春の城
【魔王付きメイド、カーミラの手記】
今日は、お嬢様が魔王に即位なさいます。
いろいろあって15歳のこの日まで延び延びになってしまったこともあってか、城の皆、既に感無量で鼻声状態です。
いつか魔王さまにいただいたスカーフを付けて、わたしも式に参列します。
今日は庭のお花が、とても綺麗に見えました。
一歩、階を昇る。
天鵞絨の、とろりとした光沢を持った、華奢な靴。
その踵の立てるかつんという微かな音が、静まり返った大広間に波紋のように拡がった。
また一歩、昇る。
天幕越しの照明の光に、夜空の色のドレスに施された、金の刺繍が星の川の如く煌めく。
段を昇りきり、振り返った。
結い上げられた、正絹を思わせる射干玉の黒髪が揺れる。
はあ、と。
薄く紅を差した唇から、少女は吐息を漏らした。
左手には、十二の翼を持つ漆黒の堕天使。
右手には、黄金色の鬣を持つ巨大な氷の狼。
左右の巨大な力が傅くのに導かれて、細い体が、音も無く黒曜石の玉座に収まる。
瞬間。
弾けたように。
待ちわびたように。
列座した異形のもの達は、轟音のような歓声を上げた。
剣の墓標、春の城、終
お付き合いいただきありがとうございました。
剣の墓標、春の城。無事完結です。
・・・・・・まあ、続きはまだあるんですが。
日記の形態が限界に達しましたので、続きは別の話として用意しようと思っています。
開始しましたら、ここにも分かりやすいよう最新話扱いでアナウンスに来ます。
ブクマ、評価、感想下さった方、どうもありがとうございました。
よければ続きもよろしくお願いします。
あ、質問等ありましたらお気軽にどうぞ。