「そんな卯月に朗報をやろう」
「ごちそうさまー。また食べに来るよ」
「おう。待ってるぞ!」
やっとお店から出ることが出来た。お腹いっぱいの私があの脂の匂いが充満する場所にいるのはかなり辛かった
だが、飯に集中してくれたおかげで、その間話しかけたりされなかったのはよかった
時間は45分を経過。あと15分以内に学校に戻るだけだ
「ちょっと早いけど、学校に戻らない?」
早めに終わらせたいという理由で早期に学校に戻ることを提案した
「いいや、近くの公園でギリギリまで時間潰してから戻ろうぜ」
「う、うん……」
くっそー。余計な提案するなよぉ……
♢ ♢ ♢
ラーメン屋から5分。学校までは1分で着く位置にある公園にやってきた
ブランコ、滑り台、シーソーだけのシンプルな公園。そこにあるベンチで2人で座った
「ち、近くない?」
「ん?そりゃデート中なんだからこれぐらい普通だろ?」
太腿同士が当たる程の距離。確かにデート中だけど、あくまで予行なんだから遠慮してほしい……
「今日はどうだった?楽しかっただろう?」
「ま、まあそうだね……」
楽しい要素なんて一つたりともなかった。ラーメン食べるのを待ってただけなのだから。これなら普通に授業を受けてる方が何倍もマシだ
「そうだろそうだろ!そんな卯月に朗報をやろう!」
朗報……?なんだろ?何かくれるのだろうか?
「この俺が、お前と付き合ってやるよ」
……?私の耳の穴に幻聴を聞かせる虫にでも寄生しまったのだろうか?付き合ってやるよって聞こえた気がしたけど……さすがにそんなわけないよね
「ごめん聞こえなかった。もう一回言って?」
「一回で聞き取ってくれよ……ったく、だからさ、俺がお前と付き合ってやるよ」
どうやら私の耳に幻聴を聞かせる虫は寄生してなかったらしい
「……なんで?」
「卯月、俺のこと好きだろ?でも勇気が出なくて告白出来なかったんだろ?」
誰かが嘘を教え込んだのか、はたまたただの頭がハッピーセットな人間なのか。どちらかは分からないけど、私が取るべき行動は決まっていた
全力で拒否することだ
「……それは正田の勘違いだし。私、別にあんたのこと好きじゃないんだけど」
「お!これがツンデレってやつか!」
「バカなの?私の正直な気持ちを伝えてるの」
「まあそう照れなくていい。自分の気持ちを見透かされてて恥ずかしい気持ちは分かるけどさ」
「……脳味噌腐ってるようだから変えてもらうことをオススメするよ。そもそもなんで私が正田のことが好きだと思ったわけ?」
イライラゲージが溜まってるのも分かるし、どんどん口が悪くなってきてることも理解してる
「だって、由比羽が結婚したからな」
……?????
理由を聞いてさらに私の困惑は増えた
「もうちょっと詳しく聞いていい?」
「だから、俺は由比羽が好きだっただろ?でもその俺の気持ちに由比羽は気づいた……由比羽も俺のことが好きだったけど、友達である卯月も俺のことが好きなことを知って、自分が身を引くためにわざわざ太一と結婚して、俺が卯月に目を向けるようにさせた……どうだ?合ってるだろ?」
私はこんなに理解の出来ない説明を聞いたのは初めてだ。詳しく聞いたはずが、聞けば聞くほど意味が分からない
私の理解力が足りないから?違う。この発想に辿り着いたこいつが悪い意味で天才なのだ
「……あんまり言いたくないけどさ、本当に何言ってんの?マジで意味わからないんだけど」
口調が荒くなっていた。ただし、感情に任せた言葉ではなく、意図的にそうしていた
「笑わせないでよ。デートもちゃんと出来ない。自分のことしか話さない。昼ご飯後にラーメン屋に連れてくるような気遣いも出来ない男に、私は興味もないし、なびきもしない」
「え……あれ……う、卯月?」
「その一々話始めの時に苗字を呼んでくるのも面倒くさい。自分はイケメンかと思ってるのかも知らないけど、中の下ぐらいだし、性格に至っては下の最低。そんなやつ、私どころか、女子全員誰もあんたのことなんて好きにならんわ‼︎」
いつもは事を荒立てることが好きじゃない私。喧嘩とかしそうになった場合は、私が折れて事を沈めていたんだけど、私にその余力は残っていなかった。私の不満は全て口から言葉として、正田をえぐる言葉として突き刺さった
「……」
正田は無言でベンチを立った。そして、無言で学校の方へと歩き始めた。その背は、悲しみに溢れていた。
……さすがに後で謝っとこ




