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story in story  作者: 初谷ゆずる
ナルへの侵攻
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仲間の物語。

秋乃はこの時の行動を後に激しく後悔する事になるのかもしれない。


何故?


それは――――


****


なかなか覚醒しない脳に発破をかけ、ぼやける目を瞬かせ視界をハッキリさせると、一番最初に視界に入ったのは大量な人形と戦っているグルニアスだった。


自分が何故このような状況になっているのかを一瞬忘れていたが直ぐに思い出し、ハッと周囲を見渡す。


すると自分の右に信じられない・・・・・・いや、信じたくない光景があった。


人形が戦っていると言う事はグルニアスと対峙しているのはルイかアキ。


しかしルイは気絶しているのを確認したし、今周りをみた時にも気絶していた。


しかしその気絶した人間達の中にただ一人無い人間がいた。


アキだった。


視界を右に飛ばすと、右手と右足。いや右半身かも分からない。


とにかく右側の体を抉り取られたアキの体が横たわっていた。


だがしかしアキは壁にもたれかかりしっかりとグルニアスのほうを見据えていた。


目には対抗の意識が燃えていた。


諦めと言う言葉は微塵も含まれていなかった。


一瞬呆然となったが、ハッと意識を戻すと見鏡はアキへと駆け寄った。


幸か不幸かは分からない。どちらとも言えない。


恐らく秋乃に庇われ気絶することなく意識を保っていたのだろう。


そして自分達に止めを刺そうとしたグルニアスの攻撃を体を張って止めた・・・


そして吹き飛ばされたものの人形達を上手く操り時間稼ぎをしていた、と言うところだろうか。


とにかく見鏡は駆け寄った。


アキは見鏡を見ると、安堵したようにホッとため息をついて言った。


「そろそろ限界だったので・・・ゴフッ・・・良かったですよ・・・」


限界。


それは死ということだろうか。


何も言えず、見鏡は立ち尽くしていた。


二度目・・・いや三人目の親しい身内の死。


あの両親が死んだ日に力をつけてこの先できるかもしれない身内を守ると決めたのに。


守られてしまった。


何も言えず立ち尽くす見鏡に、アキは言った。


「僕は・・・楽しかったですよ。」


ぽつりぽつりと、アキは呟いた。


「見鏡さんに本を貸してもらって読んだのも・・・・家で料理の手伝いをしたのも・・・・というか、見鏡さん達に会えてからずっと・・・」


怖い目にもあったけれど、楽しかったですよ。


そう言って、既に体は強張っているだろうに無理をして見鏡を見上げるとアキは言った。


「僕は、後悔していません。ここで死ぬ事も。戦った事も。確かに僕はもう少し生きたかった。でも、いいんです。僕の物語はこれで。別に世界を救う主人公になりたかったわけでもありません。ただ、それのお手伝いが出来れば、いいなと思いまして。僕は世界を救う役に立ちましたか?」


吐血を我慢しながら言ったその問いかけは、世界を救えないという選択肢は無かった。


見鏡はやっとの事で絞り出した声で答えた。


「ああ、もちろんだ。」


その見鏡の答えを聞くと、安堵したように体の力を抜き、最後の言葉というように言った。


「それは・・・良かったです。僕はこの世界を救う物語から退場します。後は任せました。お姉ちゃんはああ見えてか弱いんですよ。僕が死んでも。直ぐに立ち直れるようにしてください。それと。」


一呼吸置いて、アキは続けた。


「全く、救世主たるものがなんですか、仲間の最期には笑って見せてくださいよ。救世主は世界を救うって時に泣いちゃあいけませんよ。」


そう言われ、見鏡は顔に手を当て自分が涙を流している事に気付いた。


「もしかして泣いてる事に気付いてなかったんですか?」


アキは血まみれの顔で笑いかけそう言うと、残った左手で上着のポケットをまさぐり半透明の球体を取り出した。


「これ、僕が使ってるオリジンカラーの武器です。受け取って、下さい。僕の・・・物語と一緒に。」


アキは震える手で見鏡にオリジンカラーのその武器を手渡すと、フッと力が抜けたようにクタリと体を角に沿って曲げた。


そして最期の力を振り絞って上を見上げると、泣くまいと頑張っていたのか瞳に涙を溜めた顔で笑いながら言った。


「あぁ・・・お姉ちゃんとまた、二人で物語を読んで・・・笑いたかったなぁ・・・・」


そう言うと、フッと風にかき消されるようにアキの体が粒子となって消えていった。


能力者の末路。


呆然自失となり立ち尽くしていた見鏡の意識を戻したのは、小うるさい人形が全て消えやっと敵を殺せる、と唸りを上げるグルニアスの声だった。


その声を聞き、見鏡はサッと空を仰いで笑った。


「・・・・・・全く何年端も行かないやつに守られて、説教させて、死なせてんだよ。まったく虚勢張ってたにしても、もうちょっと何かあっただろうに。」


あぁ、気分が悪い。


全く最低の気分だ。


「救世主ってのは世界を救う時に最低の気分になってもいいもんかね?」


そういってグルニアスを見据える目は、髪と同じ真紅に燃え上がっていた。


戦いだ。


今は最悪な気分でも、最後に笑うために俺は戦おう。


絶対に、負けやしない。

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