『予行デート』
一夜明けて次の日の朝。毎月一度行われる『予行デート』というイベントの真っ最中だった
このイベントは月に1回、くじで決めた相手と1時間学校外でデートの練習をするらしい
そしてこのイベントも未婚者は強制参加。既婚者は免除されている
例によって、少子化対策の一環扱いのこのイベント。私は正直意味が無いと思う。毎回上手く休んでいたんだけど、とうとう母親にバレてしまい、また引きづり出されてしまった……
今回が初参加の私。せめて相手は比呂であってください!
……そんな上手くいくわけもなく、私は比呂ではない男とデートをしている
「……」
「……」
き、気まずすぎる……
よりにもよって……八幡となってしまうなんて……神様は意地悪だ……
「……」
「……」
互いに少し距離を置きつつ歩く。向かっている場所はカフェ。デートなんて鼻からするつもりなんてない。私はこの1時間を涼しい場所でゆっくりしたい……
「ここでいいか?」
八幡は道沿いにあったカフェの看板を指差し、私に確認を取った
「ここで大丈夫。学校から離れすぎたら戻るの面倒くさいし」
私達は少し小さめの落ち着いた雰囲気のカフェに入った
「……学生は私達だけみたいね」
現在、私達だけでなく私のクラスの未婚者達が予行デートを行なっている。鉢合わせる場合もあるかと思っていたけど、どうやら大丈夫だったみたい
「八幡は何頼むの?支給金にも余裕があるし、食べたいもの頼んじゃいなよ」
支給金とは、この予行デートに使う分のお金のことで、このお金は学校から支給される。一律5000円で、過多分は自分達で出すことになっている。といっても、学級費にこのお金は含まれているから、元を辿れば自分の家のお金なのだけど……
「じゃあホットドッグにする」
「じゃあ私はパフェにしようかな」
店員を呼び、お互いの注文を終えた。そしてまた歩いている時の静寂が2人を包んでいた
「……あのさ」
静寂が包む中、八幡が口を開いた
「昨日はすまなかったな」
「……何で謝るの?」
「いや……心配かけたなって」
そんな謝罪の言葉は私に言うべきじゃない
「琴乃に言ったの?その言葉」
「言った」
「……なんて返事が来たの?」
「……謝る必要なんてないって」
「……琴乃ならそう言うと思ってた」
琴乃は私と考え方が違うから……そもそも私の考えの方が少数なのだろう
子供を命を張ってまで助けた……世間一般からすれば称賛に値することだと思う。私もそう思う。でも……どうしても私は自分の命を軽んずることが許せない
「……俺さ。昨日姉妹に言われたことさ。確かにそうだなって納得しちゃってさ」
……意外だ。私のこの考えを理解する人が出てくるなんて……
「でもさ。かといって子供を見捨てるなんて俺には絶対に出来ない。どっちも助かるならそれが最善だろうけど、もしどっちかしか助からない時……俺は自分を犠牲にする。それだけは変わらない」
八幡の目に揺るぎは見えなかった。真っ直ぐの芯の通った精神が八幡にはあるのだろう
「……別にやめろなんて言わないよ。ただ……ちゃんと理解してくれたならそれでいいよ」
「……姉妹」
「そもそも人はそう何回も命の危機に瀕することなんてないんだから。普通に人助けする分にはいいんじゃない?ただ、限度はあるけどね」
私が言ってもこいつは曲がらない。……いや、多分誰が言っても、八幡の精神は変えられないのだろう
ならせめて……
「……約束して。八幡」
「琴乃を悲しませることだけは……絶対にしないって」
「当たり前だ」
煮え切らない返答か、はたまた少しのダンマリがあるかと思ったけど即答するなんて……
「……ならいいわ」
この男は約束を守る……私はなんとなくそんな予感がしていた
「じゃあこの話はおしまい。あとはゆっくり制限時間がくるまでゆっくりーー」
「ーーあ、忘れてたことがあったわ」
「……何よ」
「今回デートした証拠として、プリクラを撮らないとダメなんだよ」
「……はい?」




