「9」 K・京(けい)
もし仮に、部屋に戻ろうものなら東菊に襲われる。
はあああ、勘弁してくれよ。なんで、初対面の女とやらなきゃなんねえ。俺はそこまで屑じゃねえ。
どうしたらいい。マジでどうしたらいいんだよこの状況。
ザニーだぜ。ったくよお。
そういえばよ、アカセはどうなった?それにあの、ニトロゼウスっていうロボットはよ。
俺が生きてるってことは、あか……あれ?誰だ?
そいつ……そいつはどうなったんだ?そいつは敵と考えるのが妥当か。
にしても、どういうことなんだ。名前が……思い出せない。何が起きた。俺は、一体何をした。
誰か説明してくれよ。
いや、待て。俺は、ふっとべって言ったんだ。何をだ?考えろ。考えろ。思い出せ俺。吹っ飛ぶ…体か?いやでもよ。この意味わかんない状況は何だ?時間をふっとばしたらどうだ?どうなる?過程を吹っ飛ばす。
すると、法則が無視され、結果だけが残る。
さも、自分は時間の流れに沿って生きたかのようにな。そうか。ようやくわかった。ここは未来だ。未来なんだ。
てことは、俺の彼女らしい東菊に訊けばわかるんじゃねえか?
「東菊訊きたいことがある。」
え?なんでだ?目線を俺から外した?どういうことだ?
「冷たいぞ? いつものようにじゅりとは呼んでくれないのか? ふみ。」
頼む。ふみって呼ぶの止めてくれ。勘弁してくれ。俺は厭厭ながら、要求にこたえる。
「うーん。わかった。じゅり」
ええと、名前なんだっけな。あ、から始まるんだよな? あ……
「あかりはどうなった?」
じゅりは、天井を見上げている。
いや、そっちの灯りじゃねえよ。
「ふみ。なんの話だ?」
ど、どういうことだ。クラスメイトだぞ?しらばっくれてるわけじゃねえよな。どうなってやがる。
「あれ? あかりだよ。ほらあの、なんつったかな。苗字は覚えてねえが、あのオレンジ色の髪のイケメンだって、まさか覚えてねえのか?」
「なんのことだ? からかっているのか? 私は知らないぞ? それより、ふみ。続きを……」
あかりを知らない?
ますますわからねえ。
いや、続きはいいだろ……この期に及んでよ。
現在の時刻を聞いたほうがいいよな。
何月かわかればよ。どれぐらい時間を飛ばしたかわかる。
俺の予想じゃ、気温などからして春。
でもって、未来なら五月くらいか?
さて、どうだ?
「今は何月だ? じゅり」
「3月だが? 今日卒業式だったじゃないか? 変なやつだ。本当に。」
「また、卒業式なのか……」
卒業式……俺が交通事故に合ったあの日。言い換えるならエックスデー。
でも、俺は生きてる。まさかな。そんなわけねえよな。その代わりに誰かが……
駄目だ。記憶が薄れていく。名前が一文字も思いだせない。
連絡先も登録してあるはずだ。電話とかできねえのか。
でもよ、名前がわからないんじゃ、どうすることもできない。やっぱりよ、時間を操るなんて……やらなきゃよかったんだ。駄目だ。記憶が塗り替えられてる。他人の頭の中に潜り込んでるみたいだ。俺の人生なのに。記憶は一人称視点だ。紛れもない俺の記憶。
でも、どれもこれも見たことない。俺は、本当に俺なのか?
「俺、誰なんだ……?」
ブー ブーー ブー ブーー
俺のスマホか?
誰からだ?
「君が、史也君だよね? 久しぶりかな? いや、ひょっとしたらはじめましてかな? どっちだろう。」
聞いたことのない声だ? 随分と早口だな。頭の回転が速いのか?
「誰だ?」
「はじめましてだ! 大丈夫かい? どこから来たんだい?」
「今、家だけどよ……」
何言ってんだ? この人はよ。
「わかった」
背後に気配を感じた。
もしかして、じゅりか?
俺は後ろを見る。
「やあ! 凄いな! 君!」
「は!?」
なんでだ?
