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第14話

 天蓋はないものの簡素な宿のベッドとは違う柔らかくふわふわのベッド。

 疲れていたしゆっくり眠れると思ったのに、朝、目が覚めれば体はほてり、疲労感を感じた。

 ゆるくウェーブしている長い髪に鬱陶しさを感じる。

 全然、疲れがとれていない。


 結局あれから私は、夕食の時以外は部屋を出たりはしなかった。

 そよそよしい態度のセイディーンのことが気になってしまったからだ。


 セイディーンは自分の命をかけて私を護ってくれようと精一杯頑張ってくれている。

 そんな彼が私から目を離そうとしないのは当然なのだ。

 だって、私はセイディーンがいなければ何も出来ないのだから……。


 彼は何も悪くない。

 悪いのは私なのだ。

 記憶もなく、女神の娘なのに何の力もない。

 ただ、宝珠に力を注いだり、『姫』を見つけることが出来ると聞いているだけ……。

 何1つ出来ない。

 寂しさと空虚感が湧き上がって、また涙が零れる。


 なぜ、何も出来ない私がスフィアなのか?

 考えても仕方のないことばかり考えてしまう。


 私って、いつもこんなに後ろ向きな考えをしていたのかな?


 私は零れた涙を袖で拭くと、着替えを始めた。

 せめて私が出来ることはすぐにしよう。

 私にはそれぐらいしか出来ないのだから……。


 部屋にノックがあり、セイディーンの声が聞こえた。

 表情は見ていないからわからないけれど、昨日より少し明るい感じがする。


 私はすぐ駆け寄り、ドアを開けた。



「おはようございます」

「おはようございますスフィア様。朝食のお時間です」

「はい!」



 いつもの優しい微笑み。

 昨日の硬い表情を感じさせるものはない。

 そのことに少しほっとしてしまう。



「では、食堂にまいりましょう」



 セイディーンと一緒に食堂へ向かう。



「昨日はご迷惑かけちゃってごめんなさい」

「……いいえ、私も配慮が足りませんでした。ただ、私はスフィア様が心配なのです。記憶もなくされていますし女性ですから」

「セイディーンがいつも私を心配していることは判っているんです。だから出来るだけご迷惑をかけないように気をつけているんですが、昨日はびっくりしてパニックになっちゃって……本当にごめんなさい」

「どうか、謝られないで下さい。スフィア様は何もしていないのですから」



 とっても優しい笑みだった。


 労るような、眼差し。

 セイディーンは私を大切に思ってくれている。

 それがわかって、なんとなく泣けてしまいそうになった……。






 朝食を神官長と3人で食べながら、今日の説明を受ける。

 つまり宝珠に力を送る方法だ。


 宝珠は神殿の地下にある宝珠の間に保管されているらしい。

 その部屋に入って宝珠に触れ、祈るだけで力が送り込まれるという簡単なものだった。


 私は食べ終わるとさっそく、宝珠に力を送る儀式をしたいと申し出た。



「ですが、まだ少しお顔の色がすぐれないようですが? もう1日休んではいかがでしょう?」

「大丈夫です。昨日たくさん寝たし元気です!」



 私はとっさに精一杯元気なふりをした。


 疲労感も取れないし、微熱ぐらいはあるのかもしれないが、とにかく時間がない。

 私にはまだ姫を探して力を送り込む宝珠もまだ4つある。

 それなのに国を護る宝珠の力はあと半年ぐらいしかもたないと言う。


 宝珠の結界が崩壊すればたくさんの魔物が入り込み、その犠牲になるのは何の力もない一般の人なのだ。



 宝珠は『宝珠の間』と呼ばれる部屋に保管されているらしい。

 神官長の部屋からしか入れないドアの鍵を開けて、大人が2人やっと並んで歩けるほどの狭い通路を進む。


 突き当たりに、女性が彫られたドアがあった。

 ここが宝珠の間らしい。


 重厚な音をたててドアが開く。


 宝珠の間はとても狭く、畳、2畳分もないぐらいだろう。

 そこに私だけが入り、セイディーンと神官長が入り口で見守るような感じだ。


 部屋の壁際に紫みたいな不思議な色をした玉が女神の像の上にぽっかりと浮いていた。

 私が近づくと宝珠は反応しているのか、輝きを強くし白光し始める。


 これが宝珠?

 つまり、これに祈ればいいんだよね?


 早鐘を打つ自分の心臓を強く感じる。

 ちゃんと力を送り込む事が出来るのか不安に思いながらも、ゆっくりとその宝珠に手を伸し指に宝珠が触れた。


 触れた先から光が強くなり、視界はだんだんと眩しい光に包まれ、やがて何も見えなくなった。




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