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「……孤独だったんだな」



「……はい?」



耳を疑った。え?婚約者?朝初めて話したばっかりの俺が?



「まあ戸惑うのも無理ないですわ」



お姫様は足を組み直した



「本当の婚約者になってほしいという意味ではありませんわ。私の婚約者の()()をして頂きたいのです」


「……フリ?偽装しろってことか?」


「そういうことです」



と、ここでお姫様は自身の今、置かれている状況を説明し始めた



「実は、私のお父様にお見合いを持ちかけられたのです。「今の時代、学生婚するのは当たり前。早く結婚し、後継候補の孫が欲しい……と」



学生婚が当たり前……そうはいうが、まだ法律が改正されて2年。確かに多少の生活保障を受けられる為、結婚する学生もいるが、それでも全体で見れば、まだまだ1割いるかいないか程度。聖頼はまだ多い方だ



「ですが……私はまだ結婚したくないのです。好きな相手と結婚したいし、子供を育てていく覚悟も、全く出来ていないのです」


「……で、そのお見合いを断った口実に、婚約者がいると嘘をついてしまった……そういうことかい?」


「察しがいいですね。まさにその通りですわ」



確か、テレビのワイドショーか何かで見たことがある……結婚についての法律が改正されてから、お金持ちの家柄の未成年達が婚約するケースが増加したと……



そしてそれが……大抵親同士が勝手に決めた結婚であること。お姫様も今、それと同じ状況に立たされているというわけか……



「婚約者がいるからと言えば諦めてくださると思ったのですが……まさか紹介しろと言われると思っていませんでしたの」


「まあなんで偽装しなきゃいけないかは分かった。でもなんで俺なんだ?もっと他にいるだろ?ましてや今日朝初めて話したばっかりなのに」



俺は、最大の謎であった部分を聞いてみた



「……あなたは私に敬語を使わないからですわ」


「……?敬語を使わないだけで婚約者候補にしたのか?」


「ええ。私の婚約者になってくれる方の理想として、お互い対等に話せる人。それが私の条件下で1番大切な項目なのです。どちらかが下で、どちらかが上。だなんて関係には絶対なりたくないのです」


「……みんな、お前を上に見てるのか?」


「間違いなく。これから先の人生で、私の正体を知って、対等でいようとしてくれる方はそう多くないでしょう。現に今、同い年の人で私に敬語を使わないのは、あなたと由比羽さん。あともう一人だけですわ。悲しいことですが……」



お姫様は窓の景色を見ながら、少し悲しそうな顔を浮かべていた



「……孤独だったんだな」


「……孤独……孤独ですか。いい表現ですわね。周りに人はいましたが、信頼のおける人物。対等に話してくれる人がいない……そう考えれば、孤独で間違いないですわね」



そんな話をしていると、車が走るのをやめた



「……家に着きましたわ。さ、降りてください」



車を走らせてから5分も経っていなかった。まさかこの距離で車で来ているのか……さすがお金持ちだ……



車から降りると、面前に明らかにこんなに大きくある必要はないと感じるほどの大きさの家がそびえたっていた



「……?どうしました?早くお入りになってください」


「えっ?あ、ああ……」



圧倒的な家の大きさに気圧され、歩みをいつの間にか止めていたようだ



「「「「「おかえりなさいませ!お嬢様!」」」」」



玄関らしき大きな扉を開けると、そこには全員が身なりを整えた状態でお姫様を迎えていた



「……ただいまですわ。お父様は?」


「まだお帰りになられておりません。1時間後には帰ってきていらっしゃるかと」


「そう。なら私達は自室で待ってるから、お父様が帰ってきたら、呼びに来てくださるかしら?」


「分かりました。……婚約者様」


「ふぁっ!お、俺?」



急に話がこちらに向き、少し動揺してしまった



「はい。お飲み物はいかがなさいますか?」


「あ、あーえっとー……お茶で大丈夫です」


「分かりました。すぐにお持ち致しますね」



そういうと、待っていたメイド、執事達は全員一斉に持ち場に戻っていった



「さあこっちですわ。お父様が帰ってくる前に色々と打ち合わせをしておきたいですわね」



と、お姫様に言われるがまま、後ろについて歩いた



……今日は帰ってゲームするだけのはずだったのに……なんでこんなことに……




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