第十一話 光と影と絡まる巡り(七)
それから、三日が経過した。
「結論から言うと、赤妃は皇太后から騙されていた」
「お知り合いだったのですね」
「ああ。家族の役に立ちたいと願う赤妃を、皇太后は可愛がるふりをし、父親の死について嘘を吹き込み、自分が復権した暁には生家を取り立てると約束をしていたそうだ」
まさに成良が言えなかったと言うことが裏目に出ていたのかと、紹藍は思ってしまった。
「成家没落の原因はもう知っているか?」
「敵ということはお聞きしましたが」
「なかなか過激な言葉だが、事実上、その通りだな。そして、この件に関しては、お前も怒ってもいい事柄だ」
「え?」
「皇太后は赤妃に『玲家が偽善行為を行った。そのため宮城で働く成家が民意を無視したと言われ、不名誉を被った』とも言っていたそうだ」
知らないところで今度は父親が悪者になっている事実に紹藍は驚いた。
「尤も、全ては皇太后の責任だ。皇帝陛下が病に罹り、亡くなれば自らの地位が危うくなるために医師も薬も、すべてを自分の手元に集めようとした、悪女の責任だ」
そう口にする江遵は忌々しげだった。
「……悪いな。玲藍殿がお前の親父殿だったということは最近知った。お前の父親はこの場所に殺されたも同然だ」
「まあ……その是非はさておき、少なくとも江遵様が頭を下げられることではないですよ。当時、江遵様だって幼子でしょう。何ができたと仰るのですか」
しかも名門士族の長であっても責任をなすりつけられるような状況だ。
普通の人間がどうこうできる状況ではなかったことは想像がつく。
「そして父が亡くなったのは皇太后に原因があるかもしれませんが、仮に皇太后が何もしなかったからといって父が病気に罹らなかった保証もありません」
「だが」
「何を気にされているのかわかりませんが、そんな状況下でも父は困難に挑んでいたというのであれば、それは信念だったのでしょう。そもそも父も、江遵様にどうこうして欲しかったなど考えていないと思いますよ」
そう言うと、江遵は小さく息をついた。
「そうだと……いいんだがな」
「私は父のことをあまり知りませんが、子供が助けてくれなかったと怒るような人だったら家を没落させてまで他人に尽くしたりしてないと思いますよ」
「……そうか」
「想像ですけどね。本心なんて知りようがありませんし」
そんなことよりも、今は皇太后が朱麗を騙されたことの方が腹立たしいと紹藍は感じていた。
「あ」
「どうした」
「私、うっかり皇太后に敬称をつけずに呼んじゃいましたけど……まあ、人前じゃないからいいですよね」
「誰も気にしないな。私もつけていないしな」
ようやく江遵から肩の力が抜けたようで、紹藍は安心した。
「ところで、赤妃様は今どちらに?」
「睡蓮院だ」
睡蓮院は療養所の一つだが、周囲に警備を敷きやすい……逆に言えば、見張りやすい場所だ。
「私がお会いすることは可能でしょうか?」
「会ってどうするんだ」
「何って、お話以外にないでしょう。療養所で絵は描けませんよ」
そう返せば、江遵は肩をすくめた。
どうやら、許可は出たらしい。




