『YOU LOSE』
「ち、近すぎだって!もっと離れてよっ!」
「仕方ないだろ!画角的にこれ以上離れたら映らなくなるんだから!」
私はなぜか、琴乃の彼氏である八幡とプリクラを撮る羽目になっていた
この予行デートは、サボっていないかチェックするために毎回何かしらの証拠品のようなものを指定される。そして今回は2人のプリクラ写真を撮るというものだった。そのせいでこんな事態に陥ってしまっていた
「な、何でよりによってプリクラなんて……」
「知らねーよ。文句は担任に言ってくれ」
あの男のせいか……本当に勘弁してほしい……
「ってやばい!もうシャッター切られるぞ」
「うぅ……わ、分かったわよ!撮ればいいんでしょ⁉︎撮れば⁉︎」
私は自分が近づける最大限まで八幡に身体を近づけ、レンズに目線を向けた
♢ ♢ ♢
「……お前。表情硬すぎだろ」
「う、うるさいっ!」
明らかに引き立った口元。作り笑顔だと誰もが分かるほどだ
「とにかくこれでいいでしょう⁉︎ほらっ!さっさと学校に戻るわよ!」
不可抗力とはいえ、琴乃の彼氏とツーショットだなんて……琴乃に申し訳が立たない……
「なぁ姉妹」
「何よ!」
「まだあと30分ぐらいあるし、ゲームでもして帰らないか?」
「はぁ?なんで急にそんな……」
「いや、実は奏斗から姉妹はゲーマーだって聞いたからさ。どれぐらいの腕の持ち主なのか気になってさ」
またあの男は余計なことを……でもまあ早く戻ったところで暇なだけだし、ゲームする時間が取れるならそれでもいいのかも……
「……仕方ないわね。なんのゲームで勝負するの?」
「そうだな……レーシングゲームなんてどうだ?」
……勝った。私は格ゲー、音ゲー、FPSと様々なジャンルのゲームを嗜んでいるけど、その中でもレーシングゲームは特にやりこんでいて、私の得意なゲームの一つで腕前にはかなりの自信がある
「……いいよ。ただ、勝負するんだからやっぱり何か負けた時に罰ゲームが欲しいわね」
私の勝利は揺るがない。ならばここで得をしておくのが最善の策だ!
「内容はどうするんだ?」
「そうね……じゃあ負けた方は勝った方に1週間琴乃のことを貸し切りに出来るってのはどう?」
今現在、帰り道は八幡。登校時と昼食時は私と一緒にいる琴乃。ただ私としては琴乃との時間を奪われるのは面白くない……負けた時に琴乃との時間を失うのはリスクだが、まあ負けるわけがないのでこの条件を持ちかけた
「仕方ない……いいよ」
「よし!交渉成立!」
やった!これで1週間私は琴乃と今まで失ってた時間を取り戻してーー
『YOU LOSE』
「……」
「危なーっ。さすが奏斗にゲーマーって言われるだけあるね。すごい上手いじゃん」
「……かい」
「えっ?」
「……もう一回‼︎」
『YOU LOSE』
「う、嘘だ!こんなの嘘だぁ‼︎」
負けた……負けた負けた負けた負けた負けた……
「二回ともギリギリ勝てたか……姉妹、インコース突くの上手いなぁ」
「そんな慰めいらないのぉ……」
私は琴乃との時間を失ったこともそうだが、何よりも自信のあったゲームで負けたことに対しての悔しさの方が上回った
「あと20分か……そろそろ戻るか」
「あともう2戦‼︎急いで戻れば10分だからまだ出来る!」
「……意外と負けず嫌いなのな。……まあ俺もまだやりたいと思ってたからいいけどさ」
『YOU LOSE』
「もう一回‼︎」
『YOU LOSE』
「うぅ〜!もう一回‼︎」
『YOU LOSE』
「くぅ!ま、まだまだ‼︎」
♢ ♢ ♢
『YOU WIN』
「き、キター‼︎」
私は今、最高に喜びを噛み締めていた
「最後のインコースのカーブが上手すぎたなぁ。完敗だわ」
「……いやでも、やっと一勝出来ただけだもん。完敗はこっちだわ」
久しぶりにこんな熱い戦いが出来た。私は負けた悔しさもあったけど、この胸躍る熱い戦いが出来たことへの爽快感があった
「約束通り、1週間。琴乃はあなたのものよ」
私は八幡に対して手を差し出し、握手を求めた
男嫌いの私だが、勝負の前に男も女もない。真剣勝負をしてくれた八幡に対して敬意を表した
それに答えるように、八幡は私の手を握り返した
「またやろう。次は別のゲームで勝負しよう」
「望むところよ!」
「……おい」
とお互いの健闘を称えあっている最中に割って入った野太い声に、私達の第六感が危険信号を出した
「制限時間が過ぎてるのにゲーセンでゲームとはいい度胸だなぁ……お前たち?」
「せ、先生……」
当たり前だが、時間は大幅にオーバー。2戦どころかあれから10戦近くはしたので30分以上過ぎていた
「お前ら……戻ったら廊下に立ってろ」
「「……はい」」
今時どこの誰が悪いことをして廊下に立たせるんだ……と思いながらも担任の威圧に耐えきれず、私達ははいと返事をするしかなかった……
♢ ♢ ♢
「……てことなんだ。だから琴乃。今週は琴乃は八幡のものだから」
「いや……私は私のものなんだけど……。私が誰といても私の勝手だと思うんだけど……」
「……確かに」
琴乃の言葉により、罰ゲームは無効となった




