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「なぜ私の前に立っているのですか?」



「好きです!付き合ってください!」


「無理」



放課後の夕陽が外を朱色に染めていた。そんな時間にとある男女が屋上に立っていた



「や、やっぱり僕なんかじゃダメですよね……あ、あの!理由だけでも聞いていいですか?」


「全部。何もかも無理」



女はそれだけ伝えると、その場を去った……



「全部無理……やっぱり僕はダメダメなんだな……」



振られた男は膝から崩れ落ち、涙を流してその場から動けなくなっていた



「……やっぱり、()()()()()()()()()なんだ……」



♢ ♢ ♢



日は変わって朝を迎えた。学生達は皆、続々と登校していた



「おーい姉妹ー!」


「ん?あぁ……比呂か」


「すまんな。琴乃じゃなくて」


「琴乃じゃないのは声で分かるし、そもそも今日は日直の仕事があるからって早く出たのも知ってるから」



姉妹は朝から機嫌が悪いようだった。まあ琴乃といない時は大抵機嫌が悪いんだけど……



と、そこに急に足元に赤いカーペットが敷かれた



「お、お姫様のご到着みたいだぜ」


「毎度毎度綺麗に生徒に当たらないように敷くよね。あの執事は」



校門を見ると、大きな黒い車がこれ見よがしに止まっている。そして執事が、車の扉を開いた



加蓮(かれん)様だ!今日も麗しい……」


「まさに名前に違わぬ可憐さだ……」



ほとんどの男子生徒の目を奪うほど注目されている。まああれだけ大々的なことをすれば注目を集めるのは当然……ただ、やはり注目される一番の理由は容姿だろう



黒く長く透き通った髪に整った顔立ち。女性の中では少し高めな身長。抜群のスタイル。そこにお金持ちというステータス付きだ



「相変わらずの人気っぷりね。あんなに男子に注目されて可哀想に……」


「まあ『聖頼5美女』の1人だしな」


「……なにそれ?初めて聞いたんだけど」


「ちなみにお前と琴乃もその内の1人だぞ」


「はぁ⁉︎」



どうやら反応を見る限り、本当に知らなかったらしい。学校で知らない人を探す方が難しいんだが……



「えっ?じゃあ私もいつもあんなに見られてるの?」


「これほどじゃないけど、多少はね」


「マジか……」


「ちなみに5人共、親衛隊みたいなの存在するらしいぞ」


「アイドルの追っかけかよ……」



これも結構有名なんだけどね……



「琴乃ちゃんなんて太一と付き合うってなった時、親衛隊の人、次の日全員学校休んでたからね」


「……あー。なんか1日だけやたら休みの人が多かった気が……って原因がそれかよ!」



なんて話していると、お姫様は着々と下駄箱へと近づいていた



「まあそんな話は置いといて、さっさと入るぞー」



下駄箱前の階段までしっかり繋がっている赤いカーペットを踏まないように避け、靴を履き替えようとしたその時……



「ちょっと……貴方達」



と、お姫様になぜか話しかけられてしまった



「……何か?」


「なぜ私の前に立っているのですか?」


「なぜと言われてもねぇ……」


「そりゃ、ここに靴を履き替えてたからだけど?」



当たり前のことを返す。そりゃそうだ。下駄箱に用があることなんて、靴を履き替えるか、こっそり好きな人の下駄箱にラブレターを入れるかのどっちかしかないのだから



「私がこれから履き替えるのに、なぜ先に靴をお履き替えになったか聞いてるんです」



……???俺の理解が足りないのか、それともそれが常識なのか……?



「履き替えるタイミングなんていつでもいいでしょ?ましてやあんたは私達と別のクラスなんだし、邪魔にもならないでしょ?」


「……あんたですって?」



お姫様から怒りのオーラがみえた



「私には、緋扇(ひおう)加蓮(かれん)という名前があります!姉妹 由比羽!あなた、人の名前も呼べないのですか⁉︎」



どこからか取り出した扇子で姉妹に指差した



「私はあんたの名前を知らなかったんだから仕方ないでしょ?それに、なんで私の名前を知ってんのよ?」


「当たり前です。同じ聖頼5美女と謳われてる人なのですから。私としては姉妹さんと並べられるのは、甚だ不本意ではありますが……」


「私は勝手に呼ばれて腹が立ってるけどね」


「まあ!ギリギリ入ってるだけの分際で、呼ばれていることにまで不満を溜めているとは……まあ腹が立つことも分かります。自分が5番目な訳がない。もっと下の存在なはずとなるのも理解出来ます」



ヤバイ……後ろ姿で分かる……姉妹は相当怒ってるな……



「……こいつ殴っていい?」


「……我慢して」



身体がプルプルと震えている。堪えてるんだ……殴りたい衝動を我慢してる!



「……そういうアンタは?そこまで言うなら一位なんでしょうけど」


「……いですわ」


「え?なに?」


「2位ですわ!」



大声で自身の順位を叫び、2人の間に暫しの静寂が流れた



「……あんだけ煽っといて1位じゃないのね」


「あの方には勝てませんわ。誰であろうとも。だから私の力不足なんかではありません。あの人が圧倒的すぎるのです」



悔しそうな表情を浮かべることなく、それどころか清々しい表情を浮かべるお姫様



「まあ今はそんな話どうでもいいですわ。とりあえず、次からは気をつけるように。私の前に立っていいのは、あの方だけですので」



そういうと、お姫様は靴を履き替え、颯爽と去っていった……



「……ねえ」


「なに?」


「琴乃は何位?」


「4位だったはずだけど」


「琴乃が1位じゃないわけないだろぉ‼︎このランキング作ったやつに抗議してくる‼︎」



と、苛立った様子で、姉妹は職員室へと向かった



「……怒るところ間違ってるんだよなぁ」



♢ ♢ ♢



なぜか1時間目に姿を見せなかった姉妹。気になって探してみると、職員室の前でバケツを両手に持たされて、立たされていた



「……なにしてるの?」


「……職員室で、聖頼5美女のランキングを抗議して、暴れたらこうなった」


「……作ったの新聞部だから」


「……なっ!嘘でしょ⁉︎なら何のために私は職員室で暴れたんだ……」


「……知らないよ」


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