対話と覚悟、それぞれの陣営
「ええか! 戦えるもんは武器と装備を揃えてワイに続くんや! 誰一人としてこの山を一歩も登らせるな!」
クウカイの鋭い檄が飛び、九尾族の部隊が迅速に編成されていく。その統率力は、先ほど母親に怒鳴られていた姿とは別人のようだった。
「俺たちは先に、人間たちの状況を確認しておこう。ウルティマ」
「ん」
彰人の言葉に短く応え、二人は里の外れにある、最も見晴らしの良い崖へと向かった。
そこには数人の偵察兵が、険しい表情で下界を監視していた。彰人の姿を認めると、一人が跪いて報告する。
「魔王様! 人間たちはまだソウル山の麓には到達しておりません。あそこの湖の辺りで光る松明の群れ……あれが敵の主力と思われます」
兵士が指差した先。自分たちがかつて天狗と出会い、束の間の休息を得たあの湖畔が、無数の松明の光によって真っ赤に染まっていた。
しかし、彰人はその光景に違和感を覚える。
「……あの信号弾が上がったのは、つい数時間前のはずだ。街からここまで、なぜあんなに早く動けているんだ?」
「ん。たぶん……転移の魔術」
ウルティマの言葉に、彰人は納得したように頷いた。「転移……この里の門と同じようなものか」
「ええ。おそらく街のギルドが所有する転移陣でしょう。ただ、魔力の消費が激しいため、砂漠を越える辺りまでが限界のようです。そこから先は徒歩のはず。まだ、迎撃の準備を整える余裕はありそうですね」
兵士の冷静な分析に、彰人は松明の数を見据えたまま呟く。
「ああ……だけどあの数だ。このまま里に籠もって戦えば、いつかはジリ貧になるな……」
そこへ、背後から足音が近づいてきた。
「ここにおったんか。迎撃の準備はできとるで。……あんさんらはどうする気や?」
武装を整えたクウカイが、鉄扇を握りしめて立っていた。
「クウカイか。俺たちは一度、山を降りてあいつらと会ってくる。……対話ができれば、それが一番いいからな」
彰人の答えに、クウカイは鼻で笑った。
「対話? はっ! んなもんできるわけないやろ。本当に甘ちゃんやな。もうすぐこの里への門はすべて閉じる。降りるんやったら早よ行かんと、二度と戻ってこれへんで」
「まだ、会ってみなきゃわからないだろ。……対話ができないなら、その時はその時だ。よし、ウルティマ、行くぞ」
「ん」
迷いのない足取りで、彰人とウルティマは山を下りるための門へと向かっていく。二人の背中が見えなくなるまで見送っていたクウカイは、深くため息をついた。
「……あんなんが魔王なんてなあ。ほんま、調子狂うわ」
クウカイの呟きは夜風に消えた。
一方で、湖畔に集う冒険者たちの喧騒の中には、勇太たちの姿も、そして獲物を狙うラウストの影も、確実に近づいていた。
忙しいし全然書けない




