「レディーとして扱ってるだけだ」
「境科ちゃーん。部室の戸締りだけよろしくね」
「はーい!お疲れ様でしたー!」
窓から差し込む夕陽が少しずつ沈んでいた
私はとあるコンクールに提出する用の絵を仕上げていた。どうしても今日中に終わらせたい部分があり、いつもの終わる時間より長く残っていた
「……こんなものかな?」
自分の決めていた部分まで終わり、一通り絵のチェックをしていると、部室の扉が開いた
「よー卯月。進んでるか?」
「……綿田先生」
部活の顧問でもある、綿田 勇先生が私の様子を見に来てくれたようだ
若い男性の先生で、女子からの人気も高い。多少めんどくさがりな傾向にあるが、やる時はしっかりするといったタイプの先生だ
「見てもらってもいいですか?」
「ん。ちょっと暗くて見にくいから、電気だけつけてくれるか?」
「あ、はい」
夕陽が照らしてくれていたおかげで、部室の電気が消えていたことに気がつかなかった
「つけましたよ」
「ありがと。……んー。まあいいんじゃないか?このペースなら全然提出日には完成出来そうだしな」
「本当にいいと思ってます?直すべき所を指摘して、私が帰るの遅くなったら自分が面倒くさいからって適当言ってません?」
「そんなこと考えてねーよ。素直にいいと思っただけだ。俺は良いものは良いっていうし、悪いものには悪いってきっぱりいうから」
普段を見てる限りそんな感じはしないけど……でも今日はその言葉を信じることにした
「……とりあえず今日はもう終わります」
「そうか。とりあえず空いてる窓がないか確認してくれ」
「分かりました」
窓の鍵を確認する。全て閉まっていて、空いている窓はなかった
「空いてる場所はなかったです」
「ん。じゃあ閉めるぞー」
カバンを持って部室から出た。綿田先生は部屋の電気を消し、鍵をかけた
「そういえば、この頃ずっと残ってるな」
私が居残りしたのは今日が初めてじゃない。ここ数日間、ずっと絵の完成に向けて残っていたのだ
「早めに終わらせて、不足分を後から見直す時間を確保したくて」
「なるほどなー。でも、あんまり詰め込みすぎるなよ?」
「わかってますよ」
など話している間に、下駄箱の前まできていた
「お疲れ様。もう暗いから気をつけて帰れよー」
「子供扱いしないで下さいよ」
「子供扱いじゃないさ。レディーとして扱ってるだけだ」
「……」
「……じゃあな。また明日」
指に鍵を引っかけ、グルグルと回しながら、綿田先生は職員室へと戻っていった
「……レディー……レディーか……ふふっ」
私はウキウキした気分で靴を履き替えた。なぜなら……
私の大好きな先生と2人で喋ることが出来たからだ
絵のために残ってる?ノンノンノン。遅くまで残れば、先生と2人で過ごせる時間が出来ることを私は最近知ることが出来た!今はコンクールを言い訳に長く残ることが出来るからこのチャンスを逃すまいと、本来ならもう完成していてもおかしくない絵を、まだちまちまと描いているのだ
今日も2人で話せた……これは……
「綿田先生と結ばれる日もそう遠くないかも……!なんて……きゃー‼︎」
おっと危ない……思わず声に出てしまっていた……人がいなくて良かった……こんなこと誰かに聞かれてたらどうしようかとーー
「……一人で大声でよくそんな恥ずかしいこと言えるな」
……あーあ……私の学校生活終わっちゃったなぁ……
これから今のことをネタにしてバカにされて、脅迫用のネタに使われて……私はどんどん闇に堕ちていくんだ……
肩を二回、ポンポンと叩かれた
「面白そうだからその話について色々聞かせてよ」
よりにもよって……私の秘密を由比羽に聞かれてしまうなんて……




