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『眠りの姫』



法律改正の発表があった次の日。学校での話題はそれで持ちきりになっていた



改正されて喜ぶ者、改正に嘆く者、興味を示さない者。多種多様な反応が見て取れた



改正されて喜ぶ者は、琴乃と太一同様、一対一で付き合いたいからだったり、もう1人が見つからずに困っていた。などなどの理由だった



改正に嘆く者は、友達と好きな人が被ってしまった時にどちらかは確実に選ばれなくなってしまう、多くの女の子を後ろめたさなく付き合うことが出来なくなるから。などなどの理由だった



興味を示さない者は、そもそも現時点で彼女がいない、彼女はいるが、結婚する予定は元々なかった。などなどの理由だった



そして1番目立った動きとして、男子生徒が未婚の女子生徒にアタックすることが多くなったのだ



前途の通り、改正に嘆く者は多くの女の子を後ろめたさなく付き合うことが出来なくなる。だからこそ、期間中になるべく多くの女の子を自分のものにしようとする動きがあるのだ



今は昼休みだが、休み時間を迎えるたびに未婚の男子、既婚の男子達が未婚の女の子に言い寄っていた



そしてその被害者の中に……



「マジウザいんだけど男共ー!」



卯月もいた



卯月は実質結婚が決まっているようなものだったけど、それを知っているのは本人達と私のみ。事実を知らない男子生徒が卯月に対して猛アタックしているようだ



容姿だけでいえば上位も上位。まあ聖頼5美女の中に入ってる私よりかは下だけど



「大変だね」


「本当にね……でも、私より大変なのはさ……」


「あー。私も朝見たわ」


「ねー。あれはもう本当に戦争みたいなものだったよね」


「ねー。男共の醜い争いだった……」



今回の法律改正にあたって、私達の学校でとある戦争が起きていた



人呼んで『眠りの姫戦争』



意味が分からないと思うが、この眠りの姫というのは、聖頼美女第1位。『加隈(かくま) 穂乃美(ほのみ)』のことだ



いつも眠そうに学校に来ては、授業中はいつも持参している枕で睡眠。その姿から眠りの姫と呼ばれているらしい



そのお姫様は1年生。誕生日も既に迎えて16歳なので結婚出来る歳になった。だが、最初は誰も手を出さなかった



実はこの聖頼5美女と呼ばれる者。男達からは崇め奉られているそうで、男達は皆、「この5人には誰も近付かずに、崇める存在であるべき」というバカみたいな思想になってるらしい



……私はそんな扱い受けてた気はしないけどね



だからこそ、琴乃と私と結婚した太一は男の敵扱い。イジメなどは起きてないが、嫉妬の目で凄く見られているらしい



クラス替え初日に私を口説こうとした男もそれなりに白い目で見られている様子だ



そして太一よりも奏斗の方がヤバイ。第2位の加蓮と……私も最近知ったのだが、3位の日伊乃さんと結婚したことで、男達からの嫉妬の目が凄かったらしい



2位と3位と4位と5位は結婚済み。残りの1位はみんな何としても守りきろう!という動きが夏休み前ぐらいから強まっていたらしい



ただ、そこに今回の法律改正により、その考えを変えたのが、既婚者の男達だった



これ以上増やせない=離婚をして独り身にならない以上、眠りの姫とは付き合えない。ならば今年中に自分の嫁にしてしまえば良いのでは?となったらしい



そして今日、眠りの姫が登校してきた際に、大量の既婚者男子達が眠りの姫に対して猛アピール。それを未婚の男達が防ぐという戦争が起こったようだ



結果は未婚勢の圧勝。未婚勢の方が人数が圧倒的に多いからだ



ただまだ既婚者男子達は諦めておらず、何かしらの策を練っているらしい



まあ要するに、未婚の女の子達が、男達から面倒くさいアピールを必要に受けているということだ



「……なんて言ってたらまた始まってるよ」



窓の外を見てみると、大量の男達が二つの陣になって分かれていた。一方は大勢おり、片方は小勢。多い方が未婚者で、小勢が既婚者達だろう



「……だから教室の男子の数が少ないのか」



クラスに20数人いるはずの男が、今は奏斗と太一含めて4人しか残っていなかった



「おい既婚者共‼︎聞こえるか‼︎」



未婚者勢の中から1人、前に出ていた男が校舎全般に聞こえるほどの音量で話し始めた



「今度の体育祭‼︎お前ら既婚者全員対未婚者で綱引きで勝負を決めようじゃねーか‼︎」



11月末という遅い時期に行われる聖頼高校の体育祭。ちなみに文化祭は年明けた1月の後半に行われるというなんとも変則的な学校だ



「バカか‼︎人数差があるだろう‼︎それに、そんな勝手なことに先生達から許しが得られると思っているのか‼︎」



既婚者側の代表者のような人も出てきて、同じぐらいの音量で声をあげた



「ふんっ!そういうと思って、こちらはそっちの人数と同じ分だけ、選抜して出す。あと、先生の許可は頂いている‼︎」



なんで許可出したんだ先生よ……



「こちらが勝ったらお前たち既婚者が、今後一切『眠りの姫』に近づかないことを約束してもらう!ただし!もし万が一我らが負ければ、こちらから妨害することはないと約束しよう」


「……いいだろう!受けて立つ‼︎」



……いや、『眠りの姫』の人権無視しすぎじゃない?

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