さっきまで電話してたのに……俺の目の前にさっきの声の人物がいた。
顔は見えなかった。近未来のような白と金色のスーツを着ていたからだ。
目元が青白く光ってる。この人が……いや、彼こそが……
「おっと、君は、東菊君かな? 連絡ありがとう」
「ふみの様子がおかしいのだヒーローK。後は頼む。私は失礼するぞ」
会ったことあるようなものの言い方だな。俺の恋人である東菊は、扉を開けてそそくさと出ていった。
「これでいいね。それでは、なにから話そうか。というか、今どこだい?」
「どこって聞かれてもな。家じゃんかよ」
「わかった! 最初だ! ニトロゼウスだね。いやー彼はね………」
「ニトロゼウス?」
それが、そのたった一言が、俺の脳の記憶のトリガーとなった。
思い出した。俺は、時間を吹っ飛ばした。約一年分。記憶が三つある。
①トラックに轢かれる運命のつまらない記憶。
②T大学に合格したつまらない記憶。
③〇〇が存在しない、つまらない記憶。この記憶は、経験していないからよ。夢をみているような気分だ。
「君が教えてくれた。倒せるのかい? 僕が、倒そうか? あ、わかったよ! この時の僕が倒すんだね?」
俺が教えた?
マジで何言ってんだ?
頭大丈夫か?
だがよ、俺には確かめることがあった。
このスーツ間違いねえ……
「あんた、誰だよ」
「おっと、すまない。紹介が遅れた。僕は、ヒーローKだ。よろしくね」
「え………えぇ」
スーツ越しでもいい。
握手してえええ。サインも欲しいな。
けどよ、俺この状況でカッコつけてんのか。言えねえぇぇ。
「どうする? 戻る? 戻りたい? それとも帰る?」
めっちゃ、強引じゃねえか。
「全部おんなじだろ」
「行こうか。僕が共闘する」
「行くしかねえのかよ」
「捕まって。とても速いからね」
わかった。
と、言おうとした。
そしたら、目に色んな情報が飛び込んでくる。
てっきり、時間とは一本の軸だと思っていた。
例えるなら、扉が無限にある回廊。
終わりのないマトリョーシカ。
まるで、二重螺旋構造のDNAの上をあるいているような錯覚に陥る。
これが、これが時間なのか。
なぜ、こんなことができる?
これが、ヒーローKの能力なのか?
それも、一瞬だった。刹那と言った方が近いか。
「キサマをハイジョする。」
「――QED」
一瞬にして、オレンジ色のロボットが消し飛んだ。
これ、似てるよな。
……あの時に似てる。
時を戻した時、俺はどこに……トイレだ。
トイレにいる。
てことは、最初だ。
どうやったんだ?
「またね」
行っちまったか。
あれがヒーローK。
最強のヒーロー。
俺の尊敬する人物。
随分と若いんだな。もっと年上だと思ってたぜ。
で、確か誰もいねえ教室に俺が向かったんだ。
みんなどこいった?確かめてみるか。
俺は、ゆっくりと歩いた。テレーポーテーションが使えりゃな、楽なんだが、ヴァイヴァロスは不在。
どこ行きやがった。時間はつまり操れない………というか、これ以上記憶が増えても混乱するだけだろ。ったくよお。
「意味わかんねえ。これが俺の人生なのか―――おえええええええ。」
俺は、吐いた。光の速さに体が耐えられなかったらしい。
東菊と付き合う。ヒーローKと知り合い。どういうことなんだ。考えてもわからねえ。何がどうなってそうなる。
『Number's don't lie 数字は嘘をつかない』
で、登場したヒーローKについて、解説します。
今回のタイトル、京・Kは、彼の素性と仮面を表しています。
ヒーローK、彼の正体は、K大学に通う大学生。数多京です。上記のタイトルの作品を読んでいただければ、彼については、いろいろとわかるのですが、回収されてない伏線や、謎が多いため、ここで少し解説します。
名前 数多京
年齢 21
誕生日 9月9日
K大学に通う大学生 2年生
好きなもの 数字 特に9
別名 ヒーローK
【能力】 プラトンと呼ばれる十二面体を、胸に収納しており、数字によって能力が変わる
能力について紹介します!
