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おまんじゅうめぐり


私が無職で、病の症状含みでそれをなんとかしようとフラフラ散歩で、一日中出歩いていた時の話をしようと思います。


記憶が曖昧ですが、統合失調症と診断を受けた後だったか前だったか、確か両方だったと思いますね。


統合失調症には、陽性症状といって、ドーッと幻覚、妄想、思考の障害ってのがどんどこ出てくる時期がありまして。なんかやたらと脳内が過剰な感じなのですよね。ドーパミンが過剰に分泌されたりってことのようです。


で、それが過ぎた頃、回復期にガタッ!と陰性症状(意欲低下、感情表現の減少など)がありまして、陽性から陰性へと、今から思えばジェットコースターのように揺さぶられたのでしたよねぇ。

本当にグッタリして身体が自由にならず、散歩頑張ったけど距離が全く歩けなくて時間もかかって、それでも少しでも歩こう、なんて事がありましたが、過ぎてみれば遠い思い出。


しかし良く家族が、なんか怪しい状態の私を自由にさせてくれ、外出させてくれたものだ、と思いますね。

いや、ちゃんと出かけてその日のうちに戻ってきたからだと思うんだけど、(身体が動かなくて何回か父が車で探して迎えには来てくれましたが。例の運動野が阻害されてスローモーションってやつ)家族が過剰に関わるでもなく、自由にさせてくれ、かといって放置ではなく心配してちゃんと要所要所では関わってくれた事が、全くありがたかったと思います。

父は私の様子で、普通じゃないなと思ったのでしょう、統合失調症の本などを買って勉強して、まだ診断もつかず病院に行ってなかった私に病院行きを勧めてくれました。というか最終的には車で連れていかれた。

最初私は、本を見させられて、これなんじゃないの?って父に示唆された時に「私がこんな病気だと思っているのか!」と、貶されたような気がして怒ったりしたんですけども。

それも病の人に失礼な話なんだけど、実際私は精神の病の人に対して、普通より劣るという気持ちがあったからこそ、抵抗感があったのでしょうね。私を劣っていると言わないで!って怒った。

いらないプライドでしたねえ。


そこの境目を乗り越えて、自分の今の状態を認めるのには、もう少し病が進行して、ガックリとこのままじゃどうにもならない、と観念するまで、辛い陽性症状を体験する必要がありました。苦しくて苦しくて、そんな時にちょうど、父が車で、散歩の私を迎えに来て、病院行くぞ!ってなったんで、ああ、精神の病院に行ってだとしてもこの苦しみから逃れたい、何とかなりたい、このままじゃダメだと観念して、行くよ、ってなったのです。病院に行くのをそこで受け入れたので、そこから後は薬にも病院での診察にも、抵抗しませんでした。

人によったら薬、病院でもらったのに飲まなかったりするみたいね。チラッとそんな話も聞いたことあります。


病気の人は病気って自覚がない、って言いますが、色々症状があって普通じゃないのは分かっていても、冷静な判断力が低下していて自分なりに足掻いているので、病気なんじゃない?って言われるとガーッとなっちゃうんですよね。自分から病院に行く、ちゃんと治療する、って普通の病気ならあるだろう判断力も、ないんです。


病の方を病院に連れて行く、ってなった時に、例え本人が怒ったりしたとしても、ご家族の方は、根気よく、宥めながら、楽になるのに可能性の一つとして、診てもらったら良いんじゃない?って気持ちで接してもらえたらな、って思います。

ただ、家に、病の人がいる状態って相当ストレスフルなので、そんなに上手くご家族の方だって出来ないかもなんですけど、私の場合はお薬もらって少なくとも眠れたり、誰かが家に潜んでいて狙われているって妄想があってすごく怖かったりだとかが無くなったり、テレビに出演している人が自分に話しかけてきてる、って妄想がなくなったりと、まず一つ進みますのでね。妄想いっぱいあったんだよ。

今は全くないです。良かった。


すぐ全快したりはしないけど、怖い事は減るから、私としては、病院いいよ、って、なるべく早く行きなよ、って思います。


その時に思ったのだけど、怖い事があって家に誰か不審な人物がいて(ていう妄想ですが)などがあった時、私は恐怖に何も言えず固まっちゃうタイプみたいです。そっと縮こまって、やり過ごそうとする。


