「4」 後悔・紹介
後悔するに決まってる。大口叩くヤツってのは、俺みたいな馬鹿が多いんだよ。
俺だって、最初はよ。この名門源高校で、成績トップになるだの、彼女作るだの、学校のヒーローになるだの、掲げてた。
だけどよ、なんでだよ。おかしいぜ。全くもっておかしいぜ。気が狂ってるのは、どうも俺だけじゃねぇみてぇだな。
そう言い放ったソイツを、俺は馬鹿げていると思ったが、誰も笑わなかった。
なんか気味が悪いぜぇ?
まるで、ここが用意された舞台かのようにな!
俺は、芸人にでもなったのか?
今、大勢でコントをしている最中なんじゃねえか?
そんな勘違いをしてもおかしくないほどのこの空気。
読めねえ!読めるわけがねえ!
先生はどうすんだよ!なんとかレジェンドの源創立はよ!
「そうですか。あなたのよう人材を求めていたのですが、仕方ないですね。あなたならなれますよ」
いや、ツッコめ。
仕方ないってなんだよぉ。
なにが、あなたならなれるだよ。
え、ちょっと待てよ。次、俺じゃね?
「はい! 橘家……いや
、俺に敗北はありません」
いやいやいや、敗北はありませんじゃなくてよ……退学したくないです。じゃね?
「……で、あなたは? 名前は、歴史也君。なるほど、進学希望でしたか。」
あれが、源創立か。
何か書類のようなものを見てんな。
若いな。若すぎるぜ。
高校生って言っても、通るんじゃねえか?
年齢は、おそらく20代か?
いや、わかんねえ。年齢も不詳なのかよ。こうなりゃよ、言ってやるぜ。
あいつは、橘ってやつは、夢を掲げた。
そして、叶えると言い放ったんだ。俺だってその冗談に付き合ってやるよ!
こんなとこで、終わりたくねえ。
2度目なんだからよ。自分の夢ぐらい自分で掴み取ってやるよ!
「そ、そうなんすよね。俺は大学行って働いて稼いで、そんなふざけた名前で実在しない企業には行きたくないっすね。なんでしたっけ?リビングルーム?か、なんかですか?とにかく、どうでもいいすけど、その若さで先生やってるやつって、経験ないじゃないすか?経験なくて、意味不明なこと言ってる先生にはついていけねえていうか。あいつが、Nなんたら? 行くなら? 俺ももちろんトップ目指しますよ? で、やっぱ行くなら?T大っすよね。高卒? この時代ありえないんで。戯言も大概にしてくださいよ」
「え?」
うおおお、やっちまった。
大恥だぜ?
あかせが俺の言っていることがさもおかしいように。声を漏らした。
いや、そりゃそうだろ。
最後は、確かにふざけたが、何か変だ。俺の発言をみんなが、無視してるみたいに――とりあえず、今は聞き返すしかねえよな。
俺なんて言った?ふざけすぎたか?
「え? って、なんだよ。話し意味わかんねえじゃんか。なあ、あかせ。なんで手挙げねえん……」
「史也君…でしたよね。英雄は実在します。わかりました。あなたも参加にしておきますね」
「ちょっと待ってくれ! 勝手すぎんだろ! 新米教師!! 源高校は屈指の進学校だろ?大学行かなきゃ……大学行かなきゃ親が泣くんだよ!! それによ、アンタだって困るぜ? もし、このクラス全員が、大学行かなかったら? どうなるか考えろよ!! 問答無用で、学校の評価落ちんだろうがよ」
「問題ありません。大学に行きながら、英雄で活躍する人もいるくらいです」
なんだ、そのスーパー大学生は!
ったくよお。最初から、そう言ってくれよ。
俺、試されてんのか?この新米教師によ。
俺は、嫌々ながら参加することを決意した。
「これでいいですね。改めまして、皆さん自己紹介をお願いします。これから共に学ぶ仲間達です。第一印象で判断せず。いい機会ですし、内面も知りましょう」
「では、お願いしますよ」
「では、私からか」
隣りのくノ一女が立ち上がる。
何者なんだよ
「私は、東菊寿梨だ。よろしく。趣味はくノ一だ。というか、現代に生きる本物のくノ一だ。喋り方ゆえに、男性が好きではないと勘違いされがちだが、そんなことはない。ここでは、私の好きな色について、話しておく。好きな色は、黄色だ。まあ、赤も嫌いではないが……以上だ」
俺のジャケットは赤なんだよ。余計なお世話だよ。あの声で『君のジャケットちょっとダサくない?まあ、でも私がフォローしといてあげる』にしか聞こえねえよ。
なんか、最後ボソッと言わなかったか?
