表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避とサイコとツトム外伝  作者: 時田総司(いぶさん)
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/36

第十八節 手を繋ぐところから始まる、私たちが守るもの


 光陰矢の如しとは、よく言ったもので夏休みの休業期間、そして2学期の学業期間も終わりに近付き――、


 主人公は高校2年生のクリスマスイブ前日を迎えていた。


「今日は、尾坦子さんとのデート……付き合って3回目のクリスマスだ……! プレゼント、喜んでもらえるかな?」


 ラッピングされた袋を、自室の机の前に立ち、両手で大事そうに持つ主人公はぶつくさと落ち着かない様子だった。


「ダメだ、今更迷ったって、もう用意してしまったんだ! しっかり気持ちを込めて渡そう!」


 パンパンと両手で頬に気合を入れて、主人公はバッグにその袋を入れた。



 街――、


 当日でもないのに、毎年恒例、この季節となればクリスマスムードで盛り上がっている。イルミネーションが街路樹を縁取り、夜を優しく飾っていた。大きなツリーが目印の待ち合わせ場所に、主人公は居た。明るめのマフラーが、街のムードに溶け込んでいた。



「ツトムくーん!」



「!」


 尾坦子が手を振りながら駆け足で登場した。


「ハッハッ……ごめんね! 待った?」


「そんな息切らして……さっき来たところ!(ホントは30分待ってました)」


「ホント? 良かったー、今日も病院勤務が長引いてさ、それにしてもクリスマス当日は休みなんてとれないよねー。皆休みたい日だし……」


「はは……そうだね」


「でもまー、私達のクリスマスは、今日だ! しっかり楽しむぞー!!」


「おー!!」


 二人は元気よく右手を上げた。


「じゃあ尾坦子さん、イルミネーション見に行こう!」


「うん!」


 二人は歩き出す。光に包まれた街角に近付くにつれて、星たちの明るさが増していく。クリスマスらしい木の小屋が佇み、人形オブジェ達が明るく迎え入れてくれた。

 中心までたどり着いた。待ち合わせ場所よりももっと大きなクリスマスツリーが彩をもって場を照らしていた。


「キレー……」

「うん……(『尾坦子さんの方が綺麗だよ』なんて、臭いセリフは言えない……!!)」


 目をそっと閉じて思う、主人公だった。


「そうだ! お坦子さん。今年のクリスマスプレゼント!」


 思いついたかの様に、主人公はバッグからラッピングされた袋を取り出した。


「わっ! 何々!?」


 尾坦子は嬉しそうにそれを受け取り、袋を開けた。それは毛糸でできた、フワフワしたものだった。


「……これは?」


「手編みの手袋! 寒い季節にぴったりだと思って!」


「自分で編んだの!? わぁー、ありがとー!! 嬉しいよぉー。そうだ! 私からも」


「え?」


 欲しがりで、何時も強請(ねだ)っていた尾坦子が、今回はそちらからプレゼントするなんて、虚を突かれそう思った主人公は期待と不安が入り混じった、そんな昂ぶりを抑えきれないでいた。


「じゃーん! お花! ちょっと小さいけどね」


 小さな鉢に入った、可愛らしいピンクの花が、小さな可愛らしい赤みがかった両手から差し出された。


「わぁ! ありがとう。これは……?」


「カランコエっていう花だよ。花言葉は色々あって、たくさんの小さな思い出・おおらかな心・幸福を告げる・幸せを作る・あなたを守るだよ!」


「『あなたを守る』……」


 主人公はハッとし、手渡した手袋に視線をやった。


「ふふ、ツトム君……私達、考えるコト一緒かも知れないね!」


「あ……あの時の……」


「その花、大切に育ててね! さっ、しまってしまって。私の方は、貰った手袋、出しちゃおっと……」

「あ、うん……!」


 尾坦子は、突然差し出された贈り物に動転する主人公をよそに、手袋をはめた。


 そして――、


 ぎゅっと、両の手で主人公の手を握った。



「もう一度言うよ! あの日、手を繋いでくれた感触、投げ掛けてくれた言葉、その時感じたキモチは、ずっと忘れないよ!!」



「……うん!」


「よーし! じゃあ、また病院勤務行ってくるね!」



「え?」



「この時期は患者さん多くて多くて! 主人公ツトム君! 良いクリスマスを」


 右のピースサインを作って、尾坦子はダッシュで去っていった。


「ブラックだぁ……でも――」


 主人公は先程貰ったプレゼントの入ったバッグに目をやり、頬を緩ませる。


 そして――、


「お世辞じゃなく、嬉しい。大切にしよう……」



 ――、


 主人公は自室にてカランコエを眺めていた。その表情は穏やかで朗らかだ。


「幸せだなぁ……皆がそうだと良いなぁ……」


 それぞれの人、土地、家、食べ物、水、自然、関係――、

 これは当たり前に在る様で有限だ。神様から与えられた、大切なモノだ。


 それは奪い合うモノではない――。


 それぞれの場所で不可侵の領域で、大切だから大事にしないといけない。


 それは、自分自身にしか出来ないことだ。例えば、他人の家族に、外国の人に、毎日ご飯をあげることなんてできない。何か、し続けることはできない。自分自身が本当に大切にし続けられる人には限りがある。恋人だって、そう。

 だから、それぞれの場所で、それぞれが大切にしていく――、


 あなたの大切な人は何ですか? 


 あなたの大切なモノは何ですか? 


 可能なら、手を繋いでみる。そこから始めてみよう。


回避とサイコとツトム外伝『後日談 』 ~完~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