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If I wasn't me 俺が俺じゃなかったら  作者: VIKASH
Judicialz-ジャディシャルズ

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「6」 戻る・進む




「メツ」


 何が起きてんだろうな!


 その、人間味のない一言が俺の「恐怖心」を煽った。まるで……「あなたは死にます」と余命宣告されているみたいにな。


 普通なら、足を止めて確認すべきだったのかもしれない。

  だが俺は、走るのに夢中で、後ろなんざとてもじゃないが向けなかった。


 それでも、向けってのか?


《後ろを向け》


 いや、頭おかしいのか?


 後ろ向きながら、全力疾走する馬鹿が、どこにいんだ!


 俺は、馬鹿だけどよ。そこまでじゃねえよ!


 誰が、「死ぬ」のをわかって「死」を受け入れるんだよ。俺の心にあるのは、「生(せい)」つまり、「生きる」という欲求。


 その欲求は、本能であり二度目の俺からすれば、「恐れ」でもある。経験したこのない苦痛を二度も経験しようとは、思わない。


 なのに、人間は人を平気で殺す。死を経験すれば、そんなことはしないんだろうな。無知が故の罪。


 近づいてくる。死が近づいてくる。後ろの廊下から轟音が響いているのが聞こえてきた。




                 ボンッ




 いっ、たくはないな。俺に痛みはない。


 つまり、攻撃は受けてねえ。頼む。誰か。助けを求めてんだ。助けてくれ。頼む。


 情けない話だぜ。まったくよお。怖くて仕方なかった。恐怖でおかしくなりそうだった。


 だがよ、足を止めちゃいけないのは、馬鹿の俺でもわかることだぜ。ったくよおおお!


「だれか! だれかあああ! たすけてくれえええ!」


 俺が、精一杯に声を張り上げるが、返事はない。


 その異変にも気づくべきだった。


 俺の記憶が正しければ、あの教室。俺たちの3のVがすぐそこにあるのは間違いなかったからだ。


 一体どういう事なんだ?


 返事がない?ということは、時間が止まっているのか?


 いやでも、俺の体は透けていない。どういうことなんだ。必死の思いで教室に辿り着く。


 教室内を見渡すとそこには誰もいなかった。


「いねえのかよ!――みんな、みんな。みんな先に逃げたっ……はあ。はあ。――てのか!くそったれえええ! ち………はあ。はあ。ちくしょおおお」


 何か方法は! 


 ねえのか!


 ねえのか!


 考えろ俺。何かあるはずだ!


――俺はさっき、今が時間が止まっているかのように勘違いをしでかした。


 ということはだぞ?


 今は、時間は止まってない訳だ。


 どういうことか。視界に動いている物がないだけで、そんな勘違いをした。


 ひょっとして、似ていたんじゃないのか?


 でも、おかしいよな?体は動いているのに………動いている?


 止まる?


 止める?


 時間を止める?


 じゃあ、時間を止めたのは?――誰だ?





 ヴァイヴァロスだ!


 そうだ!


 ヴァイヴァロスに聞けばいいだろ!





            「ヴァイヴァロス」





 虚空の中で、独り言を呟く。


 それが、正しい判断かは俺にはわからないが、俺に考えられるのはそれだけだった。


 兎角(とかく)、誰にだって限界がある。そのリミッターを外すなんて到底無理な話なんだよ。俺が五体満足じゃなかったらな!


「聞こえるか? あんたによ……聞きてえことがある。さっきは、時間を止めたよな? あんたよ、言ってたよな。『我は時間を司る情報体』だと……それってつまりよ。時間を自由自在に操れるんじゃねえのか? まあ、聞いてねえか。一時停止と再生。まるで、ビデオデッキみてえだな。ボタンが声に変わっただけだ。でもよお、これだけできても時間の神にはふさわしいよな。今のは、忘れてくれ。他に何かできるんじゃねえかと、思ったんだけどな……」



《時を戻せる》



 俺は、後ろにいたオレンジ色のロボットに手を向ける。




『戻れ』




















































             ◁TURN BACK▷


























































「な、ナニをした!?」


「え?なにがですか?」


 俺は何も考えちゃいなかった。目の前の一寸先のあのオレンジ色のロボットが、跡形もなく消えていく。


 これが、時を戻したってことなのか……とても、信じられねえが、ロボットの時間のみが逆流しているようだった。


 俺にはそう見えた。それはつまり、俺の眼球がそう捉えていたことになる。俺という意識のみがそう捉えていたことになる。


 どういうことなんだろうな。


 例えば、ここに三人の人間がいたとする。俺から見た景色は、俺を含め三人と、俺の意識があるだけだ。


 だが、もし時間を司る情報体であるヴァイヴァロスが、その光景を見ていた時、意識が三つ見えるはずだ。


 やはり、俺は目の前の光景を疑うしかなかった。


 百聞は一見に如かず。


 だれも、聞いただけで信じることはできねんだよ。


 文面だって全くおんなじだ。この眼(まなこ)で、対象を捉えなければ、信じることはできないからだ。



 人間は生まれた時は、赤子だ。長い年月をかけて成長し、成熟して大人になる。


 今、何が起こったのか問われれば、わかる。

 それはわかるんだよ……でも、おかしいだろ。一瞬でだぞ。ものの一瞬で、ヤツが、オレンジ色の謎のロボットがなかったことになった。


 ちょっと待てよ。時を戻したんだよな。ってことはだ。俺が過去に送った可能性も考えられる。


 つまり、俺にロボットを差し向けたのは、この俺!? なのか?


