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42. 物流国家の胎動

 三河・吉良。

 海と川に囲まれたこの地は、古来より“東西物流の要”とされてきた。


 その吉良に、織田・徳川の混成部隊と職人団が集結していた。


 「ここから尾張、美濃、さらに伊勢へ――“道”を通す。

 だがこれは軍道ではない。“市と市をつなぐ民の動脈”だ」


 信長の言葉に、徳川家康もうなずく。


 「――まさか、道路の“設計図”まであるとはな。まるで都の普請」



◆ “五間幅”の広道


 信長が敷いたのは、馬三頭が並走できる五間(約9m)幅の広道。

 路面は固められ、脇には“水抜き溝”と“宿場予定地”が等間隔に設けられた。


 「この道は、軍のためにあらず。

 馬、荷車、人足、旅人――すべてが、等しく使える“市道”だ」


 信長はこの道を「天下の物流動脈」と呼んだ。



◆ 統一通行札と市座制度


 さらに信長は、「通行札」なる制度を導入。


 これは「軽税通行」の証であり、各宿場・市座で発行・照合されるものだった。


 「不正徴収を防ぐには、“誰がどこで払ったか”を明らかにすることが何よりの薬よ」


 この制度により、強訴・押し買い・無断関所徴税といった“道の危機”が減少。


 さらに、市座ごとに「信長銀」「岐阜手形」の交換所が設けられ、通貨の流通が格段に安定した。



◆ 道を通じて人が動く


 「殿、尾鷲の塩と、伊賀の紙がすでに三河の市に届いております」

 「また、美濃からの陶器も、伊勢まで三日で届いたとのことです」


 報告を聞いた信長は笑った。


 「道が開けば、戦は遠ざかる。人が物を得て、食を得て、争わぬ“満ち足りた世”になる。

 武より“道”、これぞ新しき治世の骨格ぞ」


 光秀が静かに問う。


 「されど、これを脅かす者あらば――?」


 「ならば、“経済戦”と“情報戦”で、追い詰めてやろう」



◆ 一方、甲府にて


 甲斐・武田信玄は、岐阜日報の特別号を手に取っていた。


 「道を繋ぎ、銀を流し、人の欲を満たす……か」


 彼の傍らには、密かに京から戻った間者が控えていた。


 「信長、まこと手ごわき男よ。

 ――ならば、我が“山の道”で、奴の“平地の道”を遮ってやろう」

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