、元々琴乃と太一の結婚の為に私が。そこに昔から太一に想いを馳せていた伊津が加わった。琴乃と太一からすれば、結婚生活が2人で続けることが出来るのだから、私と伊津を切る選択肢がある
この生活が続けられるかどうかは、太一次第といっても良い。ただ確実なのは、太一の妻から琴乃は外れないこと。私達2人を切るか、残すか。それだけだった
「「「「……ごちそうさまでした」」」」
重い空気のまま、食事は終了。皆は各々食器をキッチンへと運んだ
……私はどうなるんだろう
……どうしたいんだろう