そういう極限状態になった時、どうするかは人それぞれだと思うんだけど、人によったらそれで抵抗して暴れたりするのかもですね。本当に怖いですからね。妄想なんだけどね。


よく冗談で、戦場にて、動くな!って銃を構えて狙われた時に、私はきっと耐えられなくて、わ、わ、わわぁ〜!って最初に叫び出して逃げ出すタイプ、そしてやられる、なんて笑い話にしてたんですけど、実際は本当、カチンと固まる、なのだな、と一つ知らなくてもいい自分の一面を知りました。


実際に家族2が、車を運転していて前の車に危うく追突しそうになった時も、カチンとなって声が出ませんでした。同乗していた家族の1人が、危ない!って叫んで、気がとられていた家族2がアワワ!とブレーキ踏んでぶつからなかったんだけど。後で、ああいう時は、危ない!って言うんだよ!って怒られました。

しかし咄嗟に固まる。パッと何らかの対応、出来ないらしいんだよねー。猫がびっくりして固まるみたいですね。人も獣だからな。


さてここからは呑気な話です。


散歩はいっぱいしましたよ。

家に居づらいじゃないですか。

そして、なんか歩いたら、良くなるかもしれない感じするじゃん?


実家がそこそこ田舎なのもあって、ぶつぶつ独り言を言って歩いている怪しい人がいたとしても、周り中に人がいて振り返る、なんてのじゃなくて、1人で歩けて自由なんですよねー。

地元にはお寺が幾つかあって、そこを巡るのもいいな、と地元の地図を買って、歩いては行った所にカエルのシールを貼ったり。

楽しみとして、おまんじゅうめぐりもしていました。


和菓子屋さんて、どこの田舎にもそこそこあると思うんですけど、ウチの地元にも幾つかあって。

歩いては、色々なお店の、色々なおまんじゅうを、買っては食べていましたね。


一つでは売っていなくて、5個入りだけとかの、田舎まんじゅうなので、でっぷり大きくて食べ応えがあるやつも良く買って、冷凍して朝ご飯に一つずつ、とかもして食べたものです。

何ですか、朝から甘いもの?ヘビーじゃないかって?

大丈夫に決まっているじゃないですか、私は甘いもの好きな、分かりやすい体型の、何でもうまうま食べられる雑な人間でございます。うまいよ、朝まんじゅう。


味噌のもうまい。

中に野菜が入ってるやつも。

黒糖まんじゅうもうまい。

つぶあんよし。

こしあんも、またよし。

黄色っぽい生地のやつ。

白い生地。

茶色の生地。

薄皮。

ふかふか。

どれもうまい。


散歩先のお寺の境内で食べたり、公園で食べたり、猫みたいに色々なとこに紛れ込んで食べました。


私は地理や道について、名前や位置関係を把握しとくところの機能がオフ気味らしく、割とポンコツなのですが、あっちこっち出鱈目に、その日の気分で毎日歩いては出先で好きなものを食べたり、握って行ったおにぎりを食べておやつにおまんじゅうを食べるの、今思えば、なかなか良かったと思います。人生にお休みは必要ではないか。

苦しい中にそんな事してる。同時にそれがある。面白いなって思います。


今でもおまんじゅうは大好きです。

ただ、自分で自由に歩き回る機会は減ったので、好き勝手におまんじゅうは食べられず、家族2の車に乗っていておまんじゅう屋を通りかかった時も、「おまんじゅう!」「ダメ!」なんて幼児のようにダメ出しをされて食べられなかったりもします。

うう、おまんじゅう。


お店で買って食べるおまんじゅうも美味しいのですが、今は亡き祖母の家の、ポソポソした生地の素朴なまんじゅうも、好きでしたねえ。もう食べられる事はないまんじゅうなんですが、味を懐かしく覚えています。


これからも、おまんじゅうを食べていくと思いますが、あの夏の日のおまんじゅうは、記憶に強く残り、今の私の一部であり、そして苦しさを癒した大事な楽しみだったと思います。

楽しいこと、好きなことを一つでも知っているか、で、辛い時になんとかやり過ごす力にもなると思う。

悪い方悪い方にばっかり思い込む人生にならず、今穏やかに暮らしていられるのには、ちょっとおまんじゅうの力もあったんじゃないかな、って思っています。


おまんじゅう、大好きです。

これからも、おまんじゅうの事を考えると、笑顔になれます。


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