「5」 我(われ)・誰(だれ)
「私の番ですね。日本語は面白いですね。重い力と書いて、重力。それに、動くとも読めます。他にも、人が動けば、働くになります。実に興味深い言語です。私は、ニュートン。趣味はクリエイター。好きなものは林檎です。リンゴは歌いますか?はい。叩くでしょう」
何いってんだか。さっぱりだ。歌うってまさか、あの歌手の林檎さんか?
いやあ、まさかな。外国人が知ってるとは、思いにくいよな。
にしても………背高いな。何センチあんだ?
「源数義だ。俺はある人から、名前を頂いた。この名を歴史に残す。それが俺の夢。その人の名前には数字が入ってた。父親はその人の二代目を名乗った。だが、俺は違う。本物の侍になるんだよ。この世の中で、死に不安のあるやつはそういねえ。危機感が足りねえ。街があんなことになってるのにだ。今こそ、俺達が立ち上がる時! 長くなったな。趣味は、剣道。好きなものは数字だ」
源?先生って苗字なんていってたんだ?いや、まさかな……
「ラリー。エンジニア。PC」
不愛想だな。なんだよ。あのシルクハット留学生はよ。紳士みたいな格好してんな。
さては、イギリス出身か。俺は憶測した。そんなことを考えていると、眩暈でもしたのか。
ラリーが二人に見えた。
あれ、いまふたりに・・気のせいか。
隣のアカセに2人だったよな?と聞くが、まさかね。と返ってきた。信じろよぉ。
おっと、きましたか。
最後かよ。緊張するぜ。
そうか。来たか。
いよいよ、俺の番か。一応言っとくか。
「歴史也。えっと、俺は………………」
一気に俺に視線が集まる。空気が一瞬にして張り詰めたみたいだ。
「――趣味は、アニメを見ることっす。好きなものは、あのヒーローK。」
「マジかよ! 俺もだ! あのスーツ俺も憧れたんだよ!」
間髪入れずに誰かが言う。
え、なんだよこの反応。
「私もー! かっこいいよね!」
男だけじゃない。女もだ。
続々と声があがる。みんな。ヒーローKを知ってんのか。まさかこんな有名だとはな。
でも、正体はわからない。謎のままだ。
そういやネットに色んな説が上がってたな。
宇宙人説だとか、未来人説だとか。
人間じゃないだとか、四次元から来ただとか、俺はさっぱりわかんねえけど。
「以上で全員ですかね。みなさんよろしくお願いしますね」
《聞こえるか》
「え、何が?」
俺は思わず返事をした。してしまった。のほうがいいよな。
しないほうがよかったなんて考えなかった。
その声は聞いたことのない声だった。
振り返っても誰もいない。
俺の挙動を不審に思った橙星が、俺に視線を向ける。
「史也。どうしたんだい? 大丈夫?」
「なあ、聞こえなかったか?」
「創立先生が言ったことに対して、君がとぼけているみたいだった。何が聞こえたんだい?」
《喋るな》
「・・・」
はあい、怖すぎだろ!
その命令に忠実に従った。
そうしなければ、何か悪いことが起きるようなそんな予感がした………
《白を切れ》
わかりますた。
「俺の気のせいだ。橙星。悪いな。心配かけてよ」
なんか、早口になっちまうじゃねえか。
「大丈夫なんだね。ならよかった」
《一人になれ》
「あ、ああ」
「どうかしましたか?」
「創立先生すいません。ちょっとお腹痛いんで、トイレ行ってきます。」
俺は、椅子を引き、廊下に出ると、男子便所へ向かった。
「なんなんだよ! いきなり命令すんなよ! つか誰なんだ!」
《我が名は、ヴァイヴァロス。時間を司る情報体である》
はい、鏡に向かって、もう一回言ってみろ。
「情報体?なんだよそれ。もっとましな嘘つけよ。そんなわけねえ! こんなことできるのは新世界秩序ぐらいじゃねえか」
《人間にこのような芸当はできまい》
「は? 舐めてんだろ。ニューワールドオーダー舐めんなよ。人間を侮辱してるみてえな言い方だな! じゃあ聞くけどよ、これは……この頭の中に聞こえるこれは! これはなんなんだよ」
《説明が難しいが、君にもわかるように言えばテレパシーのようなものだ》
「なんで、俺にだけ聞こえる? そうだ! 忘れちゃいけねえ。テレパシーの使えるあんたに聞いてやる。あんたなら知ってんだろ」
「なんで俺は人生を繰り返してる?」
《最初の質問に答える。我は君と融合した。つまり、我は君の一部であり、君も我の一部だからだ。次の質問に答える。君には使命がある》
「使命?なんだよ」
《アクシオムを倒すことだ》
固有名詞を使うな、わかりやすく言え!
