「あなた以外に誰がいますのよ」
私に友達なんていない。仲良くなってくれる人なんていない。由緒正しい家柄のせい?私じゃなくて親が築き上げた物なのに?私はただそこに生まれて、そこで育っただけなのに?
お金がいっぱいあって幸せ?それは間違いない。お金はたくさんあって困ることはない
でも……お金持ち、由緒正しい家柄。この二つだけで私は……普通のことを普通に出来ない……ただの足枷でしかないと私は思う
「加蓮様!おはようございます!」
「……ええ」
彼女は私以外に様付けなんてしない。あんなニコニコと嘘の笑顔を他者に撒いたりしない
「加蓮様!今日もお美しい限りで!」
「……ありがとう」
彼女もまた、私以外に様付けしない。あんなに固い台詞を友達に言うことなんてない
私は……彼女らにとって私は友達ではなく、別の次元の人間だと捉えている
……本当に居心地が悪い
「加蓮様!朝は災難でしたね」
「……あぁ」
確かに災難だった。生意気で口汚くて、無礼者の相手をしなければならなかったのだから……
……ただ、私にタメ口で話す子は、あの子達以来だ
「あの2人……3組の比呂 奏斗と姉妹 由比羽のようです」
「……そう」
由比羽さんは知っていましたが、あの男性は奏斗とおっしゃるのですね……ほとんど私と喋ってはいませんでしたが、私の家柄を知った上で、敬語を使わなかった同い年の男子は初めてでしたわね……
……あの方なら、もしかすると……
「……加蓮様?」
「な、何かしら!」
「いえ!何かぼーっとしてらっしゃったので!」
「あぁ……すいません。少し考え事をしてただけですわ」
……早速放課後にでも、実施してみましょう」
♢ ♢ ♢
「じゃあな奏斗ー」
「おう!また明日なー!」
学校も終わって、今日は家に帰ったら姉妹から借りたゲームでも進めよっかなぁ……
「ちょっとそこのあなた」
と、声の方へ振り向くと、そこにはお姫様が仁王立ちで立っていた
あー間違ったー。呼ばれてるの俺じゃないのに、俺かと思って振り向いちゃったじゃん……すげー恥ずかしいんだけど……まあいいや。とりあえず早く家に帰ってゲームをーー
「ちょっと!なんで無視しますの⁉︎」
服の襟袖部分を引っ張られ、前に行こうとする力が、遮られた
「え?俺?」
「あなた以外に誰がいますのよ」
どうやら振り返ったのは間違いではなかったみたいだ
「えっと……お姫……じゃなかった……緋扇さんが俺に何の用?あ!もしかして朝のことで話があるとか?」
「いいえ。あの件はもう終わったことなので関係ありませんわ。それよりもあなた、これから時間は空いてますか?」
「……まあなくはないけど」
「よろしい。ならば私についてきてくださるかしら?」
……嫌な予感どころの話じゃない。朝初めて喋ったばかりの。それも仲良くではなく、険悪な雰囲気で喋っただけの俺についてこいだって?
……俺は闇の組織にでも売られてしまうのか?
ただ今更予定があるだなんて言えるはずもなく、俺はお姫様についていくしかなかった
「さあ、お乗りになって」
「……えっ?く、車に?」
「それ以外何があるというの?ほら、早く乗りなさい」
校門前に朝見かけた黒く大きな車に今、乗せられそうになっていた
「加蓮様の車に男が乗り込もうとしてるぞ!」
「嘘ー!あのバスケ部のエースの人も断られたって話なのに!」
と、下校しようとする他の人達の目線が痛いほど刺さる。こんなに注目されたのは、幼稚園のお遊戯会以来だろうか……
「何をグズグズしてらっしゃるの?早く乗りなさい」
「わ、わかったから!」
お父さん……お母さん……今までありがとう……姉妹。俺が死んだら、今借りてるゲーム、勝手に持って帰っておいてくれ……
俺は決意を固め、車に乗り込んだ
「じいや。発車して頂戴」
お姫様の合図と共に、車が走り出した
「ど、どこに向かうの?」
「私の家ですわ」
やっぱり確実に100%。俺は今日死ぬみたいです
「な、なんで?」
理由は分かってる……お姫様に歯向かった報いとして、身体を闇組織に売られることは……ただ、聞かずにはいられなかった……
「あなたには、私の婚約者として親に挨拶してもらおうと思ってるんですの」




