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駄女神様、本領発揮

 ダイスケが山道から畑道に向けて歩いている頃、神様世界ではマロンによる大規模改変が行われていた。

 自称プログラマーというだけあって、動きだけは歴戦のプロに匹敵する指さばき。

 カタカタカタとキーボードを叩きながら無数にあるバグを一つ一つ修正していく。

 それだけであればよかった。


 問題は彼女が周囲から駄女神と呼ばれる所以。はっちゃけ過ぎることにある。

 修正するだけならばいいのだが、たまに遊ぶ。

 宿屋の厳ついおじさんにネコミミ生やしてみたり。

 外を歩くお婆さんの速度を加速させてみたり。

 無害なゾンビを一体徘徊させてみたり。


 これはバグではない、仕様だ。

 そう告げる用意までしている周到さである。

 そして城下のバグを取り終えた彼女は城内へとマップを移し、アルセに振り向いた。


「ねーアルセー。あんたも何か足跡残すー?」


 そういいながらボタンをタップ。

 聞かれてマロンを見たアルセは思わず目を見開く。


「ん? どったのアルセ?」


 震えながら指し示した指先は、世界を改変中の画面に向かっていた。

 マロンは小首を傾げながら画面を見る。


「…………」


 その顔が徐々に青くなり始めた。

 慌ててキーボードを打ち始める。

 冷や汗とも脂汗ともつかない何かが急激に溢れだす。

 もはや一瞬にして絶望の奥底へと侵入してしまっていた。


「え? ちょ、嘘でしょ!? ちょっとホイホイくんセーブしてないの!? 途中セーブは開発の基本でしょ!? え? ぶっつけ本番!? ここの保存はどっかないの!? リカバリーは? あ、ちょ、マジか!? あ、そうだ。ダイスケくんにメール。えっと、ダイスケ君緊急事態。これから報告があるまでは絶対に皇国城内に入らないこと、絶対だからね。入ったら責任取れないからね!! これでよしっ!」


「……ぅ……ん?」


「あ、おはよ」


 アルセの声に、びっくーんとマロンが止まった。

 背後では眼を覚ましたホイミ○ライムのごとき生物が起き上がる気配がする。


「あ、ああアルセちゃん。どうやらいつの間にか寝てたようだ」


「疲れてたんだよ」


「まぁ、仮眠でも寝れたから。あ、マロンさんも来てたのか。もしかしてバグ取りしてくれてた?」


「え? え、ええ。うん。城下街のバグは取っといたよ。あは、あはは……」


 そーっと画面から撤退するマロン。変な足取りでアルセの元へ行くと、彼女の背中を押し始めた。


「じゃ、じゃあホイホイくんも起きたことだし、あちきらはおいとまいたしまっす」


「え? もう帰るのかい? それにアルセちゃんはアレだろ、コラボキャラ案持って来てくれたんじゃ……」


「あ、それはもう開始しといたから期間はあの世界で一週間くらい、でよかったわよね?」


「ええ。わざわざ代わりにやって貰って悪いね。ありがとうマロンさん。皆には駄女神って言われてるけど、やる時はやるんだね」


「あ、あははははは。じゃ、さよなら~」


 寝ぼけた状態の神に軽く手を振りながら、マロンはそそくさと帰って行った。

 ずいぶん早い帰りだなぁ。そんな事を思いながら世界の確認を始める。

 ダイスケは既にメンテナンス用の日本家屋から出て農道を歩いているところだ。

 間もなく皇国入りするだろう。

 今回のボスはそこまで強くないから直ぐ終わる筈だ。


 オリジナルキャラが仲間になりまくっている気がしなくもないが、下手にこの辺りを弄るとダイスケとまた敵対しかねない。

 バグ報告は必要だが過剰過ぎるバグ報告は勘弁してほしい。とりあえずこのβテストが終わるまではオリジナルキャラが仲間にずっといることにテコ入れは入れないでおこう。


「とりあえず、臨時運営終わったこと伝えとかないとな。私が復帰しましたよっと」


 ―― あ、神様起きたんだ。聞いたよマロンって運営さんから。また徹夜したんだって? 徹夜し過ぎると変な失敗するからそうなる前にちゃんと寝ろよー ――


 最近、ダイスケが優しい気がする。

 ダイスケのさりげない心遣いに胸が熱くなるのを感じつつ、皇国のバグを調べていく。

 バグらしいバグは存在しない。

 ただ、ここ変えといたよ。というマロンの意地悪というべきか、足跡がいくつかあった。

 メッセージとして残っているのでどこが仕様なのかは分かりやすい。これバグだろ。と苦笑しつつもせっかくだから残したままにしておくことにする。


「ふむふむ。あとは城内を調べればいいのかな。いやー随分助かったなぁ。正直終わりが見えなかったからなぁ。ここまで直してくれるとは。後でお礼を言っておか……な……きゃ?」


 ぽちり。城内マップに切り替えた時、それは起こった。

 画面に映し出されるのはたった一文。


 ―― 該当マップが見当たりません ――


「……ん?」


 再度、城外を見て調べる。

 問題無く稼働している。

 城内マップへと向かう。


 ―― 該当マップが見当たりません ――


「あれ? おかしいな? まだバグ直してないのになー。王様たちどこ行ったのかなー。マップどこかなぁ……」


 別の場所に移動してないか、そこからしばし、周囲を見ていく。残念ながら対象マップはどこにも存在していなかった。

 神は、燃え尽きた……

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