 いや、待て――それはちげえな。

 俺が覚えている限りじゃ、ロボットはこんな場所にはいなかった。


 もし時間を戻したのなら、ロボットの記憶は保持されるのか?


 いや、それはわからねえな。


 なぜなら、俺はあのロボットじゃないからだ。ロボットにはわかっても、俺にはわからないからだ。


 それに、ロボットに記憶なんてないだろ。あるとしたら、データだけだ。結果というデータだけが残る。


 仮説、俺意外に俺に差し向けたヤツがいる。まあ、この際聞くのが一番早い訳なんだが……


「おい。ヴァイヴァロス! ロボットはどうなった」


《まずいな。おかしなことになった》


 なんでだよ!


 冷静さを欠かずにはいられなった。


「は!? どういうことだよ」



《始まるぞ》



 始まる?

 

 何がだよ。


 また、あのおかしな喋り方のロボットが来るのか。

 

 まあ、ロボットに皮肉を言ってもしょうがねえがな。


 どうすりゃいい。


 ん?なんか聞こえる?


 この廊下を蹴る音はなんだ?まるで、走っているかのような………


 俺の背後からは、どう聞いても人間の足音が聞こえた。しかも、走ってる。


 今頃、助けにでも来たのかよ。


 待てよ。時間を戻したんだよな?ってことは、俺の足音じゃねえのか。俺は、後ろを向けなかった。


 で、そこに俺がいた。ってことなのか?でも、ロボットは消えた。


 つまり、過去じゃない。そうだ。そうと決まったわけじゃない。ロボットがいるかどうかは、わからないんだ。まだだ。


「はあ……はあ……」


 息切れしてんのか?


 まさか、走ってる時の俺か?


 いやでも、この声。俺の声じゃねえ。


「――君は? 朝早いね。近くに住んでいるの?」


 橙星(あかせ)じゃねえかよ。

 橙星がいる。なんだよ。みんないるんじゃねえのか?


 てことは、ロボットの時間だけが戻ったのか。


 ふう。安心したぜ。でもよ。ヴァイヴァロスの言っていた『おかしなことになった』ってなんだよ。どうも引っかかるぜ。


――ちょっと待てよ、そういうことか。俺は足りない頭で、思考を巡(めぐ)らす……この状況、とくに橙星(あかせ)の様子がおかしかった。


 今の橙星は、俺の事をフミヤって呼ぶんだぜ。

 なのに今の今、初対面かのように君(・)つったよな? どういうことだ!


 それだけじゃねえ、朝?

 朝ってなんだ?

 もうすぐ昼だろ?

 どう考えても、昼から時間を数えた方が速いのによ。橙星(あかせ)は、朝って……もうなにがなんだか、意味わかんねえよ。



《時間が1日前に戻っている、気をつけろ》



 先に言え!


「は!?」


 俺は、思わず声を出した。


「え? ごめん何かおかしなこと言ったかな。大丈夫?」


 まずい、取り乱した。おかしなことってそういうことかよ!


 マジでどうなってんだ!


 俺は、切羽詰まり、急いで返事をする。


「俺は、史也(ふみや)だ。よろしく橙星(あかせ)」


 その途端、橙星が、丸い目をした。驚いているようだった。


「え?なんで僕の名前知ってるの?」


 あぁぁ!!

 しまった!

 さっき、気をつけろって言われたよな。


「いやー、名簿(めいぼ)見てたのよ。ごめんなー。怖いよな。あはは」


 適当に嘘をつく俺、バレるのも時間の問題か。時間だけによ。ふっ。くそつまんねえ。


「あ、そうなんだね。なら話は早いね。よろしくねフミヤ」


「お、おう!よろしくな」


 なんだよこの2回目の初めましてはよ。経験したことあるかよ!

 つかよ、二回目だからよ。初めましてとは言わねえだろ!


 だから、俺は初めましてとは言ってねえが。橙星も言ってねえな。まあ、気のせいだろう。


 いや、言えよ!



 とりあえず、知らないふりしといたほうがいいよな。


 でもって、なんでまた、繰り返すんだよ!


 俺は、てっきりロボットの時間のみを戻したと思っていたが、実際は現実を流れる時間の一切が戻ってんだよ!

 

 どうすりゃいい!


 待てよ……正確には繰り返してないのか。


 え、いや冗談だろ――そういうことか。これで、色々とおかしかった事情に納得がいく。橙星(あかせ)や、留学生が俺の事を知っていたとうい事実。 


 これが「真実」なのか?


 いやいやいや、でもよ。


 確かめてみなきゃわからねえだろ!


 俺の勘違いって可能性も十二分にあり得る。


 ひょっとすると、橙星が忘れっぽいのかもしれねえ。


 たまたま、朝って言ったのかもしれねじゃねえか。


 まだ、わからねえ。


 そうだ!

 

 スマホの時刻を見ればいいじゃねえか。俺は、橙星を警戒しながら、さりげなくポケットに右手を忍び込ませると、スマホを取り出した。


『7:35』








              マ ジ か よ 。








 で、今はいつなんだよ!


 でも、おかしいよな。時を戻したんだとしたら、これが、もし、一日単位で行われてんならよ。


 時刻が朝になってるのは、おかしくねえか?

 

 中途半端な数字なのはわかるけどよ。わからないこと多すぎるだろ。


「何か気になることでもあったの?」


 橙星が俺に聞く。俺はまともに聞けなかった。とりあえす、スマホを右ポケットにしまう。


「いや、なんでもねえよ。行こうぜ」


「教室まで知ってるの?」


 ああ、またやったな。どうにでもなれ。まったくよ。


「あ、ああ。ここだ」


 俺と橙星は、俺たちの教室。3のVへと入っていく。

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