序章:二人転生
西日に焼かれたアスファルトの匂いが、妙に鼻につく午後だった。
「じいちゃんに、今日のおかず唐揚げだって言っちゃったよ。早く帰らねえとな」
歩道橋の階段を下りながら、**勇太**はスマートフォンの画面を気にしながら笑った。
かつて親に放置され、暗い部屋で震えていた自分を救い出してくれたのは、警察官だった彰人の父親だった。その後、事情を知り血相を変えて駆けつけ、今日まで自分を「宝物」のように育ててくれた祖父。その食卓は、勇太にとって何よりも守るべき世界の中心だった。
「お前は相変わらずじいちゃん子だな。……ま、うちの親父も、お前が相手だと警察の顔じゃなくなるから笑えるけど」
隣を歩く**彰人**は、どこか遠くを見るような目で言った。
偉大な警察官の息子という看板は、彼にとって常に正解を求められる檻だった。彰人にとって、勇太だけが「警察官の息子」ではなく「ただの彰人」として接してくれる唯一の救いだった。
「あ、危ない!」
勇太の叫びと同時に、勇太は飛び出した。それに続いて彰人も飛び出す。
落としたボールを追いかけ、赤信号の横断歩道に飛び出す幼い少女。『ププゥゥゥ!!!!!』と怒号のようなクラクションとともに突っ込んでくる大型トラック。
勇太は少女を突き飛ばし、彰人は咄嗟に勇太の体を庇うように割り込んだ。
激しい衝撃。視界が真っ白に爆ぜる。
「……おい、彰人!」「……勇太!」
互いの名前を呼ぶ声が、血の匂いとともに遠ざかっていく。
(……ああ、じいちゃん。ごめん、今日も「ただいま」って言えなかった)
(……親父、ごめん。結局、あんたが助けた命を、俺が台無しにしちまった)




