子沢山愉快犯:1年目、初月、4日
俺の氷の沼の城よりさらに北の方に住む愉快犯が、息子を連れてチビ(……と、俺か?)の見物にやって来た。
同伴していた息子は長男の、まだガキのくせに本性を現すと死ぬほどデカくなる、他人の手を食いちぎるのが得意な狼だ。
おんぶ紐でチビを背負った俺を指差して
「閣下ww何やってんすかww」
とひとしきり笑うと、奴は唐突に先日、チビを攫おうとした不審者の事を切り出してきた。
耳の早いことだ。
勿体ぶった言い方が面倒になって要件を問うと、奴は中型犬に化けている息子の真っ黒な頭をぽんぽんと叩いた。
ウチの息子を護衛にしないか、食事代はかかるが、言うことはよく聞くし戦闘力は申し分ない筈だ。
それが、奴の言い分だった。
……確かに、俺と変態だけでの護衛は限界がある。
俺はなんやかんやで魔王だし、化物じみて見えても変態は人間だからだ。
加えて、親に似ず、狼の息子は実に素直でおおらかで気が利くときている。
俺自身以前、愚弟を追い払うときに世話にもなった。
じゃあ、そうするか。
そう了承すると、愉快犯は「よっしゃー!飯代浮いた!!」とガッツポーズして帰って行った。
……別にそう思うのは仕方が無いとして、本人の前でそれを言ってやるなよと思った。
ブクマ、評価、感想等どうもありがとうございます。
すごく励みになります。