エピローグ第2章 「かくして吹田千里少佐は巴図魯となる」
挿絵の画像の作成の際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」を使用させて頂きました。
愛新覚羅麗蘭第一王女殿下の影武者を立派に勤め上げて紅露共栄軍を滅ぼす事で、中華王朝の王室と日中友好の未来を守った。
そんな私の功績を中華王朝の方々は正しく御評価して下さった。
今回の巴図魯の称号と双龍宝星勲章の叙勲は実に喜ばしく、それと同時に名誉な事だね。
こうして日中両方の価値観に基づく吉日が選ばれ、私は帝都東京にある中華王朝の大使館を訪問する事になったんだ。
「おめでとうございます、千里さん。いよいよ千里さんも中華王朝の準貴族で御座いますか。」
「そういう事になる訳だね、英里奈ちゃん。外国人の武官にも門戸を開いているという点では、イギリスのナイト称号と同じだから。」
それにしても英里奈ちゃんったら、まるで我が事のように嬉しそうだよね。
私としても、伯爵令嬢の英里奈ちゃんと同じく高貴な身分になれた事は喜ばしい限りだけど。
そうなるとフィンランドの伯爵令嬢であるフレイア・ブリュンヒルデちゃんや士族の淡路かおるちゃんとも、これからはもっと仲良くしていかなくちゃね。
かと言って、マリナちゃんや京花ちゃんの事をぞんざいに扱うつもりはないよ。
二人とも配属当初からの大切な友達だからね。
「ううん、また満州服に身を包む事になるとは思わなかったなぁ…」
人類防衛機構の東京支局で更衣室をお借りして着替えた私は、複雑な感慨に浸っていたの。
何しろ私は高校生の学籍を持つ日本人の軍人でありながら、それらの肩書きはそのままに中華王朝の臣下になる訳だからね。
ほんの少し前までだったら、考えもつかなかったよ。
「良いじゃないか、ちさ。今回の為に新調された満州服も、影武者任務の時と同じく遊撃服と同じ素材なんだろう?しかもより動きやすいようにデザインされているんだから、中華王朝関係の式典に要人のボディーガードとして同席する任務も増えるかもよ。」
「確かにそうなんだよね、マリナちゃん。この新しい満州服は内側に色んな装備類を収納出来るよう機能的にデザインされているから、『EMプロジェクト』の時以上に効率的に立ち回れるよ。」
自分達の分の感謝状を拝受するのも兼ねて同行してくれたマリナちゃんに応じながら、私は改めて自分の満州服を一瞥したの。
今後は何度となく、この満州服に袖を通す事になるのだろう。
巴図魯という中華王朝の準貴族として、そして日本で開催される中華王朝関連の式典での来賓兼警護担当として。
そう思うと、一気に愛着が増してくるよ。
「良いなあ、千里ちゃんは。遊撃服も兼ねたおニューの礼服を作って貰っちゃって!私達なんか普段通りの遊撃服だよ。」
「ご、御免…京花ちゃん…私、そんなつもりじゃ…」
さっきの私の態度が、京花ちゃんにとっては鼻持ちならなく感じられたのだろうか。
私は背筋が寒くなったよ。
だけど、それは全くの杞憂だったんだ。
「ウソ、ウソ!私達三人、誰も僻んだりなんかしてないよ。むしろ誇らしく感じているんだから。」
「準貴族の巴図魯という中華王朝の官職を持つ日本人。これからの千里さんは、日本と中華王朝の架け橋となるのですね。」
「日中の架け橋…」
京花ちゃんと英里奈ちゃんの一言に、私は明日からの自分が担う大切な役割を改めて実感したの。
生前の現状で既に昭忠祠に名前が刻まれ、これから巴図魯の官職を授与される。
そうした具合に中華王朝の王室は私を義烈の忠臣と認めて下さったのだから、私も中華王朝の事を第二の祖国と思う位の心積もりでいなくちゃね。
「さあ、いよいよ受勲式の始まりだよ。謂わば私達三人は巴図魯である千里ちゃんの親衛隊、大船に乗ったつもりでいてくれて構わないからね。」
「ありがとう…京花ちゃん、マリナちゃん、英里奈ちゃん!私、胸を張って受勲するよ!」
こうして受勲式は恙無く執り行われ、私は大使館の方々から巴図魯の官位と双龍宝星勲章を授与されたんだ。
その後にビデオ会議を応用する形で紫禁城と回線が接続され、愛新覚羅麗蘭第一王女殿下とも御話させて頂く機会にも恵まれたんだよ。
「吹田千里少佐、貴殿の類稀なる武勇と忠節は日本と我が国双方の誇りにおじゃる。無傷の生還、誠に重畳に御座る。」
麗蘭第一王女殿下の御尊顔はニュース映像などで何度も確認させて頂いたけど、直接私に御言葉をおかけ頂けるとは夢にも思わなかったよ。
そんな栄誉ある経験が出来るのも、こうして作戦を成功させて生還出来たからだね。
「有り難き幸せに存じ上げます、愛新覚羅麗蘭第一王女殿下。この吹田千里、これからは中華王朝と日本を二つの祖国と思い、両国の友好と繁栄に及ばず乍ら助力しようと存じ上げまする。」
「貴殿の忠勇は永く天下を励ましむる物…その言葉、妾も感服つかまつったぞ。」
こうして私は深々と拱手の礼を取り、第二の祖国の未来を背負われた高貴なる方に忠義を誓ったんだ。




