一章十三話 『宵闇の襲撃』
遅れて申し訳ありません!パル猫です!気づいたら数日経っているが最近多くて日にちと曜日が噛み合っていません!どうしたらいいのでしょうか!?
「本当に良かったの?マスター?」
「ああ、現状では一番いい方法…の筈だ。」
あのあと詳しい話とあの子の引き渡しを行い。リシーに匿ってもらうこととなった、目が覚め次第連絡すると言われたので大丈夫だろう。
それよりも驚いたのがまるで謀ったかのようにクラリアが受け入れの準備をしていた事だ。リシーさえ驚いていたのだからクラリア独断の判断だろう。
「……?」
外に明らかに殺意を向けた視線を感じた。相手に視線でバレないように自然な動きで外を見る。大体10人分くらいだろうか?しかしこの宿で戦闘になるのは得策ではない。
そうでなくても夕方頃に式典などでしか見ないような馬車が宿の前に止まり、よく演説しているこの国の代表が訪れたりして迷惑をかけているのだから。
「イヴ、少し出掛けてくる。」
「また僕を除け者にするのかい?僕だって妬いちゃうよ?」
まぁイヴぐらいの実力ならこの視線に気付くか…それに昼間にはあの勇者の子の面倒も見てもらっているからな。
「わ、悪かった。まぁイヴなら心配はないか?とりあえず窓から出るからついてこい。」
「はーい。」
イヴは気の抜けた返事をするといつもの猫耳フードを被り、先に窓から出た俺に続く。
俺たちは夜に紛れながら屋根から屋根へと移動していく。しかし殺意の視線を送る相手も自分達にしっかりと着いてくる。
彼らは自分達が気付かれていないと思っているのだろうか?それとも気付かれていると分かっていて俺たちの後をつけているのだろうか?後者なら余程自分達の腕に自信があるらしい。
もしくは、自分の事を知っておりその上で追ってきている者…邪神の仲間か……それはないと思いたいが。
それに先程から殺意の視線を感じる方から不可視の魔法をこちらに飛ばしてきている。的確に足元や屋根から屋根へと飛び移ろうととした時などなんとも嫌らしいやり方だ。この魔法もそうだが多分昨日広場で攻撃してきたものと同じだろう。
少なくともその関係者であることに間違いはない。
「うっとおしいなぁもう!」
イヴは鎌を振り回しつつ移動している。例え不可視の魔法だとしてもイヴには見えている筈だ。イヴはほぼ常時神の目を発動している状態なので通常は見えないものまで見通している。まぁそれがあの勇者の子を見つけることにも繋がったのだが。
「イヴ。あそこで迎え撃つぞ。」
イヴは無言で頷いた。そこは昨日の広場であった。
「貴方はぁ…一体何者なのかしらぁ?」
妖艶な声がして後ろを振り向くまるで悪魔にささやかれるように。すると暗闇からゆらりと女が姿を現す。年齢は大体20代後半だろうか?いまいち読めない。それに闇に紛れるような漆黒の装衣。一見すると忍者の様な感じだが、腰のホルスターなどがそれをぶち壊している。
「それはこっちのセリフなんだが?」
「マスター。この人昨日攻撃してきた人と同じ人だよ。」
やはりか。まぁ皆が皆あんな不可視の魔法を撃ってきては対処のしようがないからな。
「やっぱり貴女は魔眼を持っているのねぇ?綺麗な眼ね?ふふふっ…」
「うわぁ…」
女は含んだような笑いをイヴに向けて舌舐めずりをしている。イヴはその視線が気持ち悪いのか引いている。
「お前は殺し屋なのか?」
「そうね?でも美味しそうな匂いがしたから襲っているだけよ?」
そうか。快楽殺人とかそういう類いの人間か…残念ながらそういう思考は持っていない為理解出来ないが。それにしても"美味しそう"…ねぇ。
瞬間。女が駆け出す。
「早いっ!」
あまりにも早く身体が対応出来ていなかった。女の持っているナイフが目前まで近づいてくる。しかしガキィィィンと音を立てて攻撃を防いだのはイヴの鎌だった。
「君は僕が相手だよ。マスターはもう一人の方を…っ!」
鎌で防いだ方とは反対側の手からナイフが投げられイヴはすんでで身体を背けてかわす。
「速さだけなら僕と同等かそれ以上とは…怖いね!」
「それを楽しそうにいうとはぁ貴女も狂っているわねぇ?」
あ、あれ?イヴってこんな狂戦士的な奴だっけ?
