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第11章 「雌ハイエナからの脱却」

 道教の秘術に通じた崑崙仙軍の葛葉舒さんと、飯綱使いの術と狐憑きの力を駆使する京洛牙城衆の深草伊奈利さん。

 下顎の義歯から霊体として現れた二人は、強力な力を持つ凄腕の霊能者だったの。

 この二人の協力者に降神拳の連中をお任せした私は、その後も紅露共栄軍の連中を相手に単騎で戦い続けたの。

「おっ、ラッキー!歩兵銃だけじゃなくて手榴弾も沢山残ってるじゃない!私が有り難く使わせて頂くから、迷わず成仏してね!」

「ぐっ!ぐはっ…」

 殺した敵兵から武器弾薬を強奪し、それらを使って築き上げた新しい死体の山からまた銃弾や爆発物を略奪する。

 こんな事ばかりやっているもんだから、敵兵からは色んな言葉で罵られちゃったの。

 シンプルな物だと「餓鬼亡者」とか「外道」位のレベルで済んでたんだけど、少し凝ったのになると「死肉にたかるハゲタカ」とか「死体漁りのハイエナ女」とか言われちゃうんだよね。

 まあ、その中でも「赤目の雌ジャッカル」に関しては、少しセンスがあったから評価してあげても良かったんだけど。

 とは言え殺した紅露共栄軍の兵士から強奪出来る武器弾薬類は、あんまり品質が良くないんだよね。

 照準がいい加減なせいで命中精度はイマイチだし、銃身も粗悪なせいで暴発の危険性だってある訳だし。

 まあ、前者に関しては私の方で合わせてあげれば良いし暴発の危険性もブービートラップとして活用出来る訳だけど。

 とはいえ、人類防衛機構の高品質な装備が恋しくなっちゃうのは自然な流れだよね。


 そして潜入から三時間近くが経過した頃、遂に待望の瞬間が訪れたんだ。

「レーザーランス、地裂衝!」

「ぐああっ!」

 私の現在地から程近い地点で聞こえた裂帛の気合いと敵の悲鳴、そして大地を揺るがすような衝撃と破壊音。

 その全てが、私にとっては馴染み深い物だったんだ。

「幻聴や敵の罠ではないなら、これは…」

 一縷の望みを胸に、私は当該エリアへの移動を試みたの。

 もしも私の思惑通りなら、この精度の悪い安物の装備とも晴れてお別れ出来るかも知れないからね。

 そして私の見込みは正しかったんだ。

「今です、江坂芳乃准尉!」

「はっ!承知しました、生駒英里奈少佐!総員、撃ち方始め!」

 黒いセーラーカラーと赤いネクタイの目立つ白い遊撃服を纏った茶髪の少女士官と、彼女に率いられる形でアサルトライフルを一斉発射する青い戦闘服姿の下士官達。

 それは正しく、同期の生駒英里奈少佐と特命機動隊江坂分隊の皆さんだったんだ。

「や、やった…これで追い剥ぎ紛いの真似からも解放されるんだ…」

 もう嬉しくて仕方なかったね。

「御疲れ様です、江坂芳乃准尉!吹田千里少佐、これより戦列に合流させて頂きます!」

「おおっ、吹田千里少佐!ご無事で何よりで御座います!」

 こうして即座に江坂分隊へ合流した私だけど、ここにきて自分の装備の貧弱さとみすぼらしさが情けなくなっちゃったんだ。

 だって下士官の子達が撃っている二三式アサルトライフルの方が、明らかに性能が良いんだもん。

 愛新覚羅麗蘭第一王女の影武者として豪華な満洲服を着ている分、テロリストから強奪した銃器の粗悪さと安っぽさが一層際立っちゃうんだよ。

 はっきり言って、まるで民兵かレジスタンスが正規部隊に合流したみたいだもんね。

「あーあ、私だけこんなポンコツな銃器を使わなくちゃいけないんだから、全く嫌になっちゃうよ…」

 そう漏らしたら、傍らでライフルを撃っていた東淀川瑞光三曹にこんな風に言われちゃったの。

「お言葉ですが、吹田千里少佐。それは裏を返せば、低品質な装備でも高い戦果を上げられる貴官の卓越した技量の証明になるかと存じ上げます。」

「な、成る程…確かに昔から『弘法は筆を選ばず』って言うからね…」

 うーん…自分を弘法大師空海に例えるのはちょっと自画自賛が過ぎたかな。

 まあ、自己肯定感が高いのは良い事だよね!

 そんな具合に部下の忠言に気を良くした頃には、目下の敵は一人残さず掃討出来たんだ。

 鹵獲した軽機関銃の弾も綺麗に使い切れた訳だし、無駄がなくて何よりだよ。

 これで心置きなく、このポンコツ銃器ともお別れ出来るって事だね。

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― 新着の感想 ―
ようやく友軍と合流! 長い戦いでしたなぁ千里少佐。 そして……確かに粗悪品であそこまで戦えるのは凄いかも。
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