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:10年目、雲月、31日
容体は一進一退だ。
結界を張って浄化の香は焚いているが、所詮気休めに過ぎない。
チビがしきりに看病したがっているが、変態の意向で浄室に立ち入っているのは俺とタマのみだ。
せめてメイドを入れたらどうだと言う問いには。
「なんか悪いし」
俺の魔力をやろうかとの提案には。
「えー男のー?やだー」
と言う返答が辛うじて返ってきた。
どうなってんだこいつ。
香の副作用かとも危惧したが、そう考えた瞬間に奴は「僕は正気だっての」と声を上げた。
相変わらず、変なところで敏い。
容体は日に日に悪化している。
魔力を注入しようにも、本人が拒否すれば拒絶反応が起こるために手の施しようがない。
……連日奴の寝台の横に詰めて浄化の香をもろに食らっているタマの身体も心配だ。
どうするのが、「人間」にとって一番良いのだろうか?
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