「マスター!呆けてないでリシーの所に急いで!」
「っ!?まさか!」
それはまずい。例えリシーに実力があろうと目の前の女の様な相手が来て、そしてあの勇者の子を庇いながら戦うには難しい。俺はリシーの所に向かおうと背を向ける。
「イヴ。ここは頼んだ。」
「了解っ。」
「させないわぁ?」
女はまた急激な加速をみせてルークに襲い掛かろうとするがすぐ止まってしまう。それはその首に鎌の刃が突き付けられていたためだ。
「君の相手は僕と言ったはずだよ?」
「ふふっ…では貴女から頂いてそのあとに貴方を頂く事にするわぁ?」
ルークはその光景を眼の端で見届けるとその場を後にした。
「私の速さに着いてくるのは貴女で二人目ねぇ?ふふっ凄いっ」
「君に誉められても嬉しくないなぁ…」
鎌と二刀流ナイフでは圧倒的に鎌が手数不足だ。しかしイヴはそれを刃で受け止め時には柄で受け止めとかわしている。端から見れば防戦一方にも見えるがどんどん押しているのはイヴの方だ。
「なんでぇ私の速さについてこれるのかしらぁ?」
右手のナイフがイヴの頬を掠り血が出る。
「さぁねぇ?因みにマスターは僕よりも強いよ?」
女はニヤリと笑い。ナイフに付いた血をペロッと舐める。
「美味しい!やっぱり貴女美味しいのねぇ?」
「……」
イヴは女の"美味しそう"の意味を理解した。そしてもしかしたらあの勇者の子を"見た"ときのおぞましい狂気と似ている…と。
「…最近勇者のパーティーが仲間割れで壊滅したのは知ってる?」
「ええ。確か勇者の子が仲間を全員殺して食べちゃったんでしょぉ?」
「僕は一度も食べたとは言ってないし。王国は勇者が未だに死体を隠したとか魔術の生け贄にしたとか思ってる筈だけど?」
「……」
女の表情はそれでも揺るがない。しかしイヴには確信があった、勇者の子を貶めたのはこいつだと。
「は~ぁ、やっぱり喋るのは嫌いだわぁ?私は食べる方が好きだわぁ?でもお姫様美味しかったわぁ?」
「あっさりと認めるんだね?」
「別に貴女も食べちゃえば問題ないでしょぉ?」
やっぱりこの女の言っている意味は分からないし理解したくもないなぁと思いながらイヴは再度鎌を構える。
ー限界加速ー身体強化ー身体軟化ー
女は身体強化系の魔法を重ね掛けする。
ー死の超越ー
イヴも小声で強化魔法を発動させる。
「限界突破?勇者のお仲間さんだったのかしらぁ?勇者の子も頑張っていたけどねぇ?それだけじゃぁ私は倒せないわよぉ?」
都合よく女にはただの限界突破に聞こえていたようだ。イヴの使った死の超越は本来の限界突破とは比べ物にならないのを女は知らない。
女はニヤリと笑うと急激な加速を見せる。ガキィィィンと言う音とともに鎌で受け止めるがイヴの目で追うのが精一杯と言った感じだ。
「よく受け止めたわねぇ?次はないわよぉ?」
正直イヴは内心冷や汗をかいていた。受け止めたのもある意味勘と言ったものだった。
そして次の瞬間あの女の姿がぶれた。
「…!?しまっ………ぐっ…!?」
気を抜いた瞬間に女は加速して反応しきれなかった。次の瞬間目の前に女が居た。ニヤリと笑う。その時イヴのお腹には深々と黒いナイフが刺さっていた。
なぜ他の作者さんはあんなに面白い話が書けるのか。流石です!凄すぎます!私も日々努力です!