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そして強引なコラボガチャ第3弾計画

「あ゛あ゛? 人数整理? そんなもん全部換金しちまえクソがッ」


 神様は思わず毒を吐いた。

 正直気分が荒んでいるのは自分でも理解できている。

 理解はできているがそれを制御できるかと言えば無理としか言いようがない。


 思わず毒を吐いてから、目頭押さえて気分を沈める。

 今の作業が終わった後のメンテでなんか考えるからそれまで待ってくれ。

 そうメールを送る。


 ダイスケからは了解という返事が来た。

 ふぅ、これでいい。

 下手に売り言葉を返してしまったら折角許容してくれているダイスケの気分を害し、敵対関係が始まりかねない。


 なんとか気持ちを落ち付け必死に城内を再構築していく。

 正直どんなイベントを置いておいたかなど記憶にすらない。

 マロンの書き置きの中に世界のセーブはこまめに。とか書いてあった理由はよくわかった。

 なので悔しいが書かれた通りセーブを終えておいた。


 できるならば消す前に伝えてほしかった。

 これでは城外バグを取ってくれたありがたみよりも消された憎悪の方が上回ってしまう。

 自らの功績を帳消しにしてさらに相手に悪感情を植え付ける。

 それが彼女が駄女神と呼ばれる所以であった。


 今更ながらに彼女と知り合いになったことを後悔する神様が居るのだが、こればかりはどうにもならない。

 必死に直して行くしかないのである。

 そんな必死な神様の元へ、その珍客は無遠慮にやってきた。


「はっろーう。なんか変わった世界作ったってマロンに聞いたから来たよー」


「すまん今忙しい」


「はっは。そんなこと言わずにさー。ほらコラボキャラデータ持って来たから第3弾、になるのかな? 僕の世界のキャラも使ってよ」


 今それいらないから。神の本音が漏れる手前で神様はなんとか飲み込んだ。


「と、ところであんた誰?」


「え? あー。そっか、会うの初めてか。そうだね。ピエロ神とでも名乗っとこう。はい。ピエロさんからロワイヤルコラボキャラとコラボイベント。受け取りなー」


 と、強引に神様に手渡し去っていくピエロ。嫌な笑みを残して去っていったのはワザとだろうか? 苛立ちがさらに上がった気がする。

 それでも必死に押し隠しイベントも精査して問題はなさそうなので世界に組み込もう、としたその刹那。


「お、ここかの」


「あー、いたいた」


「「マロンから聞いたんだけど……」」


 二人の神が同時に顔を出す。

 なんでもデータ消しちゃった罪滅ぼしに皆に協力を持ちかけているらしい。

 御蔭でウチの世界とコラボしようという神々が湯水の如く押し寄せ始める。

 正直に言おう、有難迷惑だ。


 コラボは嬉しい。神様としてもぜひにと言いたいところである。

 でも、緩急なしにひっきりなしコラボしてくれと押し寄せられても困るのである。

 もはや対応しきれていないコラボキャラデータがそこかしこに山積みになり始めた。

 駄女神がやらかしたことを修正したいのに、その駄女神が罪滅ぼしにと声を掛けた者たちによる妨害で殆ど進まない。


「ああああああああ、駄女神ェ――――――――ッ!!」


 誰も居なくなった瞬間、神様は咆えた。

 咆えずには居られなかった。

 これはあまりに酷い所業ではないか?

 ダメ押しもダメ押しである。

 君の為にとあらゆる出前を頼むだけ頼んで金払いを任された位のいい迷惑である。


 やることは増えた。

 城内の再設定、残っているバグの除去。ダブりキャラの処理方法、コラボキャラの精査、コラボキャラの実施。さらにコラボイベントのバグ除去などである。

 あまりにもやることが増え過ぎて頭かきむしりながらその辺を走りまわりたいくらいだ。


「と、とにかく、気持ちが折れないうちに城内だけでも作らないと……」


 なんでこんなことになってしまったんだ。

 寝たからか? 作業途中で寝てしまったからなのか?

 チクショウ、なんで一人きりでデスマーチしなければならないんだ。


 恨むよダイスケ君。いや、ダイスケ君のせいじゃないな。

 そうだ。全てはアイツだ。

 アイツだけはマジ許さん。

 駄女神マロン。必ず後悔させてやる。


 どうしたらいい? あ、そうだ。アイツをこの世界に誘い込んで地獄を見せてやろう。

 そうと決まれば……あああ、自分思い付きでまた仕事が増えたじゃないか。おのれマロン、この恨みどうしてくれようか?


 思考が破綻しているせいで更なる責め苦を自分から引き受けに向かってしまった神様は行動を開始しようとしてはっと我に返った。

 自分で自分の首をぎゅっと締めていたことに気付きその場でへなへなと崩れ落ちた。


「と、とにかく今は、無心になろう。無心になって城内を作り終えるのだ。後のことは後で考えればいい、今はただこいつを正常稼働させることだけだ」


 邪魔な全てを放置して、神様は初志を貫徹することに決めたのだった。

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