(0)零 INVINSIBLE インビンシブル 無敵
あらゆる攻撃を無効化する。
(1)壱 NORMAL ノーマル 通常
変化なし。
プラトンの下位互換パラメデスが六面体であるため、六面体はサイコロを表し、サイコロに「はずれ」のイメージがあり、1は最も小さな数の為、弱い。
数字が大きくなるにつれ強くなるが、とあるアメコミの影響により、2がチートなみ。
(2)弐 SPEED 速度強化
音速に近い速度で走ることができる。
作品内では、壁を走った。
他にも、時間を超越し、過去や、未来に行くことができる。
ただし、それには条件がある
(3)参 POWER 筋力強化
全身の筋力を強化する
(4)肆 IMPACT インパクト 一撃粉砕
どんな物質も一撃で破壊する
(5)伍 ARMOR アーマー 硬化
体を鋼のように硬くする。
防御特化。
反動として、体が重くなり、動きが鈍くなる。
(6)陸 PHANTOM ファントム
物理無効化。
浮遊。
自由自在に透明になれる。
⚠ここまでは、パラメデスでも使用可能。
以下より、プラトンでのみ使用可能な能力。
(7)漆 LUCKEYラッキー
助っ人を呼べる
作品内での描写なし。
(8)捌 INFINITY インフィニティ 物質操作
インフィニティキューブのオマージュ。
同等の効果を得られる。
例えば、スーツの一部を変形させ銃にしたり、剣にしたり、刀にしたり、その使い道は無限大ということで、英語の無限をいみするインフィニティ。また、8なのは、90度傾けると∞になるため、なぜ90度なのかと言うと、京が9が好きだから。
(9)玖 STRONGEST ストロンゲスト 最強
全部の能力を同時に発動する。
先程、2で述べた条件だが、数字を合わせたり、同時に使うことで時間を超越することが可能。
例外 符号
+プラス 数字を+
9と同等の効果。数字を同時に使える。
もしくは、足して他の数字にすることが可能。
-マイナス 数字を−
相手の攻撃を引き算できる。
×タイムズ 攻撃を倍に
÷ディバイド 攻撃を半分以下に
=イコール 同一人物になれる
作品内では、サイボーグやゲームの登場人物になったりした。
人間以外でも生物なら可能。ただし、近くにいるものに限る。
番外編「9.5」いじめ・けじめ
「え、お前頭いいの?」
クラスメイトだ。僕は、あまり人が好きじゃない。
僕は十三歳。人が嫌いになったのは、この事件がキッカケでもある。
「名前なんつーか、知らねえけど。おいくそ。万引きしてこい」
え、今なんて?
「万引きしてきたら認めてやるよ。竿なし」
何を言ってるんだ。僕は黙って立ち去ろうとした。
「やっぱ女かよ。俺の咥えるか?糞アマ」
「糞アマ?あ、丁度よくね。お前確か、あまたなんとかだろ?」
「おい、くそあま、早く万引きして来いよ」
「……いやだよ」
僕は涙目になりながら、必死で言葉を発する。クラスメイトは、局部を晒していた。
僕は、まだ中学生だった。咥えろの意味がわからなかった。
惨たらしい形をしていると思った。
思わず目を背けた。
「おい。気持ち悪いとか考えてんのか?」
「まあ、いいぜ。この辺にしといてやらあ」
次の日。上履きに画鋲が入っていた。
僕は、気づいたからよかったけども、もし踏んでいたらと考えるとゾッとした。
犯人は、昨日のアイツに違いない。
その日も、何か言われるかと身構えてると、アイツを校舎の陰で見つけた。
アイツは、体格のいい男友達に女子を拘束させ、サバイバルナイフを持って脅していた。
見えないように隠れていると、それは始まった。
衣服をはぎ取り、強姦していた。
その行動は犯罪者のそれだった。
止めなければと思ったけれど、何もできなかった。
とても、見るに堪えない光景だったけれど、女子生徒が黙っていないと思ったが、羞恥を、一部始終をビデオカメラに収められていた。
「おい。いいか。一言でも告げ口してみろ。〇すぞ。こっちには、動画もある。黙っとけよ」
「あれ?」
しまった。気づかれた。
「おい。くそあま。お前もやるか?こいよ」
「・・・」
「友達だろ?」
アイツの顔は、にやあと狂気じみた笑顔へと変貌する。
まるで、悪魔が笑っているようだった。
本当に気持ち悪かった。
「たすけて……」
「喋んな! メスガキ!」
嘘だろ。
僕は、膝から崩れ落ち。
僕の好きな子だったからだ。
小学生の頃から、たまに彼女の事を視線で追ったりした。
当時の僕は、告白する勇気もなくて、友達もいなかったから。誰もそのことを知らない。
僕の精神は限界だった。
中学生の僕には重すぎる負担。
その女の子は、後に妊娠する。
その、お腹の中の子供が誰の子かなんて知りたくもなかった。
僕は、地下鉄の電車を見てはいつも思った。
飛び込みたい。
タヒにたい。
気づいたら、学校の屋上に来ていた。
僕は、必死に抵抗した。
自分なりに抵抗した。
無駄だった。
アイツは、ずるがしこかった。
結局、男子生徒に止められた。
三好君と、我王君。
2人は、僕にとって唯一の友達だ。
そして現在、僕はヒーローKとなった。
誰にだってつらい過去はある。
過去を思い出す必要なんてない。過去に執着しなくていい。
見据える先は、未来だから。
今日も、正義を執行する。