表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/142

「席替え」



「よし。じゃあ席替えするぞー」



先生からの唐突な席替え宣言に、クラス内は騒ついた



「これまた急ですね」



クラス委員の女子が、先生に問いかける



「まあこういう行事ってのは、ギリギリまで内緒にするのが良いと思ってな」



……また余計なことをしてくれた



今現在、夏休み前に一度行った席替えのおかげで、私が位置するのは丁度真ん中辺り。だが、後ろには卯月。横には伊津がいる



近くは右斜め前に男がいるだけで、他は全員女の子。正直言って、この席は快適だ



もし仮に周りが全て男になってしまった場合、最悪も最悪。不登校になってしまう可能性だってある



「先生ー!結婚してる人同士は隣にしてもらったり出来ないんですかー?」



ここでクラス内のもう一組の既婚者が先生に質問した



そうだ!既婚者達は隣にしてくれるなら、私と琴乃、伊津と太一は一緒になれる!それが一番良いじゃんか!



「しないぞー。みんなごちゃ混ぜで行う。わざわざお前らだけ隣同士にするようにくじを作り直すのは面倒だからな」



さすが私の担任。私の嫌がることを的確にやってくれる。もしかして私の思考覗かれてる?



「それじゃあ紙回すから、名前書いてくれー。あ、結婚して、同じ苗字になったやつは、旧姓を書いてくれ」



回ってきたのは、あみだくじの上の部分。下半分は千切られており、その下の紙は先生が持っている



「はい。どうぞ」


「……ありがとう」



紙が回ってきた。私の手前にいる琴乃は、既に名前を記入済みだった



右から3番目の場所に琴乃……この位置から近い線……



考えても無駄なことは分かってるけど、考えられずにはいられない。好きな人の近くに陣取りたい人の気持ちがよく分かった



ええい!ここだ!



私は琴乃のちょうど対角線上。左から3番目のところに名前を書いた



「はい伊津」


「ありがとうございます。この線の上に名前を書けば良いんですのよね?」


「そうだよー」



伊津は迷いなく名前を書いた



「結構あっさり書くね」


「考えても仕方ありませんから。こういうのは時の運なのです」



伊津のちゃんと割り切れる所ほ良い所かもしれない



「それ、後ろにまわして」


「了解ですわ。……はい。次はあなたの番ですわ」



伊津の後ろには、前回の予行デートで卯月と当たった……誰だっけ?興味なさすぎて名前が出てこないけど、まあ予行デート中に卯月に告白して見事なまでに玉砕した男だ



「どうも、伊津ちゃん。それにしても悲しいよなぁ」


「悲しい?何がですか?」



伊津が不明名の男に絡まれた



「いや、せっかく俺の前の席になったってのに、これから別々になっちまうもんな」


「……?あなたの前の席だと、私にメリットがあったのですか?」


「当たり前じゃん?近くからこの俺のパーフェクトフェイスを崇めつつ、耳を澄まさずとも俺の声が聞こえてくる……ご褒美だろ?」



……一発殴ってやろうかな



「まあせいぜい次は隣になれるよう祈ってーー」


「席替えされて悲しいどころか、私は嬉しいですよ?」


「は?なんで?」


「由比羽と離れる可能性があるのは悲しいですが、あなた……ニンニクの匂いが臭いのですよ」



伊津は淡々と話す



「歯は磨いておられます?うがいしてますか?それでも足りないのであれば、ガムやらブレスケアなりした方がよろしいかと思いますよ?」



優しい口調で促す伊津。だが、私には冷徹な口調に聞こえた



「い、息が臭くともカッコいいから許されるんだよ‼︎」


「んー……身なりが良くても臭かったらやはりアウトですよ。それに、私はあなたのことがカッコいいとは思いません」



伊津は笑顔で話す。多分悪気がないんだろうなぁ……



「なんだよ……なんなんだよ‼︎由比羽も卯月も伊津も皆んな俺の良さに気が付かない馬鹿どもが‼︎」



荒れてるなぁ……



「一生気が付きませんよ。だって無いのですから」



伊津の渾身の一撃が、男に刺さったのか、男はもう何も話すことはなくなった……



……惨いなぁ



♢ ♢ ♢



「……嘘でしょ?」



私の席は窓際の一番後ろ。場所だけ聞くと1番の特等席に聞こえるが、周りがヤバイ



さっきの男が前に。斜め前にクラス替えした日に私に話しかけてきた男。そして隣にどう見てもチャラい男。私の周りは完全に男だらけになってしまった



「先生!席替え要求します!私の周り男しかいません!」


「その要求は却下だ。お前の為だけに変えるわけにはいかん」


「なら私だけでも別のところに移して下さい!」


「それも却下だ」


「そ、そんなぁ……」



絶望。私の今の現象を表すのに十分な表現だった



そして伊津は、私の真反対のドア方向の一番前。外れ枠の場所だが、それよりも周りに琴乃、太一、卯月、奏斗がいるのだ



つまり、私は完全に孤独になってしまったのだ



……明日からズル休みしよ



♢ ♢ ♢


……なんて許されるわけもなく、琴乃がわざわざ実家から私のお母さんを呼び、布団に包まる私を引きずり出した



「オラァ‼︎ズル休みなんて許さんぞ!」


「ちょっ!今回は本当にマジで嫌‼︎お母さんも同情する理由だって‼︎」


「周りの席が男しかいなかっただけで同情出来るか‼︎」


「なんでさ‼︎十分同情の余地ありでしょ⁉︎」


「んなわけあるかー‼︎」



結局私は、ズル休みすることも許されず、辛い学校生活を強いられることになった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