まあいい。たくさん喋るのな。
えっと、俺は何番目だ?うお、やべえじやゃん、考えねえと……
「えっと、その、新彩萌です。趣味は、探偵小説読むのとか?映画とか? 好きなものは秘密で………」
青のニットちゃんかぁ。へぇー。
てか、そんなのありかよ。なんだよ秘密って、まあ俺は、全部秘密にしとくか?なんてな。
「みなさーん! おはようございまーす! ナンバーズってアイドルやってまーす! ファイブ担当! 内空閑白です! しくよろ〜! みんなライブ来てね!趣味はもちろんアイドル! 好きなものは、数字の5でっす」
え、まじかよ。本物じゃんか。いや、ライブは行ったことねえけどさ。
てかよ、この子男の子なのか?
見た目女子じゃんかよ。女の子にしか見えねえよ。髪型も、特徴的だよな。片方だけ、三つ編みしてんのよな。顔立ちがあれだから、似合うのか。へぇ。
「Hello?あ、間違えました。こんにちは。ウィリアムです。ファガムから来ました。趣味は、ゲームです。好きなものはゲームです。よろしくね」
ハロー留学生。ウィリアムねぇ。眼鏡かけてんのか。頭良さそうだな。なのにゲームなのかよ。ゲームやりすぎて目悪くなったのか?しっけえ。
「……神影松陰。その昔、神影の一族は……」
ん?ねみいな。ふわああ。寝るか。
「……その、趣味は推し活だ。『ずっと青赤でいいのに。』の、ボーカルのAKAねが好きだ。よろしく」
ちょっと静かにしてくれね?
声でけえよ。って、へぇー。俺も『病院を編む』なら知ってるな。
あれ、確か1億回再生いってたよな?
マジで歌うの上手いよな。ずと青のあかねちゃん。声可愛いしな。
お、次はあかせか。
「皇橙星です」
黄色い歓声があがってやがる。さっきの新ってやつか。きゃーきゃーうるせえよ。
まあ、確かにな、声もかっこよくてイケメンだもんな。変な意味じゃねえけど、男でも橙星はかっこいいって思うぜ。まったく。
「趣味は、読書です。好きなものはオレンジです。よろしくお願いします」
髪も、オレンジで好きなものもオレンジかよ。たまげたな。また、私もーって聞こえんだけど、気のせいだよな?まあ、いいぜ。隣じゃないだけよ。おっ、次は留学生だな。
「ジェフです! よろしくおながいします。日本語苦手です。僕も、読書を好きです。Um………And I like books.お願いします」
えっと、ブックは確か……本だよな。
へぇ、本好きなやつ多いな。
俺はアニメしか見ねえなー。
あ、さっきの頭おかしいバスケ小僧じゃんかよ。
「橘涼将。俺はバスケを愛している! 例え10本連続でシュートを外しても俺はためらわない。
次の1本が成功すれば、それは100本連続で成功する最初の1本目かもしれないからだ。趣味はもちろん、バスケだ。俺は本気でやっている! 好きな人物は、マイケル・ジョーダンだ」
源先生もみんなも拍手してんな。こいつ凄いのか。マイケル・ジョーダンって誰だ?俺、知らねえや。なんとかダンクってバスケアニメなら知ってるけどな
ちなみに、神影松蔭の推しである「ずっと青赤でいいのに。」とは、ずっと真夜中でいいのに。のオマージュであり、『あおあか』と『まよなか』が、韻を踏んでいます。
さらに紹介すると、ボーカルである、AKAね(あかね)は、ACAねさんではなく、架空の存在、AKAねに変わっており、三好青空『Under the triangular roof 三角屋根の下で』の主人公にとって、メインヒロインであり、詳細や結末は、この作品で描かれています。