43. 武田信玄の決意
甲斐・躑躅ヶ崎館。
初夏の風が甲府盆地を抜けるなか、武田信玄は庭の梅の木をじっと見つめていた。
「芽吹きは早いが、実が熟すには手間がかかる……。信長は“熟す”を待てる男か?」
彼の視線の先には、一枚の書状。
それは信長から今川氏真を経由して届いた、名ばかりの友好文書だった。
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◆ 武田家重臣会議
「岐阜から三河、尾張、伊勢へと“物流の道”が繋がりつつあります。
信長は、城よりも道、市よりも制度で人を繋いでいます」
山県昌景が地図を示しながら言う。
「だが道は“山”を越えねば伸びぬ」
「そう。甲斐と信濃――この“山の封鎖線”が崩れぬ限り、奴の“理想”は届かん」
信玄の言葉に、家中がうなずく。
「我らが封じるのは、ただの街道にあらず。“構造”そのものだ」
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◆ 風林火山、再始動
信玄は“従来の武田軍”を温存しつつ、新たに“山道斥候部隊”を再編成した。
・猿飛の里を復興し、忍者斥候網を強化
・山中に“偽の関所”を設置して敵兵站を混乱
・さらに、流通妨害のための“偽銀札”を密かに製造
「“民”の味方を装いながら、民の暮らしを揺るがす……それが、最も効く手段ぞ」
高坂昌信がひそかに言葉を漏らす。
「信玄公は……あの信長にさえ、“風”で勝とうとしているのか……」
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◆ 忍と偽情報
信玄の策は、“忍”によって拡散される情報戦でもあった。
「岐阜銀の含有量は、実は薄い」
「織田の“通行札”は、出入りの自由を奪う首枷だ」
「制度を整えるほど、民は“仕組みの奴隷”となる」
それらは、噂として各地の市に流れはじめていた。
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◆ 一方、岐阜にて
信長も、異変に気づいていた。
「……流通量が微妙に減っている。山向こうの関所で“何か”が起きているな」
光秀が地図を指す。
「武田が関わっているのは確実。忍びと山道の使い方が“甲州流”そのものです」
信長は静かにうなずく。
「なるほど、“山”を壁にし、“噂”を刃にするか……」
彼は筆をとった。
「こちらも、“噂”で返そう。“山の先”にある未来を、語ってやる」




