運営は知らないうちに替っている
あれ？ メンテまだ数時間掛かるって言ってなかったっけ？
メンテナンスが終了し、目の前にケンウッドの家が現れる。
まだ１時間程しか経ってない気がするんだけど……というか、今回は宿屋じゃなく元の場所に戻ったな。
一先ずケンウッド家の前でメニューを開いてお知らせを調べる。
ふむふむ、えーっとメンテ開けた理由は？
―― 外部より専門家を呼び只今メンテナンスを行っております。メンテナンスではありますがオープンワールド状態で可能と判断したためメンテナンス部屋よりサルベージさせていただきました。今後もソシャゲワールドをお楽しみくださいにゃー ――
え？ 何、どういうこと？
とりあえずこのまま進めていいのか？ それとも言われた通りにケンウッドの家で止まった居た方がいいのか？
ま、まぁいいとりあえずケンウッドに若返りの水を与えてみよう。
効果が出るようならウチのケンウッドにも一個あげよう。
「あ、皆さん戻って来られたんですね」
「ええ、若返りの水、手に入れて来ました。爺さんに飲ませてやってください」
「おお、これはありがとうございます」
若返りの水を受け取った青年と共に家に入る。
おじいちゃんはベッドの上で寝転んでいたが、青年が来た事で上半身を起こす。
「じいちゃん、これ、美味しい水だって。飲んでみて」
プルプル震えながら若返りの水を飲むケンウッド。
ゴクリ、喉を通過した瞬間だった。
「か、か、か……かぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ」
け、ケンウッドがバグった！？
突如若返りの水が入った瓶を取り落とし痙攣を始める御老体。
なんかもういつ死んでもおかしくない状態のまましばし、僕らはただただ戦慄を覚えるしか出来なかった。
「かぺぽぉっ」
そして虚空を見上げたまま謎の言葉を吐いてぴたりと止まる。
まさか、そのままお亡くなりに！？
次の瞬間、爺さんの穴という穴から光が溢れだす。
口に鼻に耳、目からもだ。
眩しさに目を閉じた僕が再び目を開いた時、そこに御老体は居なかった。
なぜか１０代後半くらいの逞しい拳法家がそこに居た。
え？ ちょ、若返り過ぎじゃね！？
「これは……」
意識を取り戻したケンウッドは自分の掌を確認し、次にその掌で自分の顔を何度も触る。
「なんと、意識の混濁が無くなっている。身体が軽い、腰の痛みも節々の痛みもない。それに、眼が霞んでおらん。身体も若々しくなっておる。セルジュ、一体何を儂に与えたのじゃ」
「父さん……その、若返りの薬です」
「若返り。では儂は若返ったのか！？」
信じられん。ベッドから這いだし身体を動かし始めるケンウッド。
老人だった姿は既になく、武術に特化した身体を持つ青年がそこに居た。
いや、マジ若返りすぎだから。老人ケンウッドの気配が微塵もない普通のヤリ手武術家にしか見えません。
「お主が若返りの秘薬を持ってきて下さった方か。わざわざ儂なんぞの為に骨を折っていただきありがたく思う」
握手を求められたので思わず握り返す。
にかっと笑うケンウッド。暑苦しい男にしか思えない。
あのぷるぷるしていたケンウッドさんはどこ行った？
手もなんか無骨な男の手になってるし、筋肉質の細マッチョ。よぼよぼ爺さんの影が一つもなくなってしまった。
そうか、こんな青年でも年取ればあんなによぼよぼになるのか……
……頑張るじいちゃん見たいし、ウチのケンウッドにはまだ使わなくていい、かな。
「よっし、セルジュ、身体の調子を確かめたい、ちょっと付き合うのじゃ」
「はいはい、お手柔らかにお願いするよ」
「お客人、長旅でお疲れでしょう、何もない家ですが、本日は泊まって行きんしゃい」
青年の姿なのに、口調は老成したソレである。
これが、若返りの代償か。
待てよ、老婆に使えば可愛い女の子状態になるのでは？ ほら１０代に戻るみたいだし。
これは……新キャラ発掘の好機？
ロリババァ出現の予感がします。
ガチャでお婆さんとか出ないかな？
ちょっとガチャ排出見てみよう。
ケンウッドとセルジュが家から出ていくのを見届けて、僕はベッドに腰かけメニューを開く。
ガチャの排出率を見ようとガチャ画面に向かうと、なんとコラボガチャが出現していた。
しかも今度はグレイシアコラボガチャ。告知しとけよ神様。
☆５キャラはシークレットで名前も？？？。シークレットといっても王女シークレットではなく隠されているという意味のシークレットで、キャラのシルエットだけが見えている。正直何が出るか全く分からない。
そして残り２体は、学生帽にガクラン、下駄を履いたバンカラ番長といった姿の男。名前はこちらも？？？？だ。最後に女性枠だろう。物凄く皺苦茶のお婆さんが居た。名前は？ Ｇババァだそうだ。早速老女出現だよ。狙ってみるか？ もしかしたら若返って物凄く綺麗な人になるかもしれんしな、やるしかなかろう！
