ある日、異世界のお祭りに行った。1
8年ぶりの投稿となります。大変おまたせしました。
「う、わあ…」
「どうだ、中々の光景だろう?」
「はい…いや…ほんとに凄いです…」
感嘆の声を漏らすと、皇帝さまは誇らしげに笑った。
今日は待ちに待ったお祭りの日だ。
祭りは今日から三日三晩ぶっ通しで開かれるらしく、本当は明日の朝からの予定だったのだが、家に帰った途端支度を促された。
祝福を得るための儀式を終えるなり、私を迎えに来たらしい。
…皇帝さまも結構楽しみにしていてくれたのかな、なんて嬉しかったので抵抗らしい抵抗はしていないけれど。
可憐な刺繍の入ったいかにも町娘といった風のブラウスとロングスカート、紐で結ぶタイプの靴。
今日のために皇帝さまが用意してくれた服と靴は、私には少し可愛すぎるような気がする。
服を着替えれば気恥ずかしい感情と高揚感がないまぜになる。
「見立て通りだ、似合っている」
ちゃんと褒められて、ひとしきり照れた。
本当は写真とかも撮りたいが、無くしたり騒ぎにしたくないのでスマートフォンは置いていく。
以前渡した腰飾りはつけるよう言われたので、絶対に無くさないよう厳重に腰紐に括り付けた。
「いくぞ」
クローゼットに入り、皇帝さまに手を引かれながら暗い道を通り抜けた。
聞けば流石にお城からの出入りは難しかったので、適当な家を借りてワードローブを置いたそうだ。
その方が祭りにも繰り出しやすいと。
促されるまま明かりの漏れる扉を開くと、目の前にはレンガ造りの街並みが広がっていた。
まるでテーマパークにあるような西洋風の建物は、それでもしっかりと生活感があり、ハリボテではないのだとすぐにわかる。
その家々の間を往来する人々は、とても大きかったり、小さかったり、犬や猫のような耳を生やしていたり、はたまた羽が生えていたりと様々だ。
つまり何が言いたいかというと、ものすごくファンタジーなのである。
「街並みだけでもかなり感動してるんですが…この、これは…」
「『祝福』だ」
蛍のような小さな光がひとつ、ふたつ…どころではなく、街全体にこれでもかと降り注いでいる。
夜だというのにとても明るい。
一体どこから降っているのかと空を見上げるも、その先には何も見えない。
「この祭りは精霊への敬意を示すものなのだ。精霊が応えれば『祝福』を与えてくれる。これは今回も無事に成功という証だ」
どこか誇らしげに皇帝さまが呟いた。
曰く、この祝福を得ることがこの祭りでの皇族の務めなのだとか。
聞けば、過去に祝福を受けることのできなかった皇帝もいたらしい。やはりあまり良い為政者とは言えず、すぐに代替わりしたそうだ。
「祝福された祭りは、全ての者の『悪意』がなくなりもっとも安全な期間となる。お前を呼ぶには最適な日だろう?」
「えっ?本当ですか?すごい…犯罪とか全く起きないってことですか?」
「ああ。この祭りは老若男女が昼夜問わず、皆等しく楽しめるのだ」
「はー…なるほど…」
降ってくる光を手にとってみる。
が、それは手のひらに何も残さず、何かに触った感覚もなく、ただただすり抜けて、地面に消えていった。
「精霊…本当に居るんですね…」
皇帝さまの話を疑っていたわけではないが、目の当たりにすると途端にここが異世界なのだという実感がわく。
「とはいえ、人も多い。あまり余から離れるな」
顔を寄せてそう忠告する、見慣れない姿の皇帝さまに胸が高鳴る。
街を歩くために魔法で変装を施しているらしい。
頭に織布を巻き、服装もいつもよりゆるっとした布を纏っている。
黄金の髪色も白金へ、肌も健康的に日焼けをしたような色に変え、エキゾチックな雰囲気だ。
護身というよりかは、騒ぎにならないように、だそうだ。
部屋にいたときは誰かと思った。元が整っているから似合っているけれど。
「さあ、行くぞ。此度は余が案内をする番だ」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って、高揚感から熱くなった手を冷たい皇帝さまの手に重ねた。
またお付き合いおねがいします。




