「……私があんたの事、気に食わない理由が分かった」
「当たり前だろ?こいつらのせいで俺の人生台無しになりかけたんだから」
ああ……こいつはあの時と同じタイプだ
「確かに車道に出てしまった2人には責任があるでしょう」
「そうだろ?」
「ですが、あなたにも責任はありますよね?」
「あぁ⁉︎あるわけねぇだろうが‼︎」
男は町中で他を気にすることもなく大声で怒鳴り散らかしている。自分を正当化しようと必死なのだろう
「あなた、あの看板の意味、分からないのですか?」
私は道に立っているとある看板を指さした
「免許持ってない私でも分かりますよ。ここ、車は侵入禁止なんですよ」
私が指さした看板は赤い丸に白い横棒の入った標識。意味は『車両侵入禁止』だ
「だからなんだよ?近道なんだから仕方ねえだろ?」
「仕方なくない。何のための標識だと思ってるんです?」
よくこれで車の免許が取ることが出来たな……と、私はつくづく思う
「別に警察に言ってもいいんですよ?あなたのせいで子供が轢かれそうになったって。そうなったらあなたに非があるんですよ?」
「ぐっ……」
「警察行きます?それとも電話で呼びます?」
「……ちっ」
男は周りに聞こえるほどの舌打ちをし、車に乗り込んだ。そしてそのまま走り去っていった
「……ナンバープレート覚えてるから逃げても意味ないのに」
私はとりあえず車の車種と、ナンバープレートを携帯のメモアプリに残し、後で警察に報告することにした
「……ふぅ」
轢かれそうになった子供を見ると、轢かれそうになった恐怖か、それとも八幡が引っ張った際に付いた尻餅の痛みか、はたまたあの男の怒鳴り声に驚いて泣いたのかは分からないが号泣していた。そしてその子を琴乃が頭を撫でながらあやしていた
「姉妹……ありがとな」
八幡の言葉に私は何かが切れた。そして……
パチンッ
私は無意識に八幡にビンタを繰り出していた
「……あんたさ。何で飛び出したの?」
「なんでって……そりゃ子供を助ける為……」
「そんなの見てたから分かってる‼︎」
私は八幡の胸ぐらを掴んだ
「何で自分を犠牲にしようとしたか聞いてるの‼︎」
私は八幡の胸板をポンポンと叩いた
「子供を見捨てろなんて言わない……むしろ子供を助けたことは素晴らしい事だと思う……でも自分を見捨てることは許さない‼︎あんたは良くても、あんたが傷つくことを嫌がる人間がいることを覚えておくべきよ‼︎」
「……姉妹」
「言ってることが無茶苦茶で、矛盾してることも分かってる!でも!琴乃に辛い思いさせるようなことはしないで‼︎」
私はいつの間にか涙ながらに訴えかけていた……思い出してしまったのだ。あの日の出来事を……
私は胸ぐらを掴む手を離した。そして卯月の近くに置いたままの鞄を持った
「……私があんたの事、気に食わない理由が分かった」
私はずっと琴乃が取られてしまうことが嫌だった……でもそれだけじゃない。一番な理由は……
「あんたは優しすぎる。でもその優しさが、他の人を傷つけてしまう事を知らないからよ」
私はそう八幡に告げ、その場から去った……
「ゆ、由比羽!ちょっと待って!」
卯月も私の後ろを追いかけるように鞄を持ってその場から去った……
「由比羽ちゃん……」
「お姉ちゃん……怒ってたのかな?」
「……ううん大丈夫。あれは怒ってたんじゃないよ」
「……本当?」
「うん。だからほら、皆んなの所に戻って遊びなさい。あ、でも今度から道に飛び出さないように気をつけてね?」
「……分かった!」
「よろしい!友達にもちゃんと飛び出さないように言うんだよー?」
「はーい!」
幸い怪我した様子もなく元気に走って戻っていく男の子。……無事で良かった
「……太一くん。大丈夫?」
「……」
「太一くん?」
「ん?ああ……ごめん。ぼーっとしてた……」
確かに少し上の空な様子だった……
「……由比羽ちゃんに言われたこと……気にしてるの?」
「……優しさは他の人を傷つける……か。なんか自分になかった言葉だなって思ってさ。言われてみればその通りな気がしたよ」
「……確かに由比羽ちゃんが言ったことは正しいよ。もし太一くんが轢かれて怪我しちゃったり、死んじゃったりしたら色んな人が悲しむからね。私もだけど……」
「……そうだよな」
「……でもね。私は優しすぎる所も太一くんの良いところだと思うの。だからね、優しさを捨てたりはしないで欲しい」
「……琴乃にはお見通しだった?」
「うん。優しさを捨てるべきか?って悩んでたでしょ?」
「……まあな。でも、琴乃がそういうならそうするよ」
「……うん」
「とりあえず今日はもう帰ろうか。送っていくよ」
「ありがと」