「はい?ん?なんだって?アク………まあ、いい! そのアクなんちゃらは人間なのか?」
《情報体だ》
「はあ!? 情報体だあ? つまり、アンタみたいなもんだろ? てことはよ。実態がねえ。実態がないなら倒せねえだろ! それにだ、倒して俺になんのメリットがあるんだよ! 一億円手に入るとか、学費免除とか。報酬は?報酬はあんだろうなあ?」
たくよお。俺の頭は金ばっかりだな。
《訊いておくが、君は人類が滅んでもいいのか? 滅ぶのを黙って見過ごすのか》
「人類が滅ぶなんて聞いてねえよ !滅んでいいわけねえだろ」
《そのセリフを待っていた。出番だ。歴史也》
「は? え? 何がだよ」
「キサマをハイジョする。」
そこには、オレンジ色のロボットがいた。立ってる位置は、ちょうどトイレの入口付近。
その、入り口を塞ぐように立っている。
だから、逃げ場がなかった。あるとしても、トイレの窓。ここから飛び降りるしか方法は……そうだ! この情報体に力を借りれば……俺の一部とか言ってたよな。
確か、時間を司る情報体って言ってたはずだ。
つまり、時間が操れる。
で、もし止めたら?
ひゃひゃひゃ
時間を止めさえすればこっちのもんだ!
「おい! 情報体! 力を貸せ!」
《我の名を呼べ。ヴァイヴァロスと呼べ》
「ヴァイヴァロス」
「ナニをイっている」
で、時間を操るにはどうしたらいい。
何も起きてねえぞ。
止めたりできねえのか。
《今なら、時間を操れるぞ》
『止まれ』
◁FREEZE▷
って、そんなわけねえよな。
心の声じゃ止まらないよな。
って、あれ?
止まってね?あれ?
なんだよこれ?俺の後姿が見える。
どうなってんだ?
俺は、浮いているのか!?
体が、軽い。生きてるんだよな?
なんだよこれ?
さっきのオレンジ色のロボットは微動だにしない。動く気配すら見せない。
もしかして、本当に止まっているのか。
俺の体は、なんというか透けている。水色のホログラムみたいになっている。なんなんだよこれ!
これが、情報体なのか?
でも、確かに人間じゃねえけど、手もあるし、足もある。
なんというか、幽体離脱した気分だ。
魂や精神が体から離れたような。そんな感覚。
だって、俺の体は、目の前にあんだよ。こんな顔してんだな。
さて、どうするか。
時を止めたは、いいけどよ。相手を倒す方法がわからねえ。
どうやって戦う?
俺は、そのオレンジ色のロボットに近づいた。
やっぱり、動かない。どうなってる?
時が止まってる?
とでもいうのかよ!
信じられねえ!
だったらよ、この止まってる間に攻撃してやる。最強じゃねえか。ぬるいな。
俺は、拳を作り、そのオレンジ色のロボットめがけて、勢いよく、打ち込む。
決まった!
情報体がどれほど強いか知らないが、俺は、動かない的まとにいくらでも攻撃を加えられる。
勝ちだ!
俺の勝ちだ!
……と、思っていた。
どうやら、俺の体は、物体を貫通するらしく、攻撃が効かない。
これが最強?
どう考えても、最弱の間違いだろ。いくら、時止めてよ。攻撃できなかったら意味ねえだろ!
逃げるか!
恥かもしれねえけどよ。
って、俺の体は今、あのオレンジ色のロボットの目の前にある。
もし、ここで時間を再開したら、どうなる?
精神はロボットの後方。
肉体は前方。
どうなるんだよ?
《肉体は、精神に宿る。やってみろ》
やるしかねえ!
『動け』
《そして、時は動き出す》
それいらん。
「ドコだ?」
俺の肉体が、再生成される。
まるで、何も無い無から、突然現れたように、精神から細胞のひとつひとつが作られていく。
感じたことのねえ感覚だ。
成長痛みたいなもんは、感じねえ。
微々たるものが、やがて、大きな肉体となり、心臓を中心に形成されていくのがわかる。脳もだ。
その臓器を囲うように、骨が形成されていく。
そして、血管が心臓から中心に隅々へと伸びていく。視覚からの情報だけでいえば、医療機器を使って、体のありとあらゆる部分を見ているような気持になった。
不思議な気分でもあったが、それと同時に自分の物とはいえ、グロテスクでもあった。
その間、0.01秒にも満たない。俺には、形成されていくのが見えたが、他の奴からしたらこれは……
あれだ!
テレポーテーションだ!
瞬間移動だ。
プラスに考えるなこうだ。
俺は、新しい技を獲得したんだ!
マイナスに考えるなら、俺はもう人間じゃない……
《その通りだ》
え?今なんて言ったんだよ……
グダグタ言ってらんねえな
逃げる!
「うおおおおおお」
速くもねえ足で、俺は教室へと向かう。助けを!
助けを求めて!
誰か助けてくれ!
「はっはっ、だ、だれか!」
3のVまでは、もうすぐだ。頼む!間に合ってくれ!
あの、オレンジ色のロボットに追いつかれる前に……
「もう、ハジまっていたか」
速すぎるだろ!
あの、オレンジ色の謎のロボットは、俺のすぐ後ろにいた。何が始まっていんのか知らねえけどよ。失せやがれ!!
しまった!
俺としたことが………もっと、距離を置いたとこから、時間を再開すれば、間に合ってきたかもしれねえのに!
畜生!




